トリフルオロメタンスルホン酸塩 (トリフルオロメタンスルホンさんえん)は、トリフルオロメタンスルホン酸 の塩の総称。英語にならい トリフラート (triflate)、もしくは トリフルオロメタンスルホナート (trifluoromethanesulfonate) とも呼ばれるが、それらの呼称はアニオンやエステルを指すこともある。
トリフルオロメタンスルホン酸塩のアニオン成分であるトリフルオロメタンスルホナート は CF3 SO3 - と表される非常に安定な1価の多原子イオンである。これはトリフルオロメタンスルホン酸 の共役塩基にあたり、TfO- と略記される。
性質、用途
金属のトリフルオロメタンスルホン酸塩は熱的には安定で、特にナトリウム、ホウ素、銀との塩は無水物で融点 350 ℃ にも達する。このような塩はトリフルオロメタンスルホン酸と金属水酸化物、または金属炭酸塩とを水中で反応させて得ることができる。また、その他の方法として、金属塩化物とトリフルオロメタンスルホン酸を無溶媒で反応させる方法、金属塩化物をトリフルオロメタンスルホン酸銀 と反応させる方法や、金属の硫酸塩をトリフルオロメタンスルホン酸バリウム と水中で反応させる方法が知られている[ 1] 。
MCln
+
n
HOTf
⟶ ⟶ -->
M
(
OTf
)
n
+
n
HCl
{\displaystyle {\ce {MCln\ + n HOTf -> M(OTf)n\ + n HCl}}}
MCln
+
nAgOTf
⟶ ⟶ -->
M
(
OTf
)
n
+
nAgCl
↓ ↓ -->
{\displaystyle {\ce {MCln\ +nAgOTf->M(OTf)n\ +nAgCl\downarrow }}}
M
(
SO
4
)
n
+
n
Ba
(
OTf
)
2
⟶ ⟶ -->
M
(
OTf
)
2
n
+
n
BaSO
4
↓ ↓ -->
{\displaystyle {\ce {M(SO4)n\ + n Ba(OTf)2 -> M(OTf)2n\ + n BaSO4 v}}}
金属のトリフルオロメタンスルホン酸塩はルイス酸 として使用される。特に、塩化アルミニウム のような一般的なルイス酸が水に対して不安定であるのに対して、金属のトリフルオロメタンスルホン酸塩が水に対して安定であるため、水中で用いることのできるルイス酸として使用されることがある。
特に、ランタノイド元素の塩(Ln(OTf)3 (Ln = La, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu, Y))がルイス酸として有用である。そのほかにも、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム は、アルドール反応 やディールス・アルダー反応 のような反応の触媒として用いられる。
例えば、シクロヘキサノン のシリルエノラートとベンズアルデヒド との向山アルドール反応 を、81%の収率で進行させる例が知られている[ 2] 。
同様の反応は、イットリウム 塩を用いてもうまくいかない。:
Sc(OTf)3 を触媒とする向山アルドール反応
トリフルオロメタンスルホン酸リチウムは、リチウムイオン二次電池 の電解質 として使用されることがある。
関連項目
参考文献
^ Nicholas E. Dixon, Geoffrey A. Lawrance, Peter A. Lay (1990). “Trifluoromethanesulfonates and Trifluoromethanesulfonato-O Complexes”. Inorganic Syntheses 28 : 70–76. doi :10.1002/9780470132593.ch16 .
^ Shū Kobayashi "Scandium Triflate in Organic Synthesis." European Journal of Organic Chemistry 1999 , 15-27