スバル・FB型エンジン (スバル・FBがたエンジン)とは、SUBARU (旧・富士重工業 )が製造している水平対向4気筒 ガソリンエンジン の系列 である。
EJ型 エンジンの後継機種として開発された。
概要
2010年9月23日発表[ 1] 。燃焼効率の追求と同時に環境性能を引き上げることを目的に開発され、2.0リットル型は内径を⌀92 mm から⌀84 mm(2.5リットル型は⌀94 mm)に縮小するとともに、小さな燃焼室形状へ変更した[ 2] 。ただし、ボアピッチ は排気量拡大を見越してEJ20 と同一のものにされた[ 3] 。
バルブの駆動方式は、カムシャフト配置の自由度を持たせる目的と摩擦低減の観点から、直打式からローラーロッカーアーム 式に変更し、バルブ挟み角を41度 から27度へ狭めた[ 2] 。同時に吸気側と排気側のバルブの間隔を126 mmから104 mmへと狭め、小型のシリンダーヘッド形状としたこと、斜め割コンロッド の採用などでストローク量を75 mmから90 mmに拡大し、ロングストローク化したこと、ならびに燃焼改善による中低速のトルク向上と燃費 性能の向上(EJ型比で約10 % 増)を実現させている[ 2] 。
吸排気側ともに可変動弁機構とした「デュアルAVCS 」を採用し[ 2] 、低負荷時はミラーサイクル 化している。さらに吸気側のAVCSは、油圧式としては世界初の中間ロック式とし、始動時の制御性を向上させた。また、EGR (排気再循環)クーラーを採用したことで、高負荷時では積極的なEGRの導入が可能となり、デュアルAVCSと合わせ広い領域の燃費向上が図られている。このほか、排ガス性能の向上によって触媒のレアメタル 使用量を約30 %削減し、触媒にかかる費用を約50 %減少させた[ 2] 。
大きさについてはEJ型からほぼ引き継がれ、現行車種との互換性も考慮された設計となっている。また、重量についてはピストンとコネクティングロッドで約20 %の軽量化が図られているものの、ロッカーアームとチェーン駆動の採用によって整備・保守を不要化した影響で、約4 kg増加した[ 2] 。ちなみに、FB型は基本的には自然吸気 専用エンジンとして設計されており、ピストンとコンロッドの軽量化もそのことを前提に行われている[ 2] と同時に、アイドリングストップ との組み合わせも熟慮されている。
純正エンジンオイル に関しては、従来の5W-30オイルから省燃費性能を高めた0W-20オイルが、FB型に合わせて新たに設定された。オイル量はタイミングチェーン 採用の関係で、EJ型よりも多くなっている[ 4] 。
命名の由来は、Fが "FHI"(富士重工業)と "Future"(未来)、Bが "Brand New、BOXER " の意味を持たせてあり、基幹エンジンとしての思いが込められている[ 4] 。
群馬製作所大泉工場内に新設された専用工場で製造される[ 5] 。
FB16
FB16 NA (2014年式インプレッサG4 )
FB16 DIT
スバルFB16 DIT カットモデル (東京モーターショー 2013出展)
FB16 DIT は、FBシリーズ初のガソリン直噴 ・ターボチャージャー 搭載エンジンであり、2014年のスバル・レヴォーグ の基幹エンジンである。レヴォーグには2.0リットル・ガソリン直噴ターボエンジンFA20F のオプションもあった[ 6] [ 7] 。
種類: 水平対向4気筒DOHC 16バルブ デュアルAVCS ガソリン直噴 ・ツインスクロールターボ (DIT)
排気量: 1,599 cc
内径×行程: 78.8 mm × 82.0 mm (3.10 in × 3.23 in)
圧縮比: 11.0 : 1
2014年+ スバル・レヴォーグ (VM4型、2014年6月 - 2020年5月)
最高出力: 125 kW (170 PS ) / 4,800 - 5,600 rpm
最大トルク: 250 N⋅m (25.5 kgf·m ) / 1,800 - 4,800 rpm (NA)
FB20
FB20(2015年式XV )
FB20ハイブリッド仕様には専用エンジンカバーと運転席側にもう1個バッテリーが追加設置される(2015年式インプレッサ スポーツ ハイブリッド )
従来のEJ20型は排気量1994 cc、オーバースクエア の内径×行程(92 mm × 75 mm (3.62 in × 2.95 in))を使用した。比較すると、FB20型はわずかに大きな排気量とアンダースクエアの内径×行程を特徴とする。
共通仕様:
種類: 16バルブ デュアルAVCS・EGI またはガソリン直噴 (DI)
排気量: 1995 cc DOHC
内径×行程: 84 mm × 90 mm (3.31 in × 3.54 in)
ボアピッチ: 113.0 mm
FB20B
スバルFB20B
FB20D
第5世代インプレッサ・セダンおよびハッチバック に用いられた。FB20Bと比較すると、FB20Dは直噴 となり、出力と効率がわずかに上昇している[ 9] [ 10] 。
圧縮比: 12.5 : 1
2017年+ スバル・インプレッサ [ 11] (全グレード)、2018年+ スバル・XV/Crosstrek (ベースグレードおよび最上級グレード)[ 12]
最大出力(日本仕様、米国仕様): 113 kW (154 PS; 152 hp) at 6,000 rpm
最大出力(欧州仕様、豪州仕様、タイ仕様): 115 kW (156 PS; 154 hp) at 6,000 rpm
最高トルク: 20 kg⋅m (196 N⋅m; 145 lbf⋅ft) at 4,000 rpm
スバル・FB20D (フォレスター SK型 海外仕様)
FB20X
スバルFB20X
それまでのFB20Bを、ハイブリッド駆動系のために内部摩擦を低減させるよう改良したもの。ハイブリッド駆動系はリニアトロニック CVT に電気モーターを組み込んでいる。高圧駆動用バッテリーは前後重量配分をより良くするために荷室の下部に搭載されている[ 13] 。総出力は160 hp (119 kW)とされる[ 14] 。ガソリンエンジンの出力はFB20Bのものと同程度である[ 15] 。
圧縮比: 10.5 : 1
搭載: 2014–2016年 スバル・XV ハイブリッド[ 16]
合計出力:[ 14]
最大出力: 160 hp (162 PS; 119 kW) at 6,000 rpm
最高トルク: 163 lb⋅ft (221 N⋅m; 23 kg⋅m) at 2,000 rpm
ガソリンエンジン出力:[ 17]
最大出力: 148 hp (150 PS; 110 kW)
最高トルク: 145 lb⋅ft (197 N⋅m; 20 kg⋅m)
電気モーター出力:[ 13]
最大出力: 13.4 hp (14 PS; 10 kW)
最高トルク: 48.0 lb⋅ft (65 N⋅m; 7 kg⋅m)
FB20V
2019年型XV(クロストレック)ではトヨタからの技術供与を受けて開発されたプラグインハイブリッド システムTH2A を搭載したモデルが発売された[ 18] 。この新しいハイブリッド駆動系は2つのモーター-発電機ユニットを使用する。駆動モーター(MG2)とバッテリーはそれ以前のXVハイブリッドよりもかなり大きく、プラグインハイブリッド車は限られた距離を電力のみを使って走行することができる。MG2はパラレルハイブリッド 稼動の下でも同様に使用される。MG1はスターターモーターとして使われ、シリーズハイブリッド 稼動のためにバッテリーを充電する。直噴FB20Vは従来型のFB20Dに比べて性能が抑えられている[ 19] 。
搭載: 2019年+ スバル・クロストレック ・ハイブリッド (PHEV)(米国市場のみ)
合計出力:[ 20]
最大出力: 148 hp (150 PS; 110 kW)
ガソリンエンジン出力:[ 20] [ 21]
最大出力: 137 hp (139 PS; 102 kW) at 5,600 rpm
最大トルク: 134 lb⋅ft (182 N⋅m; 19 kg⋅m) at 4,400 rpm
電気駆動モーター (MG2) 出力:[ 20] [ 21]
最大出力: 118 hp (120 PS; 88 kW)
最大トルク: 149 lb⋅ft (202 N⋅m; 21 kg⋅m)
FB20W
直噴FB20DはFB20Xと同様にマイルドパラレルハイブリッド構成でも使われた。このマイルドハイブリッドドライブトレイン は日本(フォレスターは2018年7月、XVは2018年10月[ 22] )および欧州(日本と同じモデル)市場向けのモデルの一部のグレードに適していた[ 23] 。
圧縮比: 12.5 : 1[ 24]
搭載: 2019年+ スバル・XV (日本仕様・欧州仕様)およびフォレスター(一部グレード)、2020年+ インプレッサ (日本仕様・欧州仕様)
合計出力:[ 25]
最大出力: 107 kW (145 PS; 143 hp) at 6,000 rpm
最大トルク: 188 N⋅m (19 kg⋅m; 139 lb⋅ft) at 4,000 rpm
ガソリンエンジン出力:[ 26]
最大出力: 145 PS (107 kW; 143 hp)
最大トルク 188 N⋅m (19 kg⋅m; 139 lb⋅ft)
電気モーター出力:[ 25]
最大出力: 10 kW (14 PS; 13 hp)
最大トルク: 65 N⋅m (7 kg⋅m; 48 lb⋅ft)
FB25
オーバースクエア(99.5 mm × 79 mm (3.92 in × 3.11 in))のボアとストロークを持つ排気量2457 ccの先代EJ25型 と比較して、FB25型はわずかに大きな排気量とオーバースクエア度合いが小さなボアおよびストロークを持つ[ 27] 。
共通仕様:
排気量: 2,498 cc (2.5 L) DOHC
内径 × 工程: 94 mm × 90 mm (3.70 in × 3.54 in)
ボアピッチ: 113.0 mm
FB25B
FB25 (6代目BN型レガシィ、ニューヨーク国際オートショー 2014出展)
レガシィB4 BN9型とレガシィアウトバック BS9型への搭載に当たり、吸気タンブル流強化や、圧縮比 の 10.0 から 10.3 への向上、重心位置を最適化した新型ピストン採用など、部品の約8割を新設計としている[ 30] 。
FB25D
FB25D (5代目BS9型アウトバック、バンコク国際モーターショー 2021出展)
2019年式スバル・フォレスターは、2018年ニューヨーク国際オートショー にて改良された直噴FB25型エンジン(出力と燃費がわずかに上がっている)と共に発表された[ 31] 。第7世代の2020年式レガシィおよびアウトバックもそのベースエンジンとして改良型直噴FB25を採用した[ 32] [ 33] 。
圧縮比: 12.0:1
最大出力: 182 hp (185 PS; 136 kW) at 5,800 rpm[ 31]
最大トルク: 176 lb⋅ft (239 N⋅m; 24 kg⋅m) at 4,400 rpm
搭載:
脚注
^ “FHI Develops a New-generation Subaru Boxer Engine ”. 富士重工業 (23 September 2010). 3 October 2010 閲覧。
^ a b c d e f g 谷川 潔 (2010年9月29日). “スバル、新世代水平対向エンジン「FB型」説明会 ]”. Car Watch. 2021年3月24日 閲覧。
^ 「富士重工業の新型水平対向エンジン 21年ぶりに全面刷新、ロングストローク化で燃費10%向上 」『日経Automotive Technology』1月号、2011年、2021年3月24日 閲覧 。
^ a b 谷川 潔 (2010年10月22日). “スバルの新世代水平対向エンジン「FB型」の疑問点を確認 ”. Car Watch. 2021年3月24日 閲覧。
^ 『富士重工業、新世代ボクサーエンジンを開発 』(プレスリリース)富士重工業、2010年9月23日。https://www.subaru.co.jp/news/archives/10_07_09/10_09_23.html 。2021年3月24日 閲覧 。
^ "World Premiere of Subaru "LEVORG" at 43rd Tokyo Motor Show 2013" (Press release). Subaru Global. 20 November 2013. 2018年2月28日閲覧 。
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^ "World Premier of All-New 2020 Subaru Legacy Sedan" (Press release). Subaru Corporation. 8 February 2019. 2019年4月3日閲覧 。
^ "World Premier of All-New 2020 Subaru Outback" (Press release). Subaru Corporation. 17 April 2019. 2019年4月17日閲覧 。
関連項目
現行
販売終了 コンセプトカー エンジン
直列 水平対向
第1世代
第2世代
第2.5世代
第3世代
第4世代
技術
モータースポーツ 歴史/組織 プラットフォーム 関連項目