ロッシーニのオペラはヒロインのデズデーモナの描写を中心にしており[1]:6、第3幕冒頭の彼女とゴンドラ乗りの歌「これほどつらいことはない」(Nessun maggior dolore)[注 1]は優れている[3]。第3幕の彼女のアリア「柳の根元に座り」(Assisa a piè d'un salice)は「柳の歌」[注 2]の名で広く知られる。
フランツ・リストはゴンドラ乗りの歌を『巡礼の年第2年補遺・ヴェネツィアのナポリ』の第2曲「カンツォーネ」の主題に使用している。マウロ・ジュリアーニのギター曲に「おお天よ、眠りの内に」(Deh calma, o Ciel)による変奏曲(作品101)があるほか、『ロッシーニアーナ』の1番は「柳の根元に座り」、2番は「おお天よ、眠りの内に」ではじまる。
デズデーモナに拒絶されたロドリーゴは苦しい胸中を告白する(Ah! come mai non senti)。デズデーモナはエミーリアに事情を打ちあけ、ロドリーゴがオテロを殺すことを恐れて彼のもとへ向かう。
愛する者の不実を恐れるオテロのもとにイアーゴが登場し、デズデーモナがロドリーゴを愛している証拠として手紙をオテロに見せる。オテロは手紙を読み、怒りに燃えて復讐しようとする(二重唱「Non m'inganno; al mio rivale」)。
ロドリーゴがオテロのもとに現れて決闘をはじめる(二重唱「Ah vieni, nel tuo sangue le offese」)。デズデーモナが止めにはいるが(三重唱「Che fiero punto è questo!」)、オテロにひどい扱いをされ、決闘を止めることもできずに気絶する。
エミーリアに介抱されてデズデーモナは息をふきかえし(Che smania. Oimè! che affanno!)、オテロの無事を聞いて安心するが、そこへ父のエルミーロが登場。デズデーモナは許しを求めるが(L'error d'un'infelice)、エルミーロは許さない。
第3幕
寝室で絶望におちいっているデズデーモナをエミーリアは慰めようとするが、彼女の悲しみは晴れない。外から聞こえて来るゴンドラ乗りの歌(Nessun maggior dolore)を耳にしてデズデーモナは自分の境遇に引きくらべ、今はなき友人のイザウラのことを思いだして竪琴を伴奏に柳の歌(Assisa a' piè d'un salice)を歌うが、涙で途中で止めてしまう。エミーリアが去った後、デズデーモナはひとり祈り(Deh calma, o Ciel, nel sonno)、眠りにつく。
オテロはひそかにデズデーモナの寝室にしのび込み、彼女を殺そうとするがためらう。デズデーモナは目をさまして潔白を主張するが、嵐の中オテロはデズデーモナを殺す(二重唱「Non arrestare il colpo」)。