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(2020年6月 )
KISS(シュタッドラー・レール)
最初に導入されたKISS(スイス国鉄RABe511形)
基本情報 製造所
シュタッドラー・レール 製造年
2011 ~ 主要諸元 編成
3両編成 ~ 6両編成 軸配置
「導入例」参考 軌間
1,435 mm 、1,520 mm 電気方式
交流 15,000 V / 16.7 Hz交流 25,000 V / 50 Hz交流 25,000 V / 60 Hz直流 3000 V (架空電車線方式 ) 最高運転速度
120km/h ~ 200km/h 編成定員
「導入例」参考 編成重量
「導入例」参考 編成長
「導入例」参考 全幅
2,800mm ~ 3,400mm 全高
4,595mm ~ 5,595mm 床面高さ
「導入例」参考 定格出力
400kW / 基 ~ 750kW / 基 定格引張力
動力台車当たり67.5kN ~ 100kN テンプレートを表示
KISS はスイス の鉄道車両メーカーであるシュタッドラー・レール が展開する2階建て電車 のブランドである。計画時はDOSTO のブランド名で呼ばれていた[ 1] 。
概要
2008年 にスイス連邦鉄道 との間で車両導入の契約が成立して以降[ 2] 、2016年 の段階で8ヶ国に242編成・1145両が導入されている[ 3] 、高い収容力を持つ2階建て電車。車体は軽量かつ頑丈なアルミニウム合金を採用しており、扉は都市圏での使用を考慮し両開き扉を採用している。最高速度は160km/hで、編成は最短2両、最高8両編成まで対応している。また顧客の要望に応じたカスタマイズも可能で、着席定員数も最大1000人まで増やす事が出来る[ 2] 。特に旧ソ連 各国の鉄道路線に導入された編成は独自の仕様となっており、KISS Eurasia とも呼ばれている[ 4] 。
また、並行してインターシティ など都市間長距離運用に適したKISS200 と呼ばれるブランドも展開しており、車内にカフェスペース が設置されている他、最高速度も200km/hに変更されている[ 5] 。
なお、名称のKISS はドイツ語 で「快適・革新的・高速な都市近郊列車 (komfortabler innovativer spurtstarker S-Bahn-Zug)」と言う意味である[ 2] 。
導入例
KISS160
スイス(スイス連邦鉄道)
チューリッヒ のSバーン を始めとした各地の路線へ向け、スイス連邦鉄道 は2008年 4月 と2014年 4月 に6両69編成[ 6] 、2010年 4月 には4両24編成の発注を行っており[ 7] 、さらに、2021年には従来の契約のオプションを行使して6両60編成を発注している。
スイス(BLS AG)
スイス の私鉄であるBLS AG が運営するベルン 近郊のSバーン へ向け、4両編成31本のKISSが導入されている。EU諸国の鉄道車両における安全基準として2008年に制定されたEN15227 [ 8] に基づき、上記のスイス連邦鉄道向けの編成から前面デザインが変更されている[ 9] 。
ドイツ(東ドイツ鉄道)
ベルリン やブランデンブルク州 で地域輸送を行う東ドイツ鉄道 (ODEG, Ostdeutsche Eisenbahn GmbH)は、2009年 12月 にベルリン ・パンコウ区 にあるシュタッドラーの工場で製造されたKISSの導入を決定し、2018年 8月 現在4両編成16本が在籍している[ 10] [ 11] 。
自転車を使う利用客を考慮し車内には自転車用のスペースが設置されており、前面は安全基準・EN15227に基づいた設計となっている[ 10] 。
2012年 に最初の編成が完成したがドイツ連邦当局からの承認が遅れ[ 13] 、営業運転開始日は2013年 1月8日 となった[ 12] 。
ドイツ(ヴェストファーレンバーン)
ドイツ 北部で旅客列車の運用を行う[ 17] ヴェストファーレンバーン (WFB, Westfalenbahn)では、2018年 8月 現在6両編成13本のKISSが営業運転に用いられている[ 14] 。2013年 2月 に同じくシュタッドラーの鉄道車両であるFLIRT と共に発注が行われ、営業運転開始は2015年 12月 である[ 18] 。
一部の2階席は優等座席になっているほか、車内には自転車収容スペースも設置されている[ 15] 。
ルクセンブルク
2014年 12月 から、ドイツ 国境を越える国際列車としてルクセンブルク国鉄 が所有する3両編成のKISS(2300形電車)が営業運転を開始した。当初は8本が導入されたが、同年新たに11本の追加発注が行われ、それらの増備車については優等座席数が増加している[ 19] 。
ルクセンブルク国鉄とドイツ鉄道双方の電圧に対応した複電圧車となっているのが特徴である[ 19] 。
アメリカ
アメリカ ・カリフォルニア州 で通勤列車を運行しているカルトレイン (Caltrain)は、環境対策や高速運転を目的に2016年 にそれまで非電化区間であった路線の電化計画 を承認し、併せて新規に導入する2階建て車両をシュタッドラー・レール へ発注した[ 21] 。車体の安全性やバリアフリー設備はアメリカの安全基準に合わせて設計されており、自転車通勤 者の需要に合わせ車内には自転車を置くことが出来るエリアが設置されている。また低床式プラットホームに適応した扉が一階部分に増設されている[ 22] 。
編成は4両編成、営業最高速度は177km/h(毎時110マイル)で、2019年 から16本の製造が予定されている[ 22] 。
スウェーデン
イノトランス2018 で展示された車両
2016年 6月20日 、シュタッドラーはスウェーデン の交通機関運営事業者であるMälab との間で4両編成33本のKISSを製造する契約を結んだ事を発表した。当初は2015年 6月 に受注が確定していたが、競合他社からその際の入札内容に関して異議が唱えられ、裁判の結果それが却下された事で改めて契約を行った経緯を持つ[ 23] 。最高速度は200km/hで、スウェーデンの気候に対応した耐寒仕様となっている[ 24] 。
2018年 6月27日 に最初の編成がストックホルム中央駅 で公開され、2019年 から営業運転を開始する[ 24] 。
ハンガリー
ドゥナケシ客車工場で出庫されるハンガリー国鉄815形電車
2017年 4月12日 に、シュタッドラーはハンガリー国鉄 との間で6両編成6本のKISSを製造する契約を結んだ事を発表した。これはブダペスト 近郊の鉄道需要の拡大によるもので、ハンガリー初の2階建て電車 となる。着席定員数は600人、最高速度は160km/hで、2019年 の運行開始を予定している。また、契約内容によりハンガリー国鉄には最低10編成の購入が義務付けられている[ 25] 。
ハンガリー国鉄815形電車の編成表[ 26]
号車
1
2
3
4
5
6
形式・車両番号
94 55 1815 xxx-y H-START
94 55 3815 xxx-y H-START
94 55 4815 xxx-y H-START
94 55 5815 xxx-y H-START
94 55 6815 xxx-y H-START
94 55 2815 xxx-y H-START
車種
制御電動車
付随車
付随車
付随車
付随車
制御電動車
軸配置
Bo'Bo'
2'2'
2'2'
2'2'
2'2'
Bo'Bo'
その他設備
自転車スタンド
多用度スペース
備考
編成長: 155,880mm、全高: 4595 mm
電気方式: 25 kV / 50 Hz(交流 )
起動加速度 : 1.1 m/s2
定格出力(編成): 4000 kW(500 kW / 基)
保安装置: EVM、ETCS (レベル2)
スロベニア
スロベニア:スロベニア鉄道 (313/318形)
2018年 、スロベニアの国有鉄道であるスロベニア鉄道 は、旅客列車の近代化を目的にシュタッドラー・レールとの間に新型車両導入の契約を交わした。その中にはスロベニア国内向け車両である「KISS」も含まれており、3両編成10本が2022年 から営業運転に用いられている[ 27] [ 28] [ 29] 。
KISS200
オーストリア
ウェストバーン鉄道で運用中のKISS200
オーストリア で都市間列車 を運営している列車運行会社(オープン・アクセス・オペレーター) であるウェストバーン [ 30] (WESTbahn Management GmbH)では、営業開始時から全列車に長距離向けのKISS200を導入している[ 31] 。
ヴェストバーン4010形電車の編成表[ 32]
号車
1
2
3
4
5
6
形式・車両番号
93 85 4010 xxx-y
93 85 4010 xxx-y
93 85 4010 xxx-y
93 85 4010 xxx-y
93 85 4010 xxx-y
93 85 4010 xxx-y
車種
制御電動車
付随車
付随車
付随車
付随車
制御電動車
軸配置
Bo'Bo'
2'2'
2'2'
2'2'
2'2'
Bo'Bo'
その他設備
備考
編成長: 150,000 mm、全高: 4595 mm
床面高さ - 扉: 570 mm, 一階: 440 mm, 二階: 2515 mm
電気方式: 15 kV / 16.7 Hz(交流)
起動加速度 : 0.85 m/s2
定格出力(編成): 4000 kW(500 kW / 基)
ドイツ
ドイツ鉄道のKISS200
メンテナンス費用の高騰や利用客に比べての車両数過剰などの理由により、上記のウェストバーン鉄道が導入したKISS200は全車ドイツ鉄道 へ譲渡される。ドイツ鉄道ではインターシティ (インターシティ2 )に使用される事になっており、2020年 3月 から4両編成9本を用いロストック - ドレスデン 間で営業運転を開始した。今後は更に車両の譲渡が行われ、2022年 からはシュトゥットガルト - チューリッヒ 間でも営業運転を行う予定となっている[ 33] [ 34] [ 35] [ 36] [ 37] 。
KISS Eurasia
アエロエクスプレスESh2形電車アゼルバイジャン鉄道ESh2形電車 ジョージア鉄道GRS形電車
アエロエクスプレスESh2形
アゼルバイジャン鉄道EN2形
ジョージア鉄道GRS形
基本情報 運用者
アエロエクスプレス アゼルバイジャン鉄道 ジョージア鉄道 製造所
シュタッドラー・レール 製造年
2014年 製造数
4両編成11本、6両編成9本(2017年 現在)[ 38] 運用開始
2015年 6月 (アゼルバイジャン鉄道)[ 39] 主要諸元 編成
4両、6両編成 軸配置
4両編成 2'2'+Bo'2'+Bo'Bo'+2'2'6両編成 2'2'+Bo'Bo'+2'2'+2'2'+Bo'Bo'+2'2' 軌間
1,520mm 電気方式
直流 3,000V (架空電車線方式 ) 設計最高速度
160km/h 編成定員
4両編成 398+8人(着席+折り畳み座席) 523人(立席)6両編成 700+8人(着席+折り畳み座席) 842人(立席) 車両定員
88人(着席:先頭車:ビジネスクラス合造車 ) 112+8人(着席+折り畳み座席:先頭車) 94人(着席:電動車) 152人(着席:付随車) 編成重量
4両編成 237t6両編成 349t 編成長
4両編成 101,700mm6両編成 155,100mm 全長
28,800mm(制御車) 22,050mm(電動車) 26,700mm(付随車) 全幅
3.400mm 全高
5,250mm 床面高さ
1,285mm(エントランス) 685mm(1階部分) 2,974mm(2階部分) 編成出力
4両編成 3,900kw6両編成 5,200kw 定格出力
4両編成 2,400kw6両編成 3,200kw 備考
製造数・運用開始を除く数値は[ 40] [ 41] [ 42] に基づく。 テンプレートを表示
ロシア連邦
ロシア連邦 で空港連絡列車 を運営するアエロエクスプレス (ООО «Аэроэкспресс»)のうち、特にモスクワ 郊外にあるドモジェドヴォ空港 とパヴェレツキー駅 を結ぶ系統は2013年 の段階で年間1700万人近くの乗客が利用し、空席を見つける事が困難なほどに混雑していた。しかし路線の過密ダイヤの影響で列車の増発は難しく、現在のサービスの維持が課題となっていた。そこでアエロエクスプレスはより多数の乗客を輸送することが出来る2階建て電車の導入を決定。複数企業による入札の結果、それまで欧州各地に展開していたKISSの実績などが評価され2013年 5月 にシュタッドラー・レール が6億8,500万ユーロで契約を獲得した[ 43] 。
欧州各地の鉄道路線に比べ、ロシア連邦 を始めとしたソ連国鉄 を由来とする鉄道網は線路幅が1,520mmと広いだけではなく建築限界も大きく、気象条件も異なる。それに適応させるため、シュタッドラーは新たな設計の二階建て電車を用意することとなった[ 43] 。これがKISS Eurasia (Евразия)である。なお、ロシア(アエロエクスプレス)向けの車両についてはKISS RUS (АЭРО) の名称でも呼ばれている[ 4] 。
編成は4両編成と6両編成が存在し、最大3編成まで総括制御が可能である[ 40] 。また編成内の電動車は制御車・付随車と比べて全長が短い[ 41] 。
車体はアルミニウム製で、軽量化とコスト削減が同時に実現している他、ロシアの気候に合わせ-50℃の低温にも耐えることが出来る構造となっている。営業最高速度は160km/h、設計最高速度は200km/hである[ 41] 。車内は多数の乗客に対応した構造になっている事に加え、バリアフリーや安全性にも考慮した設備となっている。またwi-fi通信にも対応している[ 40] 。
扉・エントランス
2階へ向かう階段付近
1階へ向かう階段付近
ビジネスクラス席
普通席
運転台
2014年 に最初の車両が落成した[ 44] が、後述のルーブル暴落も含めたロシア連邦の経済情勢の中で導入が遅れ、2017年 10月 からキエフスキー ~ヴヌーコヴォ国際空港 間で営業運転を開始した[ 45] 。同年の11月 からは当初の計画路線であったドモジェドヴォ空港 ~パヴェレツキー 間でも使用されている[ 46] 。最初の3編成はスイス のアルテンハイン の工場で、以降の編成はベラルーシ ・ミンスク の工場で製造がおこなわれている[ 43] 。
なお、アエロエクスプレス に導入された編成についてはESh2形 (ЭШ2)の形式名が与えられている[ 38] 。
アゼルバイジャン、ジョージア
2014年 以降製造が行われたKISS eurasiaであったが、2014年 に起きたルーブル暴落[ 47] の影響によりアエロエクスプレスは新車導入代金のうち42億4,000万ルーブルが支払えない状態に陥り、最終的に交渉の末一部編成の導入をキャンセルする事となった[ 48] 。その後、これらの編成については旧ソ連と同規格の路線網を有する他国への販売が検討され[ 48] 、最終的にアゼルバイジャン鉄道 (Azərbaycan Dəmir Yolları)とジョージア鉄道 (საქართველოს რკინიგზა)が購入する事となった。
そのうちアゼルバイジャン鉄道は2015年初頭にESh2形 (EŞ2)[ 38] として4両編成5本を導入する契約を交わし、同年に開催された2015年ヨーロッパ競技大会 に合わせて6月 からバクー ~スムガイト 間で営業運転を開始した[ 39] 。最高速度は160km/hで、塗装は白を基調とし中央部に黒の帯が描かれたものに改められている。
一方、ジョージア鉄道にはGRS形 (GRS)と言う形式名で4両編成4本が導入されており[ 38] 、2017年 からトビリシ ~バトゥミ 間で営業運転を開始した[ 49] 。こちらも塗装がアエロエクスプレスから変更されており、ジョージアの国旗 を基調にしたデザインになっている。
関連項目
脚注
外部リンク