片岡 一則(かたおか かずのり、1950年11月27日 - )は、日本の医用生体工学・生体材料学者。工学博士(東京大学)。東京大学名誉教授。(公財)川崎市産業振興財団副理事長・ナノ医療イノベーションセンター センター長。東京都中央区出身。
ナノマシン技術を応用した薬剤デリバリーシステムの開発や、 高分子ナノテクノロジーを利用した再生医療の研究を行っており、2006年にナノテクノロジーを鍵として工学と医学の学際的な研究を進めるため東京大学本郷キャンパスに設立された「ナノバイオ・インテグレーション研究拠点」のリーダーを務めていた。その業績からフンボルト賞や江崎玲於奈賞など内外の科学賞を受賞している。
2014年4月、東京大学大学院工学系研究科において片岡らの研究グループは新規デリバリーシステムの、光に反応して目的の遺伝子をガンへ届ける光応答性ナノマシンの構築に成功したと発表した[36]。ガン細胞などの標的細胞に特定の遺伝子を導入するためには細胞に遺伝子を正確に送達するデリバリーシステムが必要だが、従来のウイルスベクターや遺伝子導入試薬では困難であるとともに安全性に問題があったが、三層構造の高分子ミセルを使用した光応答性ナノマシンでは、マウスの実験で固形ガンへの光選択的遺伝子導入に世界で初めて成功した。ナノマシンは細胞に取り込まれると膜に取り囲まれるが、膜内の酸性環境を検知すると光に反応し不安定化させる薬剤を放出するため、光が照射された細胞の核に選択的に遺伝子が届けられる。このナノマシンは、従来の遺伝子導入技術と比較し飛躍的に選択制と安全性に優れる特長を持つために全身投与が可能であり、ガンのほかにも動脈硬化などのこれまでは治療が困難であった病に対する遺伝子治療が可能となる可能性がある。