『軍鶏』(しゃも)は、橋本以蔵原作・たなか亜希夫画による日本の格闘漫画作品。
2008年にショーン・ユー、魔裟斗主演で映画化された。
他の競技漫画とは趣が異なっており、自己修養やスポーツマンシップなどの近代体育的な価値観ではなく、格闘技の負の側面である「暴力」の手段としての要素や、日本社会の闇、人間心理の暗黒面を大きく取り上げているのが特徴。
最初は双葉社の『漫画アクション』に連載されていたが、同誌の休刊(リニューアル)に伴い講談社の『イブニング』に移籍した。なお単行本19巻以前が『アクション』掲載分、20巻以降が『イブニング』掲載分である。移籍に伴う諸事情により『アクション』掲載時終盤の数話は単行本として発行されることなくお蔵入りとなっていたが、完全版発売の際に収録された。この講談社への移籍は作画担当のたなかが独断で行い、原作者である橋本との関係が悪化するきっかけとなった[注釈 1]。
2008年1月を境に、『イブニング』誌での連載が原因不明のまま休止していたが、後にたなかが橋本を相手取り、著作権者がたなかであることの確認や単行本の著作権料を請求したためであることが明らかとなった[1]。当時の報道によれば、たなか側は「橋本は連載当初に大ざっぱなあらすじが書かれた原稿しか出しておらず、ストーリーやキャラクター設定、せりふなどすべて自分が行った」「軍鶏は自分が単独で創作した作品」と主張している(橋本側は弁護士に任せているとして、ノーコメント)。
たなかの公式サイトにあるブログ「すまねぇ…」には成嶋亮の人形の写真があり、 「久し振りだな、みんな。ナルシマ リョウだ。しばらく姿を見せてなかったが別に死んだわけじゃねぇ。ちょっとワケありでな。必ず戻って来るからな、待っとけよ。誰もオレを殺せやしねえ。」とコメントされていた[2]。
最終的に、橋本は第1話から第120話まで原作を担当していたことが認められたものの、以後はたなかの単独作業であったと認定され、著作権の所在もこれに対応することとなった[注釈 1]。これを受け、極厚版では巻之伍(13巻~)からたなかの単独クレジットになっている。
2011年7月より、極厚版のコミックが発売。7月26日に発売された『イブニング』2011年16号より裁判が解決したとして連載が再開。10月21日に発売された26巻からは「原作 橋本以蔵」のクレジットが外されている。2015年1月13日発売の同誌2015年3号掲載分が最終回となった。
両親を刺殺した優等生の少年・成嶋亮が少年院に入り、そこで出会った空手の達人・黒川健児に師事して「生き残るための空手」を身につける。出所してからは格闘技界に入り、無軌道なバトルを繰り広げてゆく。
有名私立高校に通う16歳の主人公・亮(リョウ)が、両親をナイフで突如惨殺した場面から始まる。少年院に送られたリョウは、その内気な性格や虚弱な体格、何より「親殺し」という重大な罪を犯したことで、他の院生や教官らから陰湿かつ残酷ないじめを受ける。しかし体育の教官である黒川健児に空手を習い始めたところから、リョウは「殺されぬよう」成長し、院生や教官たちに復讐を開始する。
少年院を出所し社会に出たリョウは、空手の腕と肉体を生かして裏社会で頭角を現した(一部、過激な描写は単行本には未収録)。暴力に明け暮れる毎日の中で、彼はあるきっかけから番竜会空手館長・望月謙介と知り合う。番竜会の主催する大型格闘技イベント「リーサル・ファイト」を見たリョウは、自分の「生き残るための空手」とは対極のショーアップされスポーツ化された空手に衝撃を受け、リーサル・ファイトのヒーロー・菅原直人に対して一方的な憎しみを抱くようになる。直人との対決を望んだリョウは、番竜会の大会で実績を重ねつつ、菅原に対して挑発を繰り返す。手段を選ばぬ挑発は、遂に直人の恋人である船戸萌美のレイプにまで発展し、激怒した直人は対戦を承諾する。そして2人は数万人の大観衆が集まった東京ドームで対決のときを迎えた。
リーサル・ファイトの死闘から半年、リョウは中国にいた。大会直後に再会した妹・夏美は、薬物の乱用によって廃人となっており、リョウは妹の治療費を稼ぐために地下格闘技で戦いを続け、そして富裕層の熟年女性に身体を売って金を得ていた。そんなリョウの前に新たな敵が現れる。その名は斉天大聖。凄まじい身体能力と中国拳法の前に為す術もなく敗北を喫したリョウであったが、斉天大聖の師・陳老師のもとで修行を開始。リョウの前に再び現れた斉天大聖は、陳老師を惨殺し妹弟子の燕を死に追いやった後、リョウと相まみえる。圧倒的に攻められながらも身につけた奥義によって勝利を収めるリョウであったが、戦いによって自らの醜さと闇の深さを改めて知ることとなる。
バレエダンサーとして世界的に成功を収めた高原東馬(トーマ)。彼はある日、偶然テレビで眼にした「リーサル・ファイト」での成嶋リョウの闘いに何かを感じ、格闘技の世界へと足を踏み入れる決意をする。当初、何の計画も無しに動いていたトーマであったが、天性の魅力と並外れた格闘センスに吸い寄せられるように、彼のもとには格闘技界トップクラスの人物が次々に、協力者として集う。一方、リョウは未だ孤独な闘いを続けていた。鍛錬を怠ったことによる肉体の衰弱と技術の喪失により、一般人並みの戦闘力に変わり果てていた。精神的にも金銭的にも追い詰められていくリョウであったが、様々なきっかけにより、徐々にかつての牙を取り戻していく。そして迎えた「グランドクロス」当日、大観衆が見守るリング上でついに邂逅を果たした2人。トーマの光は、闇の底で喘ぐリョウに届くのか…?
後味の悪い幕切れとなったグランドクロス閉幕後、リョウは海辺の自宅で休息の日々を送っていた。縁深き者たちの相次ぐ死、捨て犬ペロとの出会いで回復を見せる夏美を見届け、リョウは東京に戻る。しかし格闘技ブームは終焉を迎え、多くの選手が食い扶持に困る有様となっていた。とりわけリョウは、過去の事件のイメージも相まって指導者としての道すら閉ざされてしまい、しばらく当てもないまま生活をおくる。そんなある日リョウは、発達障害を抱える少女・サキコと出会う。かつての自分同様に親を恐れているサキコと徐々に距離を縮めていくリョウだったが、2人には新たな脅威が迫っていた。
トーマに惹かれて集まった4人の格闘家。グランドクロスでは、トーマ率いる「チームトーマ」と、リョウ率いる「チームリーサル・ファイト」の対抗戦が行われた。
番竜会の裏組織。番竜会の中でもごく一部の人間しかその存在を知る者はおらず、20年もの間表の世界に現れることはなかった。その強さは超人的かつ無法。グランドクロスでは壱號から四號までが登場している。
2005年に文芸社から軍鶏外伝のタイトルで刊行された。少年院編からリーサル・ファイト編での菅原との対戦までを描いているが、いくつかのエピソードが端折られている一方で、キャラクターの内面および過去の描写に小説版独自の解釈がなされていたり、菅原との対戦形式がキックボクシングルールから総合格闘技ルールに変更されているなど、独自の展開が描かれている。
『軍鶏 Shamo』のタイトルで映画化された。橋本以蔵の脚本を元にした香港・日本合作映画で、ショーン・ユー、魔裟斗など日・中・台の格闘技経験のある俳優によるアクションシーンが本映画の特色のひとつである。
橋本は「元々映画の企画だったが、先に漫画化された」とコメントしており[3]、映画の原作にたなか亜希夫はクレジットされていない。これは、たなかから漫画版の映画化同意が得られなかったための苦肉の策であり、橋本は成嶋亮による親殺し事件の真相が漫画版とは異なる脚本を書き下ろしている。しかし漫画版とは完全に別表現にしろとの日本側の指示が現地の撮影スタッフに徹底されなかったため、橋本の脚本にはない漫画版独自の表現が映画版に多数入ってしまい、たなか側が態度を硬化し、漫画版の著作権裁判に繋がる要因となった[注釈 1]。
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