この項目では、ゴルフ における「パー」について説明しています。
ウィスコンシン州 コーラー (英語版 ) のブラックウルフ・ラン (英語版 ) のリバー・コースにある標識。7番ホールがパー4であることが示されている。
ゴルフ におけるパー (par、規定打数 (きていだすう)) は、ハンデキャップ (英語版 ) のないスクラッチのゴルファーを標準に予め定められた[1] 、そのホールを終えるストロークの数(打数)であり、プレーしたホールのパーを合計したラウンド、さらにラウンドごとのパーを総計したトーナメントについても同様の表現が用いられる。
パーは、プロ・ゴルフのトーナメントで最も広く行われている形態であるストロークプレー の中核を成す要素である。
パーは、ディスクゴルフ など、ゴルフに似たスポーツにおいても、同じ意味で用いられている。
概要
各ホールにおけるパーの数は、ティーグラウンド からピンまでの距離によって概ね決定される。ほとんどの場合、各ホールのパー数は3から5ストロークの範囲で設定される。
ミドル・ティー (middle tees) から打つようなカジュアル・プレーヤーの場合、パー3のホールはティーからピンまで100–250ヤード (90–230 m)、パー4のホールは250–470ヤード (230–430 m)程度となるが、トーナメント競技ではパー4でも500ヤード (460 m)以上ということになり、通常は短めのパー5とされるホールが選手権競技ではパー4として扱われることもよくある。典型的なパー5のホールは470–600ヤード (430–550 m)程度であるが、現代の選手権競技では600ヤード超のホールも一般的になりつつある。
ホールのパー数を決める上で関わる要素としては、距離の他にも、ストローク数に影響を与えそうな地形の起伏や障害物(樹木、ウォーターハザード、丘、建物など)がある。一部のゴルフ場にはパー6のホールがあり、極めて稀な例ではパー7のホールも存在するが、全米ゴルフ協会 は後者を認めていない。
選手権競技に用いられる典型的なコースは、パーの合計が72で、パー3が4ホール、パー4が10ホール、パー5が4ホールという構成になっている。選手権競技に用いられるコースは、パーの合計が多い方では73、少ない方では69の範囲内とされている。選手権競技に用いられることを前提としていないコースでも、ほとんどの場合はパーの合計が72に近い数とされているが、より少ないパー数のところもある。パー数の合計が73を超えるコースは、稀である。
ゴルフ場の敷地が限られているコースの中には「パー3コース (Par-3 Courses)」として設計され、全ての(あるいは、ほとんど全ての)ホールがパー3というものもあり、この場合、18ホールの合計では54(あるいは、それより少し多い数)となる。
コースとトーナメントのスコア
ゴルファーのスコアは、パー数との比較で示される。もし、コースのパー数の合計が72で、このコースを終えるのにゴルファーが要したストローク数が75であれば、スコアは +3、あるいは3オーバー・パー (three-over-par) とされ、コースを終えるのにパー数より3打多くかかったことが示される。もし、ストローク数が70であれば、スコアは -2、あるいは2アンダー・パー (two-under-par) とされる。
トーナメントのスコアは、各ラウンドのパー数の合計と、総打数との差として申告される。プロのトーナメントでは、通常4ラウンドが行われる。もし、4ラウンドがいずれもパー数72で設定されていれば、トーナメントのパー数の総計は288となる。例えば、あるゴルファーが初日に70打、2日目に72打、3日目に73打、4日目に69打であったとすると、トーナメントのスコアは284で、4アンダー・パー (four-under-par) とされる。
ホールごとのスコア
ホールごとのスコアも、コースのスコアと同じように表記して申告される。ホールごとのスコアには、パーとの打数の差によって一般化した名称が付けられている。
ボギー
ボギー (Bogey) は、パーよりも1打多く要したこと (+1) を意味する。もともと「ボギーで回る (Going round in bogey)」という表現は、コース通算でパーであったことを意味し、1890年 にグレート・ヤーマス・ゴルフ・クラブ (Great Yarmouth Golf Club) で言われ始めたが[2] 、これは「ブギーマン (bogey man )」という表現や、ミュージックホール で人気のあった楽曲「Here Comes the Bogey Man」に由来したものとされる。広くゴルファーたちは「カーネル・ボギー (Colonel Bogey)」と競っているという考えをもっており、これを踏まえて1914年 には行進曲 「ボギー大佐 (Colonel Bogey March )」が作られた[3] 。
アメリカ合衆国 において、ゴルフがより標準化されていくようになると、パーの基準はより厳しいものとなって、リクリエーションとしてゴルフに興じるゴルファーがオーバー・パーでしか回れないようになってくると、ボギーの意味は1オーバー・パーを意味するものに変わっていった。ボギーは比較的よくあることで、プロ・ゴルファーでも同様である。ボギーなしにラウンドすることには、一定の特筆性があるものと考えられている。カジュアル・プレーヤー、クラブ・プレーヤーにとって、ボギーは日常茶飯事である。
パーとの差が1打を超えると、ダブルボギー (double-bogey, +2)、トリプルボギー (triple-bogey, +3) などと表現される。しかし、それ以上の打数となると、こういった名称よりも、何打叩いたかで言及されるのが一般的である。例えば、パー3のホールで8打を要したプレーヤーがいたとすれば、「クイントゥプル・ボギー (quintuple-bogey)」ではなく、「エイト (eight)」とか「5オーバー・パー (five-over-par)」というのが普通である。プロの競技のトップ選手たちが、ダブルボギーやそれ以上を叩くことは稀である。
パー
パーは、スコアがイーブン (E) であることを意味する。ゴルファーは、そのホールでパー数と同じ打数を要したことになる。理論上、パーは、グリーンで2パットを要することが前提となっており、残りがグリーンに載せるのに要する打数となる。あるホールでパー数から2を引いた打数でグリーンに載せることを「グリーン・イン・レギュレーション (green in regulation)」という。これは例えば、パー5のホールでは3打(あるいはより少ない打数)でグリーンに載せることであり、残りの2打をグリーン上でパットするのである。パーという言葉は、ラテン語 の「等しい」という意味に由来している。
バーディー
バーディーは、1アンダー・パー (-1) のスコアを意味する。この表現が生み出されたのは、1899年 、ニュージャージー州 ノースフィールド (英語版 ) のアトランティック・シティ・カントリー・クラブ (英語版 ) においてであった。伝えられるところでは、1899年のある日、ジョージ・クランプ (英語版 ) (後に、45マイル (72km) ほど離れた場所にパイン・バレー・ゴルフ・クラブ (英語版 ) を開設した人物)、ウィリアム・ポルトニー・スミス(William Poultney Smith:パイン・バレーの創設メンバー)、その弟アブ・スミス (Ab Smith) の3人が一緒にプレーしていたとき、パー4のホールでクランプは、第1打を飛んでいた鳥に当て、第2打をカップからわずか数インチのところまで寄せた。スミス兄弟は同時に、この一打を「鳥 (a bird)」だと叫んだ。程なくして、このクラブの皆が、この表現を使うようになった。クランプは短いパットを沈め、そのホールを1アンダー・パー (-1) とし、以降、3人はこのようなスコアを「バーディー (birdie)」と呼ぶようになった。程なくして、クラブの皆がこの言葉を用いるようになった。アトランティック・シティ・カントリー・クラブはリゾート地にあり、他地域から訪れるビジターも多かったため、この表現は広まり、アメリカ合衆国のすべてのゴルファーたちの心を捉えた[4] 。パーフェクトラウンド (英語版 ) (パー72のコースを54打のスコアで回ること)は、しばしば、18ホールすべてでバーディーをとることと説明されるが[5] [6] 、プロのトーナメント戦で、パーフェクトラウンドを記録した者はいない。
2009年 のRBCカナディアン・オープン で、マーク・カルカベッキア (英語版 ) は、第2
ラウンドで9ホール連続バーディーを決め、それまでのPGAツアー 記録を破った[7] 。
イーグル
イーグルは、2アンダー・パー (-2) のスコアを意味する。通常、イーグルは、グリーンに達するまでに要する打数が、見込みよりも少ない場合に成立する。最も一般的にはパー5のホールで達成されるが、短めのパー4のホールでも起こる。パー3のホールにおけるホールインワン も、イーグルとなる。イーグルという名称は、バーディーよりも良いスコアであることから、小鳥より大きな鳥ということで鷲 =イーグルと称したものである[2] 。
アルバトロス
アルバトロス は、3アンダー・パー (-3) のスコアを意味する。アルバトロス=アホウドリ科 の鳥は、最も大きな鳥類のひとつである。アメリカ合衆国ではダブル・イーグル (double eagle) ともいう。アルバトロスは極めて稀なスコアであるが、パー5のホールで強いドライブと、1打で決めるアプローチで達成されるのが普通である。短めのパー4のホールにおけるホールインワン も、アルバトロスとなる。最初に記録された有名なアルバトロスは、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ で行われた1935年 のマスターズ・トーナメント 最終ラウンド15番ホールで、ジーン・サラゼン が達成した。このアルバトロスでサラゼンは首位に並び、プレイオフが行われることとなり、翌日行われたプレイオフで優勝を果たすこととなった。当時のスポーツ記者は「世界に響きわたった一打 (英語版 ) 」(shot heard 'round the world )と表現した。
1970年 から2003年 の間に、PGAツアー では84回アルバトロスが出たが、これは年平均で3回に達しない程の水準である[8] 。
近年の広く知られたアルバトロスとしては、2006年 の全米プロゴルフ選手権 (2006 PGA Championship ) でジョーイ・シンデラー (英語版 ) が出した、この選手権における史上3度目のもの[9] 、2009年 にBMW PGA選手権 で前年優勝者だったミゲル・アンヘル・ヒメネス のもの[10] 、2009年 の全英オープン (2009 Open Championship ) 最終ラウンドにおけるポール・ローリー (英語版 ) のもの[11] 、2010年 の全米オープン (2010 U.S. Open ) 最終日におけるショーン・ミキール (英語版 ) が出した[12] この選手権における史上2度目のもの、2010年 のWGC–HSBCチャンピオンズ (2010 WGC-HSBC Champions ) におけるパドレイグ・ハリントン のもの[13] 、2012年 のマスターズ・トーナメント (2012 Masters Tournament ) 最終日にルイ・ウーストハイゼン (英語版 ) が出した、この選手権における史上4度目、テレビ放送された最初、パー5であるオーガスタの2番ホールで達成された最初のもの[14] 、2017年 のザ・プレーヤーズ・チャンピオンシップ (2017 Players Championship ) でラファエル・カブレラ・ベロ (英語版 ) が出したものなどがある。
コンドル
コンドルは、4アンダー・パー (-4) のスコアに付けられた非公式な名称である。これは、一つのホールで達成された最も低いスコアである。コンドルは、パー5のホールにおけるホールインワン(典型的な例はドッグレッグ (dogleg) 形状のコーナー手前からの林越え)となるか、パー6のホールを2打でホールアウトした場合となるが、2016年12月の時点で後者は達成された例がない)[15] 。パー6のホールは、極めて例外的な、滅多にないものであり[16] [17] 、パー7のホールも同様である[18] [19] 。2008年 10月の時点で、コンドルは史上4回しか達成されておらず、そのうち1回は、標高が高いデンバー の希薄な空気に助けられて517ヤード または 473メートルというストレート・ドライブを記録したとされ、また、プロのトーナメントでは記録されていないとされた[15] 。
コンドルは3番アイアンで達成されたこともあり、これは馬てい形状のパー5のホールで1995年 に記録されたものであった[15] [20] 。
コンドルは、ダブル・アルバトロス (double albatross)、トリプル・イーグル (triple eagle) とも呼ばれ[15] [20] 、このやり方は、理屈の上では、5アンダー・パーなど仮想的なスコアにも拡張されるはずである。
脚注
^ Drane, Dan; Block, Martin E. (2005). Illustrated. ed. Accessible golf: making it a game fore all . Human Kinetics. ISBN 978-0-88011-979-5 . https://books.google.com/books?id=is9jjP-a994C&dq 2011年6月6日 閲覧。
^ a b
"Scottish Golf History—From Bogey to Blow-Up",
ScottishGolfHistory.net, 2003–2007, webpage:
SGHbogey .
^ Harris, Ed (2007). Golf Facts, Figures & Fun . Illustrated . AAPPL. ISBN 978-1-904332-65-7
^ The World of Golf, page 124, by Charles Price, copyright 1962 with a foreword by Bobby Jones. :全米プロゴルフ協会 は、加盟申請する者の必読書としてこの書籍を指定している。
^ “Atlantic Cite; On to the Next Round” . The New York Times . (1998年5月10日). https://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9806EFDD1231F933A25756C0A96E958260
^ “Atlantic City Country Club; A golf landmark goes public” . Golf Digest . (June 2008). http://www.golfdigest.com/courses/2008/06/19thhole_atlanticcity .
^ “Calcavecchia birdies record 9 straight holes” . Golf.com . Associated Press. (2009年7月25日). http://www.golf.com/ap-news/calcavecchia-birdies-record-9-straight-holes
^ Fields, Bill (2004-04-02). “The Rarest Bird: The albatross took flight at the 1935 Masters, but golf's most unlikely shot isn't easy to find” . Golf World . オリジナル の2007-03-05時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20070305063301/http://www.golfdigest.com/majors/masters/index.ssf?%2Fmajors%2Fmasters%2Fgw20040402albatross.html .
^ Sindelar plunders rare albatross
^ Casey holds on for Wentworth win
^ “Lawrie enjoys albatross at Open” . BBC News . (2009年7月19日). http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/golf/8157001.stm 2010年5月21日 閲覧。
^ Golf-Micheel records second ever U.S. Open albatross
^ Keogh, Brian (2010年11月6日). “News - Albatross not enough for Harrington ”. Irish Golf Desk. 2012年10月1日 閲覧。
^ “BBC Sport - 2012 Masters: Day four as it happened” . BBC Sport . (2012年4月9日). https://www.bbc.co.uk/sport/0/golf/17648976 2012年10月1日 閲覧。
^ a b c d “Condor ”. Golf Today (2008年10月). 2018年3月15日 閲覧。
^ Kelley, Brent. “Par 6 (Par-6 Hole) ”. About.com Golf. 2014年8月24日 閲覧。 “As noted, par-6 holes are rare, with most golf courses having only par-3, par-4 and par-5 holes. Most recreational golfers go their entire golfing careers without ever seeing a par 6.”
^ “Farmstead Golf Links, Calabash - North Carolina Course Reviews ”. Worldgolf.com (2002年1月29日). 2012年10月1日 閲覧。
^ Robb, Victoria (2007-04-13). “The World's Longest Golf Hole” . Esquire . http://www.esquire.com/features/travel/ESQ0903_golf 2014年12月25日 閲覧 . "According to The Guinness Book of World Records , the Satsuki golf course in Sano , Japan, boasts the longest hole in the world -- an exhausting 964-yard, par-7 humdinger." :栃木県 佐野市 の皐月ゴルフ倶楽部 佐野コース、アウト7番ホールは、パー7で、世界一長いホールとしてギネス世界記録 の認定を受けている。
^ Aumann, Mark (2014年9月7日). “Par-7, 1,100 yard hole provides challenge to long hitters in South Korea ”. PGA of America . 2014年12月25日 閲覧。 “... Gunsan's par-7, 1,100-yard third hole ... Gunsan Country Club ... has some of the longest golf holes in the world, including a Par 7 hole (1,004m) and a Par 6 hole (661m).”
^ a b Kelley, Brent. “Has There Ever Been a Hole-in-One on a Par-5 Hole? ”. About.com Golf. 2014年8月24日 閲覧。 “One was even recorded with a 3-iron ! That one was made by Shaun Lynch, playing at Teign Valley Golf Club in Christow, England, in 1995, on the 496-yard No. 17. According to a 2004 article in Golf World magazine, Lynch aimed straight toward the green on a horseshoe par-5, clearing a 20-foot-high hedge, then hitting a downslope on the other side. The downslope carried his ball to the green and into the cup.”