『わたしだけのアイリス』は、源孝志の小説[1]。2018年6月に河出書房新社より単行本が刊行され[1]、2024年11月に河出文庫として文庫化された[2]。
NHK BSプレミアム4K・NHK BSの「プレミアムドラマ」枠にてテレビドラマ化され、2025年1月5日から放送予定[3]
タイトルの「アイリス」は、虹彩の英語名「Iris(アイリス)」を意味し、角膜と水晶体の間にある薄い膜でカメラにおける絞りの役割をする[4]。
あらすじ
登場人物
主要人物
- 立花海咲(たちばな みさき)
- 34歳。ファッション業界の最前線で活躍するトップフォトグラファー。「色彩のディーバ」と呼ばれる。天草出身。
- 実父・勝男は海咲が中学3年の時、海難事故で亡くなっており、辻村と再婚した母に反発して、1人だけ父の戸籍に残り、故郷を飛び出している。
- 進行性の錐体ジストロフィー[注 1]に罹り、最悪の場合は多くの色覚を失ってしまうため、契約を解除され仕事を失っている。
- 松浦晶太郎(まつうら しょうたろう)
- 天草の漁師。海咲の幼馴染みで同級生。幼稚園からずっと一緒で、高校では美術部で肩を並べていた。
- 学年一の秀才で、画家志望だった。今でも近くの網置小屋をアトリエにして絵を描いている。
- 巻上伸哉(まきがみ しんや)
- 海咲が専属契約をしている、人気ファッション誌「コンテンポラリー」の編集長。海咲の「庇護者」で恋人関係。
- 朝倉智之(あさくら ともゆき)
- 慈明医科大学附属病院の眼科医。海咲の虹彩がヘーゼルナッツ色のグラデーションを持つ珍しい色だと言う。
- 丸一日かけた精密検査の結果、海咲の症状は進行性の錐体ジストロフィーという難病で有効な治療法はないと告げる。
- 藤島(ふじしま)
- 海咲の専属アシスタント。
- 佐野麻衣子(さの まいこ)
- 「コンテンポラリー」の編集部員。皆から「サノマイ」と呼ばれる。
- 塩沢美也子(しおざわ みやこ)
- 46歳。「コンテンポラリー」の副編集長。
- 木嶋作太郎(きじま さくたろう)
- 海咲のかつての師匠で超一流の写真家。海咲のことを「海ちゃん」と呼ぶ。神田の写真館の倅で小気味よく喋る江戸っ子。
- 卒業制作展で海咲の作品に目を留めてくれ、21歳の時に弟子入りし、3年間師事したが、ファッションフォトがやりたくて独立を願い出ている。
- 辻村多一郎(つじむら たいちろう)
- 天草の定期航路船舶の船長。海咲の母の再婚相手。海咲の父の海難事故の時に相手方の貨物船の航海長で衝突の瞬間、舵を握っていたことが後から判明する。
海咲の家族・関係者
- 辻村七瀬(つじむら ななせ)
- 29歳。海咲の妹。天草に住んでおり、本渡の小学校で養護教諭をしている。小学生の頃は泣き虫で、いつも海咲の後をくっついて歩いていた。
- 海咲は結婚式には出席しなかったが、自分の妹ながら綺麗な子だと感じながら、七瀬のヘアメイクなどもこなして、ウエディング姿の写真を撮っている。
- 辻村しのぶ(つじむら しのぶ)
- 海咲の母。際限がないほど優しくて心配性。夫・勝男の海難事故での2,000万円近い賠償残額[注 2]を肩代わりしてくれた辻村と再婚している。
- 当時18歳だった海咲は、母の苦労や家族の苦境も理解しながらも、大好きだった父に対する裏切りが許せず、以来確執が生じている。
- 福原清太郎(ふくはら せいたろう)
- 七瀬の結婚相手。熊本の看護福祉大学で七瀬と同級生だった。天草市役所福祉課勤務。海咲の感想は「第一印象以上に純良な青年」で、七瀬は人を見る目があると感心している。
- 立花勝男(たちばな かつお)
- 海咲の父。明るい海のように快活で、無私で優しかった。漁船が大型貨物船と衝突して沈没、行方不明となり遺体も発見されていない。
- 加藤美徳(かとう よしのり)
- 海咲の高校時代の美術の教師。美術部の顧問で美徳(びとく)先生と呼ばれていた。海咲のことを当時から親身に気遣ってくれている。
- 教師になる前に5年間、イタリアのフィレンツェにある美術学校で学んでおり、妻・フランチェスカはその時の同級生で恋人。
- 加藤フランチェスカ(かとう フランチェスカ)
- 美徳の妻。天草に来て30年ほどになる。高校時代にも海咲にトスカーナ料理を振る舞ってくれている。
- 竹崎淳弥(たけざき じゅんや)
- 海咲の高校時代の恋人。一学年上。バスケットボール部主将で、進学校だった天草西高を県大会準優勝に導いている。
- 大阪の実業団で試合中に大きな故障をして地元に帰り、現在はNPO法人「天草クリーン・コースト」を運営している。
- グザビエ神父
- 海咲に洗礼を授けた。海咲の洗礼名はアグネス。長く大江や崎津の教会で司祭を務めた。
- 現在はフランスに帰り、故郷のブールジュにあるサン=テチエンヌ大聖堂で司教をしている。
晶太郎の家族・関係者
- 松浦茂雄(まつうら しげお)
- 晶太郎の父。漁師で海咲の父の親友だった。19年前の海難事故の時、海咲の父を助けようとして左腕を失っている。
- 松浦百合(まつうら ゆり)
- 晶太郎の母。海咲の母と仲良し。小柄で少し病弱だが、優しい。海咲のことを自分の娘のように思っている。
- 松浦詠輔(まつうら えいすけ)
- 4歳年下の弟。外科医。熊本大学を卒業して、大学病院でインターンをしている。
- 黒沢(くろさわ)
- 福岡の画廊の娘。数ヶ月に1度、気に入った絵を買い上げるために訪れる。
その他
- 香坂美里(こうさか みさと)
- 33歳。優秀なスタイリストで「コンテンポラリー」の専属ワードローブも担当している。
- 江原大作(えはら だいさく)
- アートディレクター。プライドが高くて経験と実績を振りかざす。
- 小村(こむら)
- 木嶋作太郎門下で最年長の弟子。海咲のかつての兄弟子。人間性が劣悪で、海咲とは昔からウマが合わない。
- 菅沼(すがぬま)
- 眼科医。海咲の検査を行った上で、恩師の朝倉教授に紹介状を書いてくれる。
書籍情報
テレビドラマ
『TRUE COLORS』(トゥルーカラーズ)のタイトルでNHK BS4K・NHK BSの「プレミアムドラマ」枠にて2025年1月5日から放送予定[3][7]。主演は倉科カナ[8]。
キャスト
主要人物(テレビドラマ)
- 立花海咲(たちばな みさき)
- 演 - 倉科カナ[3]
- ファッション業界の最前線で活躍するトップフォトグラファー。天草出身。眼の難病を告知されてしまう。
- 松浦晶太郎(まつうら しょうたろう)
- 演 - 毎熊克哉[3]
- 海咲の幼馴染みで、高校時代は同じ美術部。夢を諦めて天草で漁師をしている。
- 巻上伸哉(まきがみ しんや)
- 演 - 滝藤賢一[3]
- 海咲が専属契約を結んでいる人気ファッション誌「Le Salon」の編集長。海咲の恋人にして、パトロン的存在。
- 朝倉智之(あさくら ともゆき)
- 演 - 要潤[3]
- 大学病院の眼科医で、海咲の主治医。
- 藤島一平(ふじしま いっぺい)
- 演 - 森永悠希[3]
- 海咲の専属撮影助手。
- 佐野麻衣子(さの まいこ)
- 演 - 森田想[3]
- 「Le Salon」のクールで向上心の強い編集部員。
- 塩沢美也子(しおざわ みやこ)
- 演 - 伊勢佳代[3]
- 「Le Salon」の副編集長。海咲の実力は認めているが、編集長との関係を良くは思っていない。
- 紀田ジュンコ(きだ ジュンコ)
- 演 - 名取裕子[3]
- 実力派メイクアップアーティスト。海咲の才能にほれ込み、公私共に彼女を支える。
- 木嶋作太郎(きじま さくたろう)
- 演 - 石橋蓮司[3]
- 伝説の有名写真家。海咲がかつて師事しており、今も海咲を愛情深く見守るカメラの師匠。
- 辻村多一郎(つじむら たいちろう)
- 演 - 渡辺謙[3]
- 海咲の母の再婚相手。天草の定期航路船舶の船長。海咲とは確執のため、絶縁状態となっている。
海咲の家族・関係者(テレビドラマ)
- 立花勝男
- 演 - 北村一輝[9]
- 約20年前に海難事故で亡くなった海咲の実父。
- 辻村しのぶ
- 演 - 賀来千香子[9]
- 海咲の母親。
- 辻村七瀬
- 演 - 穂志もえか[9]
- 海咲の妹。
- 竹崎淳弥
- 演 - 玉置玲央[9]
- 海咲と晶太郎の高校の先輩。
- 加藤美徳
- 演 - 加藤雅也[9]
- 海咲の高校時代の恩師である美術教師。
晶太郎の家族・関係者(テレビドラマ)
- 松浦百合
- 演 - 宮崎美子[9]
- 晶太郎の母親。
- 松浦茂雄
- 演 - 中原丈雄[9]
- 晶太郎の父親。
- 黒沢涼子
- 演 - 伊藤歩[9]
- 晶太郎を支援する福岡の画商。
その他(テレビドラマ)
- 加藤フランチェスカ
- 演 - シルビア・グラブ[9]
- 美徳の妻。
- 海難審判の理事官
- 演 - 髙嶋政宏[9]
- 勝男の海難事故の真相を知る理事官。
スタッフ
脚注
注釈
- ^ 色覚異常の一種で、極めて症例が少なく、有効な治療法は見つかっていない[5]。
- ^ 夫・勝男の海難事故の審判で父の過失責任が7、相手の船会社が3とされ、父の不在のまま、巨額の賠償責任が母に課され、保険金や貯金、漁協の援助を受け、懸命に働いたが2年で身体を壊して2,000万円近い賠償額が残った[6]。
出典
外部リンク