「フニクリ・フニクラ 」(ナポリ語 : Funiculì funiculà )は、1880年 に作曲、発表されたイタリア の大衆歌謡。
概要
19世紀のヴェスヴィオ山。歌の主題であるケーブルカー(フニクラ)が山の上まで伸びている様子が見える
1880年 にヴェスヴィオ山 の山頂までの登山鉄道 (ケーブルカー 、イタリア語では「フニコラーレ(Funicolare)」)の「ヴェズヴィアナ鋼索線 」が敷設されたが、当初は利用者が少なかった。本作は運営会社が宣伝曲を作ることを考え、同社の依頼を受けた作曲家のルイージ・デンツァ が作曲し、ジャーナリストのジュゼッペ・トゥルコ (イタリア語版 ) (1846年 - 1907年 )が作詞したものであり、世界最古のコマーシャルソング ともいわれる。「フニクリ・フニクラ」とは、フニコラーレの愛称である。歌詞はナポリ語 で書かれており、内容は、登山鉄道とヴェスヴィオを題材としつつ男性が意中の女性への熱い愛と結婚への思いを歌い上げる[1] 、というものである。なお、題材となったフニコラーレは、1944年 に起きたヴェスヴィオ山の噴火によって破壊され、運行を終了した。
引用・転用
本作を知ったリヒャルト・シュトラウス は、これがイタリアに古くから伝わる民謡 であると勘違いし、1886年 に作曲した交響的幻想曲『イタリアから 』(Aus Italien ) に「フニクリ・フニクラ」のメロディーを取り込んでしまった。それを知ったデンツァはシュトラウスを訴えて勝訴し、以降この曲が演奏されるごとにシュトラウスはデンツァに対して著作権料を支払っていた。
グスタフ・マーラー の『少年の魔法の角笛 』(1899年出版)中の「美しいラッパが鳴りひびくところ」が「フニクリ・フニクラ」に類似しているという指摘がある[2] 。
ニコライ・リムスキー=コルサコフ の『ナポリの歌』作品63(1907年)も「フニクリ・フニクラ」の主題を使った管弦楽曲である。
アルフレード・カゼッラ は『イタリア』作品11(1909年)の後半に使用している。リヒャルト・シュトラウスと異なってカゼッラはデンツァが作曲者であることを知っており、著作権の問題を解決した上で使用した。
アルノルト・シェーンベルク は1921年に室内楽用に編曲している(クラリネット 、ギター 、マンドリン 、弦楽三重奏)。
ハーマン・ベルステッド (Herman Bellstedt ) による『ナポリ民謡の変奏曲』は、「フニクリ・フニクラ」の主題を使ったコルネット のための技巧的な変奏曲として知られる。
アネット・ファニセロ が1960年 発売のアルバム『ITALIANNETTE』で「Dream Boy」という曲名でアレンジしたバージョンをカバーした(1961年にシングルカット)。歌詞はシャーマン兄弟 が新たに書き下ろした。
日本における「フニクリ・フニクラ」
初期の日本語版歌詞としては1929年 に二村定一 が「となり横丁」(作詞:時雨音羽 )の題で、1935年 に三浦環 が妹尾幸陽の訳詞により原題通りの「フニクリ・フニクラ」の題で[3] それぞれ吹き込んでいる。
また、1961年 4月-5月に開始して間もない『みんなのうた 』で紹介された、青木爽と清野協による訳詞のものが知られる。原曲の意図に沿って火山や登山電車を歌っているが、男性から女性への情熱的な恋愛感情については触れておらず、翻案がみられる。『みんなのうた』での放送後、視聴者からの楽譜の希望が多かった曲の一つである[4] 。なお当初は「登山電車 」というタイトルで放送されていたが、1970年 6月-7月にリメイクされた時に、原題通りの「フニクリ・フニクラ」と改題された。この青木爽と清野協による訳詞版は、細野晴臣 がアルバム『フィルハーモニー 』でカバーしている。
この結果、原則としてコマーシャル を放送しないNHK が(すでに路線は廃止されているとはいえ)CMソングを放送したような格好となっている(「ちゃっきり節 」も同様だが、静岡鉄道 は現在も盛業中、CMソングの対象となった遊園地も放送当時は営業中であった)。
そのほか、子ども向けの替え歌 として鬼の穿いているパンツ が丈夫であることを歌っている「鬼のパンツ」(おにのパンツ)という歌があり[5] 、1975年 に田中星児 の歌で発表され[6] 、1980年 に田中盤シングル (ビクター KV-2020)が発売された。この「鬼のパンツ」はJASRAC には作詞者不詳として登録されており、前述の田中盤シングルのジャケットでは「作詩不詳(1番)、田中星児補作詩(2番)」と記載されていた。2010年 12月22日 に発売された『いないいないばあっ! 』のDVD『どうよういっぱい! 』には田中が作詞者としてクレジットされている。文献でも作詞者を不詳とするもの[7] 、田中を作詞者とするもの[8] が混在している。なお、「鬼のパンツ」の歌詞は1976年 に発行された少女漫画雑誌『週刊フレンド』に連載されていた漫画『はいからさんが通る [9] 』に掲載されている。また、かつてシグナルから「オニのパンツ」というキャラクター文具が発売されており、商品には「鬼のパンツ」の歌詞の一部が記載されていた[10] 。この「鬼のパンツ」は、オリエンタル・マグネチック・イエロー がアルバム『O.M.Y. SOLO WORKS』でカバーしている。
速水けんたろう は「トラ のパンツ」の題名で替え歌を歌唱している。歌詞には、トラ、リス 、ゾウ 、タコ の動物が登場する。最後には『ぼく』の一人称がつく(1999年 11月17日 発売の『けんたろうとミクのワイワイキッズ けんたろうお兄さんのあそびうた 1』に収録。その後もポニーキャニオン から発売される童謡CDにしばしば収録された)。
嘉門タツオ は独自の歌詞でカバーし、1993年 発売のアルバム『NIPPONの楽しみ 』に収録した。2015年 には高田純次 の歌で「適当行進曲〜いつも素敵でごめんなさい〜」(作詞:中鉢比呂也)という題でポニーキャニオン から発売されている。この他、山陽電気鉄道 やブックライブ のCMソングとして使われていたこともあった。
二次元キャラクタープロジェクトである「超人的シェアハウスストーリー『カリスマ』 」が2021年 12月14日 にリリースした楽曲「おつカリスマ!忘年会」(歌:七人のカリスマ)は、本楽曲を基に作られた。
絵本
『わらべうたえほん おにのパンツ』
『うたえほん おにのパンツ』
脚注
関連項目
外部リンク