『版画 』(はんが、フランス語 : Estampes )は、1903年 に完成されたクロード・ドビュッシー のピアノ曲集である。『映像 』とともに印象主義音楽 のピアノ曲 の書法を確立した作品である。以下の独立した3曲からなる。
各曲
『版画』自筆譜表紙(1903)
版画 は、3つの異なる土地を連想させる。
塔(パゴダ)
原題:Pagodes
ガムラン音楽 の影響も見られるものの、ペンタトニック を用いてインドシナ の民族音楽 を模倣しており、アジアを暗示している[ 1] 。演奏時間はおおむね約4分半。
グラナダの夕べ
原題:Soirée dans Grenade
ギター の掻き鳴らしの模倣とロマ の音階(ハンガリー音階 )の利用によって、スペイン 情緒を掻き立てている。作曲当時のドビュッシーのスペイン体験といえば、サンセ の街で数時間を過ごしたことだけであった[ 1] 。しかし、スペインの作曲家マヌエル・デ・ファリャ は、「1小節たりともスペイン民謡 からは借用されていないにもかかわらず、作品全体が、ほとんどの細部において、スペインを見事に描き切っている[ 2] 」と評した。さらに、ドビュッシーの死後に追悼として作曲した『ドビュッシーの墓のために 』(1920年)において本曲を引用している。演奏時間はおおむね約5分半。
雨の庭
原題:Jardins sous la pluie
『忘れられた映像 』第3曲の改作であり、フランスの童謡 『もう森になんか行かない』 (Nous n'irons plus au bois ) や『眠れ坊や眠れ』 (Dodo, l'enfant do )[ 1] が引用され、ドビュッシーの母国フランス の庭園に篠突く雨が描写されている。この曲では、半音階 、全音音階 、長調 、短調 が混在している。演奏時間はおおむね約3分[ 1] 。
初演は1904年 1月9日 に、リカルド・ビニェス によって行われた。
脚注
^ a b c d Hinson, Maurice. Preface to Estampes by Claude Debussy. Van Nuys, CA: Alfred Publishing Co., Inc., 1993.
^ Schmitz, Robert E. The Piano Works of Claude Debussy . New York: Duyell, Sloan and Pearce Publishers, 1950. pp 85-86.
外部リンク