インド人民党

インドの旗 インド政党
インド人民党
भारतीय जनता पार्टी
総裁 ジャガト・プラカーシュ・ナッダ(2020年 - )
成立年月日 1980年4月6日
前身政党 ジャナタ党[1]
(ジャンサン党系[2]
ジャンサン党[3][4][5]
本部所在地 インドの旗 インド デリー ニューデリー
下院議席数
240 / 545
(2024年6月17日[6]
上院議席数
75 / 245
(2020年3月30日[7]
党員・党友数
110,000,000人[8]
(2015年[8]
政治的思想・立場 中道右派[9] - 右派[10][11][12]
国民保守主義[13]
グローバリズム[1]
経済的自由主義[3]
インド憲法遵守[4]
政教分離主義[4]
ヒンドゥー・ナショナリズム[5][14]
非同盟主義[14]
右翼ポピュリズム[15][16]
国際組織 世界ヒンドゥー協会
国際民主同盟[17]
公式サイト Bharatiya Janata Party
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インド人民党(インドじんみんとう、英語: Bharatiya Janata Party[18], 略称:BJP[4][5], ヒンディー語: भारतीय जनता पार्टी, 略称:भाजपा、英語訳:Indian People's Party)は、インド政党。1998年から2004年までアタル・ビハーリー・ヴァージペーイー(バジパイ)を首相に同党中軸の国民民主同盟(National Democratic Alliance:NDA)連立政権を率いた。2014年からナレンドラ・モディ政権の与党[19]。モディが属する人民党はヒンドゥー教の規範を統治原理にし、日本では「ヒンドゥー至上主義政党」と呼ばれている[19]。略称のBJPは、「Bharatiya(インドを示す古来の名称)Janata(人民)Party」の頭文字である[19]

党の基盤となっているのが、国父ガンジー暗殺者ナトラム・ゴドセを輩出したヒンドゥー至上主義極右ファシスト団体民族義勇団(RSS)であり、モディもこのRSSの元活動家である[20][21]。また、RSSはアドルフ・ヒトラー及びナチス・ドイツを踏襲しているとされ[22][23][24][25][26][27][28]

国連人権審査は、人民党が人権活動家ジャーナリスト、平和的なデモ参加者を訴追しており、宗教的少数派への攻撃とその為の扇動差別ヘイトスピーチを発生させているとして警告している[29][30]

現在の党員数は1億人を超え、中国共産党を上回る世界最大の政党である[31][32]

基本姿勢

ヒンドゥトヴァインテグラル・ヒューマニズム英語版を掲げているヒンドゥー至上主義政党でイスラム教キリスト教をインドの価値観に合致しないとして批判するが、シヴ・セーナーに比べ穏健である。保守政党であるが、政教分離カースト解消などには基本的に賛成である。

BJPの支援団体として、2つのヒンドゥー至上主義組織、ラーシュトリーヤ・スワヤンセーヴァク・サング民族義勇団:RSS)とヴィシュヴァ・ヒンドゥー・パリシャド英語版(世界ヒンドゥー協会:VHP)とスワデーシー運動の団体スワデーシー・ジャガラン・マンチ英語版(SJM)がある。

歴史

発足まで

インドでは独立以来インド国民会議派(コングレス)が一党優位制を維持していたが、一方で民族義勇団に代表されるヒンドゥー至上主義の流れも根強く1951年インド大衆連盟英語版を結成。ラージャスターン州マハーラーシュトラ州マディヤ・プラデーシュ州ウッタル・プラデーシュ州など主に北西部で支持を集めていた。

その一方で1970年代から、各地での地域政党の勃興や会議派内の汚職、インディラー・ガーンディー時代の強権政治への不信感などにより会議派政権の支持が揺らぎ始めていた。1977年のローク・サバー下院)総選挙を前に大衆連盟は、会議派の反主流派や地方分権主義者・社会主義者の集合体だったローク・ダル英語版と急遽合体してジャナタ党(人民党の意)を結成。ジャナタ党は選挙に勝利しモラルジー・デーサーイー政権を樹立したが、野合した政党だったため政権獲得後に分裂し崩壊した。そこでヒンドゥー至上主義を明確にし「ヒンドゥットゥヴァに基づくジャナタ党」として再建されたのが、現在のインド人民党である。こうした経緯からまれにインド・ジャナタ党と日本語訳されることがある。

党勢の急伸

1984年のローク・サバー総選挙では2議席にとどまったが、1989年にはラール・クリシュナ・アードヴァーニー総裁の下で一挙に85議席を獲得し躍進、旧ジャナタ党の中道・左派を源流とするジャナタ・ダル主導の連立政権に共産党などと連携して閣外協力1991年の総選挙でも120議席に前進、1996年総選挙ではついに161議席を獲得して第一党となり、ジャナタ党政権で外相だった党の有力者アタル・ビハーリー・ヴァージペーイーが大統領から組閣を要請され首相に就任。だが、この時は反対勢力の結束・抵抗によってローク・サバーの信任を受けられず、わずか13日の束の間の政権に終わった。

政権樹立

しかし1998年の総選挙で再び最多議席となる182議席を獲得し、今度は他の政党と連立に成功、ヴァージペーイー首相のもと新たに形成した国民民主同盟連立政権の中核として中央政治のトップに上り詰めた。また政権掌握直後に核実験を実施し世界中を驚かせた。1999年の総選挙でも183議席(国民民主同盟各党派の合計では303議席)を獲得し政権維持に成功した。

このBJP主導の連立政権下で、それ以前の1991年ナラシンハ・ラーオ国民会議政権時代から当時のマンモーハン・シン財務相の下で本格的に開始された経済自由化政策が積極的に推し進められた。IT(情報技術)産業の急成長を軸にアメリカ主導のグローバリゼーションを推進する傾向が強かった。

下野

だが2004年のローク・サバー総選挙では経済発展に沸くインドを謳った"シャイニング・インディア"をスローガンに大々的な選挙キャンペーンを行ったものの、大方の予想に反し138議席の獲得に留まり第2党に後退、ソーニヤー・ガーンディー率いるインド国民会議を中心とした統一進歩同盟(United Progressive Alliance:UPA)に政権を奪われ、マンモーハン・シン首相の誕生を許すに至った。自由化の恩恵が未だ行き渡らないまま"India Shining"のようなキャンペーンを展開したことで、かつてBJP支持層であった国民の予想以上の支持離れを招いたものとみられている。2009年のローク・サバー総選挙でも議席を減少させ116議席にとどまり、政権奪還はならなかった。

2013年の党総裁はラージナート・シン2013年1月就任)。

2014年インド総選挙

2014年の総選挙前に、ナレンドラ・モディがインド人民党選挙運動委員会会長就任。選挙後の党指導者の座を確実にした。選挙ではインド国民会議を下野させ、インド人民党が圧勝。久々の政権奪取を確実なものとしたが、上院の議席保有率は2割程度しかないため法案を単独で通す能力は無く、他党の協力が模索されている[33]

新型コロナウイルス流行時

2020年に新型コロナウイルスがインド国内にて感染拡大した際、ヒンドゥー至上主義を掲げる国政与党(インド人民党)には、イスラム教徒がウイルスを利用して「コロナジハード(聖戦)」を仕掛けていると主張した政治家も現れた[34]。また、「イスラム教徒はヒンドゥー教徒を攻撃するためにウイルスを広めた」という投稿やイスラム嫌悪を煽る画像の拡散がSNS上で相次いだ[34]。一部地域では、イスラム教徒の立ち入りも制限されるなどの嫌がらせが発生するなどの問題が起こった[34]

選挙結果

党首 獲得議席数 増減 得票率
1984 ラール・クリシュナ・アードヴァーニー
2 / 533
増加 2 7.74
1989 ラール・クリシュナ・アードヴァーニー
85 / 545
増加 83 11.36
1991 ラール・クリシュナ・アードヴァーニー
120 / 545
増加 35 20.11
1996 アタル・ビハーリー・ヴァージペーイー
161 / 545
増加 41 20.29
1998 アタル・ビハーリー・ヴァージペーイー
182 / 545
増加 21 25.59
1999 アタル・ビハーリー・ヴァージペーイー
182 / 545
増減なし 0 23.75
2004 アタル・ビハーリー・ヴァージペーイー
138 / 543
減少 44 22.16
2009 ラール・クリシュナ・アードヴァーニー
116 / 543
減少 22 18.80
2014 ナレンドラ・モディ
282 / 543
増加 166 31.34
2019 ナレンドラ・モディ
303 / 543
増加 21 37.46
2024 ナレンドラ・モディ
240 / 543
減少 64 36.56

出典

  1. ^ a b 知恵蔵 コトバンク. 2018年9月18日閲覧。
  2. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 - 人民党(インド) コトバンク. 2018年9月18日閲覧。
  3. ^ a b 朝日新聞掲載「キーワード」 コトバンク. 2018年9月18日閲覧。
  4. ^ a b c d 日本大百科全書(ニッポニカ) コトバンク. 2018年9月18日閲覧。
  5. ^ a b c ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 コトバンク. 2018年9月19日閲覧。
  6. ^ Lok Sabha. “Members Seventeenth Lok Sabha Party-wise List(第18回ローク・サバ― 議会政党別リスト)”. ローク・サバー公式サイト. 2024年6月17日閲覧。
  7. ^ Members Party Position ラージヤ・サバ―公式サイト. 2020年5月31日閲覧。
  8. ^ a b APC registers 15.6million members - Oshiomhole (英語) デイリートラスト (2018年9月12日 19:38PM) 2018年9月19日閲覧。
  9. ^ Niha Masih; Joanna Slater (2019年6月21日). “U.S.-style polarization has arrived in India. Modi is at the heart of the divide.” (英語). The Washington Post. https://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/divided-families-and-tense-silences-us-style-polarization-arrives-in-india/2019/05/18/734bfdc6-5bb3-11e9-98d4-844088d135f2_story.html 2020年9月27日閲覧. "He leads the Bharatiya Janata Party, a center-right political party built around Hindu nationalism, the idea that India — home to a diversity of religions — is fundamentally a Hindu nation, not a secular republic. Exit polls on Sunday indicated that Modi and his BJP-led coalition would return to power. Official results will not be announced until Thursday." 
  10. ^ Banerjee 2005, p. 3118.
  11. ^ Malik & Singh 1992, p. 318.
  12. ^ Halarnkar, Samar (13 June 2012). "Narendra Modi makes his move". BBC News. The right-wing Hindu nationalist Bharatiya Janata Party (BJP), India's primary opposition party
  13. ^ Bonikowska, Monika (2014). “India After The Elections”. Centre for International Relations (6): 2. オリジナルの24 September 2017時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170924230618/http://www.csm.org.pl/en/analysis/category/53-2014%3Fdownload%3D617:m-bonikowska-india-after-the-elections-inspirations-for-europe-vi-2014-eng. 
  14. ^ a b デジタル大辞泉 コトバンク. 2018年9月18日閲覧。
  15. ^ Rao Jr., Parsa Venkateshwar (18 January 2016). “Modi's right-wing populism”. Daily News and Analysis. オリジナルの1 July 2017時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170701081155/http://www.dnaindia.com/analysis/column-modi-s-right-wing-populism-2166620 29 June 2017閲覧。 
  16. ^ Wodak, Ruth; KhosraviNik, Majid; Mral, Brigitte (2013). Right-Wing Populism in Europe: Politics and Discourse. A&C Black. p. 23. ISBN 978-1-780-93343-6. https://books.google.co.in/books?id=EUhMAQAAQBAJ&dq=Right-Wing+Populism+in+Europe:+Politics+and+Discourse&source=gbs_navlinks_s 
  17. ^ IDU Member Parties 2019.11.21閲覧。
  18. ^ デジタル大辞泉 - BJP コトバンク. 2018年9月18日閲覧。
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  20. ^ 【巨象の未来 インド・モディ政権2期目へ】下 過激化するヒンズー教徒 宗教分断どう食い止める”. 産経ニュース (2019年5月26日). 2023年5月20日閲覧。
  21. ^ ナレンドラ・モディ新首相が直面するインド内政の課題 | 研究プログラム”. 東京財団政策研究所. 2023年6月5日閲覧。
  22. ^ Why is Adolf Hitler popular in India?” (英語). The Jerusalem Post | JPost.com. 2023年9月23日閲覧。
  23. ^ Jha, Dhirendra K.. “The RSS and MS Golwalkar’s undeniable links to Nazism” (英語). The Caravan. 2023年5月27日閲覧。
  24. ^ “Hitler’s Hindus: The Rise and Rise of India’s Nazi-loving Nationalists” (英語). Haaretz. https://www.haaretz.com/opinion/2017-12-14/ty-article/hitlers-hindus-indias-nazi-loving-nationalists-on-the-rise/0000017f-f880-d460-afff-fbe61fe20000 2023年9月23日閲覧。 
  25. ^ ‘Golwalkar drew lessons from Hitler’s Germany’ https://archive.is/97n7C
  26. ^ link, Get (2020年9月23日). “RSS founders 'endorsed' Nazis: It’s well-nigh impossible for races, cultures to 'coexist'” (英語). 2023年5月27日閲覧。
  27. ^ Bureau, Pratidin (2021年3月8日). “Australian Senator Terms RSS, VHP As “Neo-Nazis”” (英語). Pratidin Time. 2023年5月27日閲覧。
  28. ^ Tasteless but true: Made in India Hitler ice-cream, café” (英語). Hindustan Times (2015年6月2日). 2023年9月23日閲覧。
  29. ^ Human Rights Watch Submission to the Universal Periodic Review of India” (英語). Human Rights Watch (2022年3月31日). 2023年6月5日閲覧。
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  31. ^ 総選挙、モディ首相の地元でBJP完勝(インド) | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報”. ジェトロ (2019年6月17日). 2020年10月6日閲覧。
  32. ^ “インド人民党が党員1億人キャンペーンを実施、中国共産党抜き世界最多へ―インド”. Record China. (2014年12月3日). https://www.recordchina.co.jp/b98483-s0-c70-d0000.html 2020年10月6日閲覧。 
  33. ^ “インド次期首相候補モディ氏が融和姿勢強調、イスラム教徒へ配慮”. ロイター (ロイター通信社). (2014年5月17日). https://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0DW1TI20140516/ 2014年5月17日閲覧。 
  34. ^ a b c 新型コロナ 「イスラム教徒がウイルス拡散」 インド、ヒンズー至上主義者が非難”. 毎日新聞. 2024年3月1日閲覧。

関連項目

外部リンク

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