996型レーダー(英語: Type 996 radar)は、イギリスのシーメンス・プレッシー(現在のBAEシステムズ)社が開発した3次元レーダー。またAWS-9として輸出にも供されたが、オスロ級フリゲートの搭載機は2次元式のAWS-9(2-D)とされており、アンテナの形状もパラボラアンテナに変更されている。
来歴
1980年代初頭、イギリス海軍は、当時開発中だった新世代の水上艦艇に搭載するための、新しい長距離捜索レーダーを模索していた。1983年、幕僚目標「カーディナル・ポイント」仕様に応じるかたちで技術提案書が発出され、まず開発契約が締結された。高角測定(英語版)の強化が重視され、可能性がある多くの業者に対して様々な要求が提示された。この結果として各社の開発・設計プロセスは混乱し、提案の中間管理審査では、契約に値する製品を生み出せそうもない状態が明らかになった。
この状況を受けて従来の取り組みは中止され、まったく異なる3つのレーダーを入札することが決定された。1つはアメリカ海軍が用いているのと同様の完全な3次元レーダーだったが、イギリスの艦船に合うように若干小型化された。1つは限定的な高角測定能力を備えた近代的な2次元レーダー、残る1つは両者の中間的なもので、「2.5次元」と表現された。
これに応じて開発されたのが996型であり、1984年第4四半期、プレッシー社が勝者となったことが宣言された。1986年4月、まず既存の艦に搭載するための996/1型の生産契約が締結され、2年後には新造艦に搭載するための996/2型の生産契約も締結された。
設計
996型は、プレッシー社の輸出向け製品であるAWS-5をもとに発展させて開発されたとされるが、3次元レーダーとしての機能を有するという点で、従来の同社製品とは一線を画していた。
アンテナはストリップラインを積み上げて複数のビームを形成する方式であり、垂直方向は、構造的に類似するシグナール社のSMART-Sと同じく周波数走査(FRESCAN)方式としている[注 1]。
送信機としては進行波管(TWT)を採用しており、同社の陸上レーダーであるAR-320の技術が導入されている。異なる周波数のバースト信号を送信し、各バースト内のサブパルスはパルス圧縮のために位相コード化されている。受信機はダブルスーパーヘテロダイン方式で、パルス圧縮技術が導入されている。
2000年代に入って、新型の997型による更新が開始されている。
採用国と搭載艦艇
脚注
注釈
出典
参考文献
- Burr, Ron L.; Grove, Eddie O. (2010), “ch.10 Naval Radar”, The Decca Legacy - A View from Inside The Radar Company, Wootton Bridge Historical, https://woottonbridgeiow.org.uk/decca-legacy/chapter10.php
- Friedman, Norman (1997), The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems 1997-1998, Naval Institute Press, ISBN 9781557502681
- ForecastInternational (2004年). Type 996/AWS-9 - Archived 7/2005 (Report).
- Streetly, Martin (2005), Jane's Radar and Electronic Warfare Systems (17th ed.), Janes Information Group, ISBN 978-0710627049
関連項目
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