『日はまた昇る』(ひはまたのぼる、The Sun Also Rises)は、アメリカの作家アーネスト・ヘミングウェイの1926年に発表した処女小説である。パリからパンプローナのサンフェルミン祭に、牛追いや闘牛を見物に行くアメリカ人とイギリス人の外国人グループを描いた作品である。邦訳題は誤読されやすいが、米題からわかる通り「また昇る(also rises)」というのは、「沈むだけではなく(also)昇りもする」の意であり、「再び(again)昇る」の意ではない。
1926年10月22日、『The Sun Also Rises』というタイトルでスクリブナーズ社から5,090部の初版が刊行され、1冊2.00ドルで発売された。Cleonike Damianakesがブックカバーのデザインを担当し、古代ギリシア風の装丁を行った。特に母国のアメリカ合衆国ではセンセーションを巻き起こし、「タイムリーなテーマ、簡潔な文体、生き生きとした会話、個性的な登場人物、エキゾチックな舞台背景」などが若い世代を熱中させた[12]。刊行から2カ月で7,000部を売り上げ、処女長編作としては大成功をおさめた[12]。文芸評論家からの評価も良好であり[6]、批評家のマルカム・カウリーは「女子学生たちは競ってブレット・アシュリーのファッションスタイルをまねていたし(中略)若者たちは、ヘミングウェイの描くヒーローを気どろうとして、口の端だけを動かす、抑制された、タフなしゃべり方を身につけようと努めていた」と書いている[12]。冒頭部には妻ハドリーと息子への献辞があるが、執筆中には夫婦仲に亀裂が生じており、刊行後の11月には印税すべてをハドリーに贈与することを約束し、1927年4月には正式に離婚が成立した[13]。1927年にはイギリス・ロンドンのジョナサン・ケープ社によって、『Fiesta』というタイトルでイギリス版が出版された。
1932年、ヘミングウェイは闘牛の解説書である『午後の死』(Death in the Afternoon)を刊行した。1947年、スクリブナーズ社はこの小説、『武器よさらば』(1929年)、『誰がために鐘は鳴る』(1940年)の3冊をまとめたボックスセットを刊行した[14]。この小説を執筆する前の3度を含め、ヘミングウェイは死去するまでに9度もパンプローナを訪れた[15]。パンプローナ闘牛場の前の通りには「ヘミングウェイ通り」という名称がつけられ、その一角にはヘミングウェイの胸像が建立されている[15]。1959年から1960年には闘牛に関するノンフィクションの『The Dengerous Summer』を執筆し、死後の1985年に刊行された。この作品は1961年に死去する「ヘミングウェイ最後の作品」として引き合いに出される。2006年、アメリカ合衆国のサイモン&シュスター社はヘミングウェイの小説のオーディオブック版の製造を開始し、その中にはこの小説も含まれている[16]。
Meyers, Jeffrey (1985). Hemingway: A Biography. New York: Macmillan. ISBN 978-0-333-42126-0
Wagner-Martin, Linda (1990). "Introduction". in Wagner-Martin, Linda (ed). New Essays on Sun Also Rises. New York: Cambridge UP. ISBN 978-0-521-30204-3
Balassi, William (1990). "Hemingway's Greatest Iceberg: The Composition of The Sun Also Rises". in Barbour, James and Quirk, Tom (eds). Writing the American Classics. Chapel Hill: North Carolina UP. ISBN 978-0-8078-1896-1
Reynolds, Michael (1999). Hemingway: The Final Years. New York: Norton. ISBN 978-0-393-32047-3