『新宿の狼』(しんじゅくのおおかみ)はスパイクが2009年2月12日に発売したPlayStation 2用アクションアドベンチャーゲーム。
実在の街である新宿(ただし地名は一部架空のものになっている)を舞台に、プレイヤーは「新宿の狼」の異名を持つ一匹狼の刑事・三上英二となって様々な事件を解決する痛快アクションアドベンチャーゲーム。
元々はカプコンが開発しており2006年11月にタイトルが発表され、画面写真やイメージイラストなどもかなりの数が公開されていたが、2007年6月8日に開発の中止が発表された。担当プロデューサーは和関伸治。企画立案は『喧嘩番長』の生みの親である松本朋幸。シナリオは稲葉洋敬。キャラクターデザインは一徳。開発中止後、スパイクからリニューアルして発売された。
開発中止の理由については「皆様のご期待に沿えるクオリティに達する見込みが立たなかった為」となっている。
オープンワールド形式のアクションアドベンチャーであり、自由度が高い。プレイヤーは新宿で起きる犯罪に対処しながらストーリーを進めていく事になるが、誰彼構わず逮捕したり、銃やバズーカを街中で放ったりと言った無茶な行為も可能であり、コミカルな要素を多分に含んでいる。但し、ゲーム部分の荒唐無稽さに反してメインストーリーは至ってシリアスである。
眠らない街「新宿」。この街で、己が法で悪を裁く一匹の刑事、三上英二。人々は畏怖を込めて彼をこう呼ぶ……「新宿の狼」と。 新宿某日某所。拳銃密売の重要参考人としてマークされていた人物が刺殺される。警察の調べで、この売人の手により七丁の拳銃が新宿内にばら撒かれていることが判明した。三上たち新宿中央署の刑事たちは、早速、拳銃回収に乗り出すのだが……。 拳銃を手にしたのは、立場、人種も異なる様々な人々。彼らは、何故、拳銃という凶器を必要としたのか? 七丁の拳銃は、新宿という街の輪郭をおぼろげに映し出していくのだった……。
基本的なシステムは同社の『喧嘩番長』シリーズに酷似しており、自由に行動可能なマップ上で指定された場所へ向かうことでイベントを発生させ、ストーリーを進めていく形式となっている。エリアの区分はあるものの特に移動制限はなく、初期状態からいきなり高難度のエリアへ行くことも可能。移動する際は徒歩以外にもタクシーや他人の車・バイクなどを借用(強奪)して利用することができ、車両は自費で購入して所有することもできる。
本作には時間の概念が存在し、ゲーム内の1分はリアルタイムの1秒としてカウントされる。各施設(一部を除く)とイベントにはそれぞれ開始・終了の時間帯が設定されており、その日に終了したとしても、いずれも翌日になれば同じ時間に再開される。イベントの場合、指定された時間内に行かなければ仲間から捜査を中断する旨の電話が入る。
マップ上のNPCには犯罪者の有無を問わず攻撃することが可能で、一定以上のダメージを与えるとそれ以降一切抵抗しなくなる「降伏」状態になる。降伏状態になったNPCには「逮捕」や「俺法」(後述)の発動のほか、更にダメージを与え続けることで殺害することも可能。ただし出血などの残虐な表現は無い。
画面上には「体力」「気力」「刑事の勘」「始末書」などのパラメータが表示されている。「体力」は戦闘などでダメージを受けることで減少し、0になるとゲームオーバーとなりコンティニューを問われる。「気力」は特定の行動をとる際に消費され、アイテムの使用、ダメージを受ける・与える、喫煙を行うなどで回復できる。喫煙の場合は徐々に回復するが、マップ上に点在する喫煙サークル内で行うと通常より回復速度が大幅に高まる。「刑事の勘」「始末書」については後述する。
主人公は愛煙家であるため生身で長時間走り続けた場合、やがて息切れを起こして少しの間行動不能になってしまうが、これはステータス強化やアイテムの使用などで解消できる。
セーブやアイテム整理は警察署または自宅で行える。
マップ上を通行するNPCの中には、一般人に紛れて犯罪者(容疑者)が潜んでいる。一般人と犯罪者の視認による判別は不可能であり、犯罪者を探し出すためには三上自身の持つ「刑事の勘」を頼りに、怪しいと思われるNPCに職務質問(以下職質)を行う必要がある。怪しいNPCに接近すると、画面上に表示されている「刑事の勘メーター」が大きく振れ、そのNPCが犯罪者である確率が非常に高くなる。しかし刑事レベルが低い状態では、刑事の勘が誤作動してしまうこともある。
職質をかけると、一般人は画面上にその人物に関する近況が表示された上で普通の会話をしてくる者と、当然ながら疑われたことに対して不快感を露にする者がおり、後者に当たった場合は始末書が発生してしまう。逆に、犯罪者である場合はジングルが鳴り、画面上に犯した罪状が表示されると同時に専用のリアクションを見せる。犯罪者は一般人とは異なり頭上に「容疑者」マークが表示され、職質後に「その場で降伏する」「反抗して逃走する・戦闘を仕掛けてくる」のいずれかの行動をとる。その場で降伏してくれた場合は特に問題は無いが、反抗された場合は戦闘を行い力尽くで降伏させる必要がある。なお、犯罪者と確定したNPCにはいかなる攻撃(殺害含む)を加えても始末書は発生しない。
降伏状態の容疑者に接近すると「逮捕 or 俺法」の2択が表示され、選択した側により以下の行動が可能。
その場で容疑者を取り押さえて逮捕する。逮捕する度に刑事経験値が加算され、一定以上に達すると刑事レベルが1段階アップする。刑事レベルが高くなると気力の消費量が軽減され、刑事の勘の精度もより高くなるほか、犯罪者が反抗しなくなり、戦闘を行わず素直に降伏するようになるなどの恩恵を受けられる。ただし容疑者以外のNPCを誤って逮捕してしまった場合は始末書が発生する。
正式名称「俺が法律だ!」。本作を象徴するシステムで、国の法律ではなく主人公である三上自身の法律で容疑者を裁く。ただし正式な逮捕ではないため発動すると始末書が発生してしまうほか、治安度(後述)を低下させてしまうリスクを伴うが、状況次第では非常に大きな見返りを得ることが可能。発動には気力を消費するため、気力が少ない状態では使用できない(「俺法」の選択肢が表示されない)。
制限時間内に以下の3種類から1つを選択する。
なお、制限時間内に上記のいずれも選択しなかった場合、相手が逃げてしまい俺法は不成立となる。
三上が警察官にあるまじき非合法な行為を行った場合、ペナルティとして始末書が発生する。発生枚数は各行為によって異なるものの、基本的に「犯罪者以外のNPCに発砲する・車両で轢く」「他人の車両を破壊する」など、明らかに重罪な行為を働くほど大量の始末書が発生する。始末書が50枚を超えるとタクシーが利用できなくなり、100枚を超えると下記の逃亡者モードに突入してしまうため、始末書は小まめに処理しておく必要がある。
始末書の処理方法は以下の3種類がある。
戦闘方法は主に素手による格闘だが、後述する武器も使用できる。攻撃はボタンによって強弱2種類が存在し、弱は威力は低いが連続入力することでコンボ攻撃になり、強は単発で隙は大きいが威力の高い一撃を放つほか、弱攻撃からの派生でコンボに組み込むことも可能。コンボは初期状態では3回までだが、後述の格闘スタイルレベルを上げることで最大5回まで繰り出せるようになる。また、強弱どちらもボタン長押しにより高威力のチャージ攻撃に変化する。この他、ボタンとスティックの組み合わせによって「投げ」「馬乗り」「必殺技」など様々な攻撃が可能。チャージ攻撃と必殺技は発動する際に気力を消費するため、気力が少ない状態では使用できない。攻撃する際は対象のロックオンが可能で、ロックオンをしている間は自動で対象のいる方向を向いて攻撃できる。
ダメージを受けた際の無敵時間はダウン状態から起き上がるまでの間にしか発生しない。そのため吹き飛ばされていたり、壁にうなだれていたりなどでダウン状態でも起き上がり動作ができない空中判定の相手に対しては、反撃の余地を与えることなく一方的に攻撃できるため、擬似的な空中コンボが可能である。
戦闘をする度に戦闘経験値が加算され、一定以上に達すると戦闘レベルが1段階アップする。戦闘レベルがアップするとスキルポイントが蓄積され、ステータス画面で各スキルに割り振ることで、三上の戦闘能力の強化が可能。
三上は素手による格闘のほか、主に拳銃とバズーカの2種類の武器を使用することができる。入手した武器と弾丸はメニューからそれぞれ装備したいものを選択する。ただしマップ上で併用することはできない。拳銃・バズーカ共通の特徴として、「命中すると対象は高く吹き飛びダウンする」「装備しているだけで周囲のNPCは三上を恐れて逃げ出す」「犯罪者以外のNPCに向けて発砲すると大量の始末書が発生する」というものがある。
ストーリーイベント以外にも、マップ上では主人公の周辺で一般NPCによる事件イベント「イージークライム」が度々発生する。発生すると画面上に警察署からの無線テロップが流れ、ミニマップに手錠マークで場所が表示される。時間内に指定された場所へ向かい、当事者から事情を聴くことでイージークライム開始となる。なお、イージークライムは時間経過によって消滅する。無事に成功させると報酬として事件解決ポイントと刑事経験値を同時に獲得できるほか、その地区の治安度が大幅に上昇する。逆に失敗した場合は当然報酬は得られず、治安度が低下してしまう。また、戦闘関連の事件では加害者を逮捕せずに俺法で裁いたり、ダメージを与えすぎて殺害してしまった場合、即失敗となる。
事件内容には様々なバリエーションが存在するが、以下の3種類がベースになっている。
各地区の治安の状態を表すパラメータ。各地区の治安度は画面上に表示されている地区名またはポーズメニュー「マップ画面」の色で確認できる。治安度は全5段階、「良」と「悪」の2種類に大別され、治安度が悪い状態ではその地区の全施設(一部除く)が一時営業中止となり利用できなくなるほか、イージークライムが頻発するようになり、職質をかけた犯罪者も反抗しやすくなる。
治安度は「容疑者を逮捕する」「イージークライムを成功させる」などで上昇し、「始末書が発生するような行動をとる」「イージークライムを失敗する・見逃す」「犯罪組織を放置する」などで低下する。
各地区にはそれぞれ犯罪組織が徘徊している。構成人数は地区によって異なり、高難度の地区ほど構成員が多く戦闘能力も高い傾向にある。また、各犯罪組織には三上との友好度が設定されている。友好度は「敵対関係」「無干渉状態」「友好関係」の3種類に大別され、「敵対関係」以外の犯罪組織とは会話が可能。これらの状態はポーズまたは警察署メニュー「地区別犯罪組織情報」から確認できる。
友好度は犯罪組織に攻撃を加えることで低下し、「敵対関係」になると構成員がマップ上で三上を見つけ次第、突然戦闘を仕掛けてくるようになる(逃走によって振り切ることは可能)。逆に、犯罪組織に手を出さずに放置しておいた場合はその地区の治安度が徐々に低下し、犯罪組織との友好度は高まっていく。「友好関係」になると時々構成員からお礼として特定のアイテムを受け取ることができる(ただし受け取ると大量の始末書が発生する)。なお、一度攻撃を加えて「敵対関係」となった犯罪組織に対しても、放置して時間を空けることにより友好度を高め、最終的に「友好関係」にすることも可能。
地区内の構成員は全滅させない限り、倒していたとしても時間の経過で徐々に人数が補充される。地区内の全構成員を倒すとイベントが発生、組織のボスが登場してその場で戦闘になる。ボスを倒すとその犯罪組織は「撲滅済み」となり、事件解決ポイントを獲得できる。また、以降その地区には犯罪組織が一切登場しなくなる。
ゲーム中では特定の条件を満たすことで「刑事伝説」が達成され、同時に特定のアイテムを入手できる。無意識のうちに達成してしまうようなものから高度な技術を要するものまで、条件は様々である。達成した伝説は自宅メニューから閲覧可能。
一種のコレクション要素であり、刑事伝説自体は達成の有無によるゲームの進行に干渉することは無い。
一部を除き、マップ上で該当する建物の入口に表示されているサークル内に入ることで利用できる。
施設によっては、治安が悪いと営業停止状態になり、利用できないものもある。