ディアブロ・キャニオン発電所(Diablo Canyon Power Plant)は、カリフォルニア州 サンルイスオビスポ郡アビラ・ビーチに位置する原子力発電所である。発電所には、ウェスチングハウス社設計の加圧水型原子炉があり、パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック(PG&E)が運用を行っている。施設はカリォルニア州アビラ・ビーチの約750エーカー (300 ha)の敷地を占める。
2つの1,100 MWの原子炉が毎年約18,000 GWhの発電を行い、500 kV の送電線を通じて約220万人に電気を供給する。施設は断層の上に建てられており、近くに別の断層もある[1][2][3][4][5]。
発電所は原子力規制委員会リージョンIVの管轄圏内にある。
2009年11月、PG&Eは原子力規制委員会に20年間の免許更新を申請した[6]。
設備
1号機
1号機はウェスチングハウス社製の1,122 MWの加圧水型原子炉である。1985年5月7日より運用されており、2024年11月2日まで運用免許が与えられている[7]。2006年現在、9,944,983 MWhの発電を行う。
2号機
2号機はウェスチングハウス社製の1,118 MWの加圧水型原子炉である。1986年3月3日より運用されており、2025年8月20日まで運用免許が与えられている[7]。2006年現在、8,520,000 MWhの発電を行う。
発電所は太平洋から冷却水を引いており、嵐の際には海藻が冷却水に混入しないよう稼働率が80 %に抑えられる。冷却水は一度のみ利用され再循環はされず、若干高い水温で太平洋に返される。
地震対策
ディアブロ・キャニオン原発は、サンアンドレアス断層を含む4つ断層から引き起こされる可能性のある、マグニチュード6.75の地震に耐えられるよう設計されたが、後にマグニチュード7.5の揺れにも耐えられるように改良された[8][9]。重層的な地震監視システムと安全システムが設計されており、揺れが起きた際にはすぐに停止することになっている。
沿革
パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック社 (PG&E) はディアブロ・キャニオン原発の建設が許可される前の6年間、ヒアリング、住民投票、訴訟を受けた。一番の懸念は地震に十分に耐えられるかどうかであった。工事が始められた1968年に建設予定地は安全であると判断された。
1973年に原発が完成したとき、沖合数マイルの地点に活断層であるホスグリ断層が発見された。この断層は1927年11月4日にマグニチュード7.1の地震を発生されており、この規模では1906年のサンフランシスコ地震の16分の1に匹敵する力を引き起こす可能性があった[10]。会社側は計画を見直し、地震発生時に安定性を強化する構造的補強を追加した。1981年9月、PG&Eは二つの原子炉にの構造的補強について完成予想図が一つしか使われていることを発見した。作業員に対して第二原子炉の工事をする際には完成予想図を反転して利用するよう指示していたにもかかわらず、実際には反転させずにそのまま利用した。
チャールズ・ペロウによると、その工事ミスの結果、「補強すべき箇所に手がつけられないままになった一方、多くの箇所で必要のない補強が行われた。」[11]。
にもかかわらず、1982年3月、原子力規制委員会は原発の安全性を認証し、1968年の決定の見直しは行わないことを決定した[12]。
振動などによって冷却水中の燃料棒の核燃料の漏出や、空気中への放出、爆発などの懸念について、PG&Eや原子力規制委員はそのようなシナリオは検証済みであり、漏出が起きる根拠はないと主張した[13]。しかし、追加の研究も進行中である[14]。
2010年8月の原子力規制委員会の資料では、地震で原子炉に重大なダメージを受ける可能性は23,817分の1とされていた[15][16]2011年4月、福島第一原発事故発生を受け、PG&Eは自社の新たな検証が終わるまで、免許更新を許可しないことを要請した[17][18]。
ディアブロ・キャニオンにおける反対運動
ディアブロ・キャニオンは反核活動家による訴訟や抵抗を受けながらも、建設と操業開始が行われた。
1981年には2週間で1,900人の活動家が逮捕される反対運動が起き、米国の反核運動最大の逮捕者数となっている。
2011年4月、ロイス・キャップス連邦下院議員[19]とサム・ブレイクスリー州上院議員[20]が、安全性に対する懸念を表明した。キャップス議員は、「原子力規制委員会は全ての断層についてさらなる検証が行われるまで、免許更新を与えるべきではない。」と発言した。
閉鎖計画と延長計画
2016年6月、PG&Eは2025年までに閉鎖することを発表した[21]。2018年にカリフォルニア州は原発の廃止を容認した[22]。
これに対し、2021年11月にアメリカ原子力学会は閉鎖がカリフォルニア経済と環境に大きな被害をもたらすとして、炭素を排出しないクリーンエネルギーである原子力発電を閉鎖することに再考を促した[23]。2022年2月には80人近い科学者が連名で原子力発電所の閉鎖を遅らせるようにギャビン・ニューサム州知事に要請した[24]。2022年6月、カリフォルニア州議会はディアブロ・キャニオン原子力発電所閉鎖の延期のために最大7500万ドルの資金援助を行うことを承認した[25]。
脚注
- ^ Koenen, Leon (2011年3月25日). “The Diablo Canyon Nuclear Power Plant, a 48-Year Odyssey | Environment | SoCal Focus”. KCET. 2011年6月10日閲覧。
- ^ “Is Diablo Canyon prepared for possible earthquake? | KSBY.com | San Luis Obispo, Santa Maria, Santa Barbara, Paso Robles”. KSBY.com (2011年3月14日). 2011年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年6月10日閲覧。
- ^ “California's Two Nuclear Plants Near Fault Lines, But Chris Wills with the California Geological Survey says the types of faults are different than the ones in Japan. - KTXL”. Fox40.com (2011年3月14日). 2011年6月10日閲覧。
- ^ “Newsom: Calif. Wouldn't Build Diablo Plant Today”. Newsmax.com (2011年3月17日). 2011年6月10日閲覧。
- ^ “Is California Underestimating Quake Threat To Nuclear Plants? | Capital Public Radio”. CapRadio (2011年3月25日). 2011年6月10日閲覧。
- ^ “Diablo Canyon - License Renewal Application”. Operating Reactor Licensing. Nuclear Regulatory Commission (NRC) (March 12, 2011). 2011年4月19日閲覧。
- ^ a b “California Nuclear Profile > Diablo Canyon Nuclear Power Plant”. Energy Information Administration, U.S. Department of Energy (DOE) (September 2010). January 21, 2011閲覧。
- ^ “Energy: A Nuclear Horror”. Time. (February 9, 1976). http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,917988,00.html July 14, 2010閲覧。
- ^ David Sneed (August 9, 2011). “Diablo Canyon workshop to focus on earthquakes”. The San Luis Obispo Tribune. オリジナルの2011年3月17日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110317193217/http://www.sanluisobispo.com/2010/08/08/1244213/diablo-canyon-workshop-september.html
- ^ “Lompoc Earthquake (1927)”. Southern California Earthquake Data Center (2010年). 2011年6月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年11月2日閲覧。
- ^ Perrow, Charles, Normal Accidents (New York: Basic Books 1984) ISBN 0-465-05142-1 p. 37
- ^ “U.S. Won't Review Diablo Plant Decision: Nuclear Board Upholds '78 Approval of Quake Design Standards”. Los Angeles Times: p. A35. (March 20, 1982)
- ^ “Diablo Canyon Independent Safety Committee's Evaluation of Pressurized Thermal Shock and Seismic Interactions for a 20-Year License Extension at the Diablo Canyon Nuclear Power Plant”. Diablo Canyon Independent Safety Committee (2011年). March 18, 2011閲覧。
- ^ “In The World of Nuclear Power Crisis”. Life Magazine: pp. 23–30. (May 1979). オリジナルの2011年5月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110512165416/http://www.mindfully.org/Nucs/TMI-LifeMay79.htm July 14, 2010閲覧。
- ^ Dedman, Bill (March 17, 2011). “What are the odds? US nuke plants ranked by quake risk”. msnbc.com. http://www.msnbc.msn.com/id/42103936/ April 19, 2011閲覧。
- ^ http://msnbcmedia.msn.com/i/msnbc/Sections/NEWS/quake%20nrc%20risk%20estimates.pdf
- ^ Upton, John (March 17, 2011). “Seismic Uncertainty at Diablo Canyon”. The Bay Citizen. 2011年4月19日閲覧。
- ^
Casselman, Ben; Stephen Power (April 12, 2011). “Diablo Plant Delays License Bid for Quake Study”. The Wall Street Journal. 2011年4月19日閲覧。
- ^ April 12, 2011 3:33 PM (2011年4月12日). “Capps Testifies Before Senate About Diablo Canyon Safety | Congresswoman Lois Capps, Representing the 23rd District of California”. Capps.house.gov. 2011年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年6月10日閲覧。
- ^ “Blakeslee and Rachel Maddow discuss Diablo”. Cal Coast News (2011年3月25日). 2011年6月10日閲覧。
- ^ 「米加州最後の原発閉鎖へ、再生エネに置き換え」『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』2016年6月22日。2016年6月22日閲覧。
- ^ 『カリフォルニア州、脱原発州になることが決定。唯一稼働中のディアブロ・キャニオン原発の6年後の廃炉決まる。代替発電は再エネ発電で(RIEF)』一般社団法人環境金融研究機構、2018年1月17日。https://rief-jp.org/ct4/75981。
- ^ 「米原子力学会、ディアブロキャニオン発電所の閉鎖計画に再考促す声明」『原子力産業新聞』2021年11月30日。
- ^ 『[米国] 科学者集団が、原子炉閉鎖を遅らせるようカリフォルニア州知事に要請』電気事業連合会、2022年2月15日。https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_topics/1260687_4115.html。
- ^ Nadia Lopez (2022年6月29日). “California may rescue its last nuclear power plant — and give PG&E millions to do it”. CalMatters. https://calmatters.org/environment/2022/06/california-nuclear-power-pge-diablo-canyon/
関連項目
外部リンク
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