量産が難しくまたコストが高くなるため当初は自作の時計にしか採用されなかった。ダニエルズは同軸脱進機を組み込んだ懐中時計をパテック・フィリップに持ち込んだが、「これはすごい機構だ。でも腕時計に転用することはあなたでも無理でしょう」と言われた。ダニエルズはオメガのCal.1045に同軸脱進機を組み込んで再びパテック・フィリップを訪ねたが「確かに驚異的です。しかしこれをわが社のフラットタイプのモデルに転用することはできないでしょうね」と言われた。ダニエルズはガンギ車の歯を12枚から8枚に減らす等抜本的に設計変更し、約6週間でケース厚2mmのフラットモデルに組み込むことに成功、1982年からほぼ毎日着用することで耐久試験を行なった結果1994年に自動巻の巻上げ機構が故障するまでの12年間分解掃除なしで正常に動作した。パテック・フィリップは実用性に興味を示したが、時期尚早ということで流れてしまった。ロレックスにも見せたが全く理解されなかったという。しかし1990年代半ばにオメガが量産化を企図し、1999年に『デ・ビル・コーアクシャル』(De Ville Co-Axial )のCal.2500に採用された。