「過ぎ去りし日々 」(すぎさりしひび、原題: All Those Years Ago )は、1981年にシングルとして発売されたジョージ・ハリスン の楽曲である。本作は、1980年に殺害されたビートルズ の元バンドメイトであるジョン・レノン への追悼歌となっており、レコーディングには同じく元バンドメイトのリンゴ・スター とポール・マッカートニー らが参加した。
解説
レコーディングに至る経緯
1980年9月に完成し、11月に発売予定だったアルバム『想いは果てなく〜母なるイングランド 』が、ダーク・ホース・レコード の販売元であるワーナー・ブラザース・レコード の社長モー・オースティン から収録曲の一部とジャケットの差替えを命じられたことから、リリースが延期されてしまった。その頃ロサンゼルス での新しいアルバム 用のレコーディング・セッションを終えてロンドンに戻ってきたスターから、楽曲の提供を依頼された。ハリスンは11月19日から25日にかけて自宅スタジオであるフライアー・パーク・スタジオ で行われたレコーディング・セッションで本作と「ラック・マイ・ブレイン」の2曲を提供し、キーボード にアル・クーパー 、ベース にハービー・フラワーズ 、パーカッション にレイ・クーパー という布陣で、スターのボーカルとドラムを録音した[ 注釈 1] 。ところが、スターは本作のボーカルが彼の声域に対して高すぎると感じ、歌詞についても気に入らなかったため、ハリスンは自分のアルバムの差し替え候補曲とすることにした。
共同プロデュースをレイ・クーパーに依頼し、アルバムの再レコーディングを開始した矢先、12月8日にレノンがニューヨークの自宅アパート前で射殺された [ 7] 。この日たまたま本作のボーカル差し替えのためのレコーディングを行っていたハリスンは、翌日の未明に訃報を知ると大きなショックを受けた[ 8] 。デレク・テイラー を通じて、レノンに敬意を表する声明を発表するとともに、バハマからニューヨークへ移動中のスターにも電話で話をした。ハリスンは音楽で心を癒そうと考え、レコーディングを続ける決心をした[ 注釈 2] 。
レコーディング
翌月、追悼歌としてレノンを称える歌詞に書き換え、ボーカルを再度録音し直した。書き換えられた歌詞の中には、「Imagine [ 注釈 3] 」や「All You Need Is Love 」とレノンが作曲した楽曲のタイトルや、レノンを殺害したマーク・チャップマン についての言及[ 注釈 4] が見られる。
その後、ジョージ・マーティン とジェフ・エメリック を伴って[ 注釈 5] マッカートニー夫妻とウイングス のデニー・レイン がスタジオを訪れた。アルバム『タッグ・オブ・ウォー 』に収録する予定の「ワンダーラスト 」にハリスンのギター演奏をオーバーダブ するためだったのだが、ハリスンの提案で3人のバッキング・ボーカル を録音することになった[ 注釈 6] 。このため、ハリスン、マッカートニー、スターの3人が一堂に会したわけではなかったが、結果的に1970年1月の「アイ・ミー・マイン 」のセッション以来の共演した楽曲となった[ 注釈 7] 。
リリース
1981年5月、「神のらくがき 」とのカップリングで[ 注釈 8] アルバムからの先行シングルとして発売された。アメリカの『ビルボード 』誌のHot 100 では最高位2位[ 12] を記録し、同誌のアダルト・コンテンポラリー・チャートでは第1位を獲得した[ 13] 。全英シングルチャート では最高位13位[ 14] だった。
後に『ダーク・ホース 1976-1989 』や『レット・イット・ロール ソングス・オブ・ジョージ・ハリスン 』などのコンピレーション・アルバムに収録された。また1992年に発売されたライブ・アルバム『ライヴ・イン・ジャパン 』には同年の日本武道館 公演でのライブ音源が収録された[ 15] 。2010年、AOL Radio のリスナーによる投票「10 Best George Harrison Songs 」の第6位にランクイン[ 16] 。
シングル収録曲
7インチシングル盤 全作詞・作曲: ジョージ・ハリスン。 # タイトル 作詞 作曲・編曲 時間 1. 「過ぎ去りし日々」(All Those Years Ago ) ジョージ・ハリスン ジョージ・ハリスン 3:43 2. 「神のらくがき」(Writing's on the Wall ) ジョージ・ハリスン ジョージ・ハリスン 3:59 合計時間:
7:42
参加ミュージシャン
※出典
チャート成績
年間チャート
チャート (1981年)
順位
Canada Top Singles (RPM )[ 31]
30
イタリア (FIMI)[ 23]
67
US Billboard Hot 100[ 32]
74
US Cash Box Top 100[ 33]
38
脚注
注釈
^ 他にスー・トンプソン の「 ユー・ビロング・トゥ・ミー 」のカバーも録音した。
^ この日、レイとドラマーのデイヴ・マタックス と共に「ブラッド・フロム・ア・クローン」を予定通り録音した[ 9] 。
^ 歌詞の中では「You were the one who imagined it all 」と歌われている。
^ 歌詞の中では「the devil's best friend 」と表現されている。
^ アルバムのライナーノーツでマーティンとエメリックに感謝の意を表している。
^ 結局「ワンダーラスト」用のハリスンのギター演奏は、録音されることはなかった。
^ なお1979年5月19日、エリック・クラプトン とパティ・ボイド の結婚式に揃って参列した3人は「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 」を演奏している。
^ この曲はレノンの生前に録音されたものだったが、人生の儚さと精神的な目的を認識することの重要性を歌っている歌詞がカップリングにふさわしいと考えられた。
出典
参考文献
Badman, Keith (1999). The Beatles After the Breakup 1970-2000: A day-by-day diary . London: Omnibus Press. ISBN 0-7119-7520-5
Madinger, Chip; Easter, Mark (2000). Eight Arms to Hold You: The Solo Beatles Compendium . Chesterfield, MO: 44.1 Productions. ISBN 0-615-11724-4
Leng, Simon (2006) [2003]. While My Guitar Gently Weeps: The Music of George Harrison . Milwaukee, Wisconsin: Hal Leonard Corporation . ISBN 1423406095
Badman, Keith (2009). The Beatles Diary Volume 2: After the Break-Up 1970-2001 . London: Omnibus Press . ISBN 0857120018
Womack, Kenneth (2009) [2000]. The Cambridge Companion to the Beatles . Cambridge: Cambridge University Press . ISBN 052186965X
Rodriguez, Robert (2010). Fab Four FAQ 2.0: The Beatles' Solo Years, 1970–1980 (illustrated ed.). New York: Backbeat Books. ISBN 978-0-87930-968-8
Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four . Santa Barbara, California: ABC-CLIO . ISBN 0313391726
MacFarlane, Thomas (2019). The Music of George Harrison . Oxfordshire: Taylor & Francis . ISBN 042994148X
関連項目
外部リンク
シングル
1970年 1971年 1973年 1974年 1975年 1976年 1977年 1979年 1981年 1982年 1985年 1987年 1988年 1989年 2003年
スタジオ・アルバム ライブ・アルバム ベスト・アルバム ボックス・セット 関連項目 関連人物
カテゴリ