幻影旅団(げんえいりょだん)は、冨樫義博の漫画『HUNTER×HUNTER』に登場する架空の盗賊集団。団長はクロロ=ルシルフル。
団長を蜘蛛の頭、団員を12本の蜘蛛の脚に見立てた13人で構成される。通り名として「旅団(クモ)」とも呼称されている。
ヨークシンシティ編で敵勢力として登場する。主要人物であるクラピカにとっては仇にあたる。
結成当初のメンバーは、クロロ、マチ、パクノダ、ノブナガ、ウボォーギン、フェイタン、フィンクス、シャルナーク、フランクリンの9名であり、全員があらゆる人や物が捨てられる場所となる「流星街」の出身。結成年・活動年数は不明。所属メンバーには、0番と1~12番の団員ナンバーが入っている12本の脚の蜘蛛の刺青が、体の何処かに彫られている。旅団のメンバーになるには、現役団員を倒した後に入団の意志を示すか、欠員時に団員からの推薦がある事が必須条件となる。
団員全員が念能力を修得している実力者集団であり、暴力はおろか殺人その物への抵抗すらない危険人物ばかりである。自分の情報が漏れることは死を意味するため、団員それぞれが他のメンバーにも明かしていない「切り札」を隠し持っている。
主な活動は窃盗・殺人で、元・団員のヒソカ曰く「稀に慈善活動もする」。特に殺人に関しては、一度の活動において大量虐殺に等しい形で行われ、金や利益のためだけでは無く、鬱憤晴らしの八つ当たりや気まぐれ、強者と戦うためといった身勝手極まりない動機で行う事さえあり[注 1]、仕事中に敵対する者ばかりか、全く無関係な一般人を巻き込むこともためらわない。当然多くの者達からの恨みや反感を買っており、故郷を滅ぼされたクラピカからは旅団の全員が憎悪と殺意の対象となっている。ハンターサイドでは全員が危険度Aクラスの賞金首となっている。
一方で、団長のクロロやノブナガはウボォーギンの死に涙している等、仲間の結束は非常に強い。また、団員半数以上の故郷で社会的弱者の集まりと言える流星街の人々や反社会的勢力の人間達からは、社会的強者に抗う英雄の様に賛美されており、旅団への入団を希望する者も少なくない模様。
旅団の活動による被害以上に厄介と言えるのは、団員の多くが流星街出身で直接的な繋がりもある点[注 2]であり、流星街出身の団員が殺される様な事態になれば、住民同士の結束力が異常なまでに強い流星街そのものを敵に回し、凄惨で恐ろしい報復を受ける事態となる[注 3]。ヨークシンシティ編で多大な被害を受けたマフィアンコミュニティーも、当初は団員一人につき「20億ジェニー」という破格の裏賞金をかけてまで報復に躍起になっていたが、旅団員の多くが流星街出身である事実を知ると、報復を断念している。リスクの高さから団員と対等に戦える実力を持った熟練のハンターも迂闊には手が出せず、かつて旅団の団員一人を始末したとされるゾルディック家の家長シルバ=ゾルディックでさえも「旅団には関わるな」と息子達に警告しているほど[注 4]で、ハンターサイドから賞金首をかけられていても、実質的に無意味となっている[注 5]。
団員のフルネームは34巻の幕間と36巻No377にて判明した[注 6]。一部のメンバーは不明[注 7]。
No.0のインタビューで、「クラピカと幻影旅団はどうなるか」と訊かれた冨樫は、「全員死にます」と答えている。
団員は、普段は自由に行動しており、団長のクロロからの指示によって集合し旅団としての活動を行う。
原則として頭である団長に手足である団員が従って行動するが、「生存の優先順位は団長ではなく旅団そのもの」であるとされている。そのため、団員は全員、死に直面しても動揺や混乱を見せず、旅団さえ存続できれば自分がどうなろうと二の次であると考えており、それは団長も例外ではない。団長のクロロは旅団の創立時に「頭(オレ)が死んでも誰かが跡を継げばいい」「場合によっては頭より手足の方が大事な時もあるだろう」と語っており、この当時からクロロは自分の命よりも旅団の存続を優先させる方針を掲げていた。しかし団員達の殆どが組織の行動や決定をクロロに委ねており、クロロがクラピカに捕らわれた際も、「原則に従ってクロロを見捨てる」か「原則を無視してでも助けに向かう」かで意見が分かれ分裂寸前にまで陥った結果、パクノダが自らを犠牲にする顛末へと至っている。
ただし、この「旅団の存続が優先」というのは多数をリスクに晒して1人を助ける事が無いという意味ではなく、団員の中でも能力の「レア度」によって優先度の違いはある。作中登場したメンバーで言えばパクノダやシズクなどの同種の能力が滅多におらず替えの効かない能力を持つメンバーは個人の生存が旅団の存続に直結するケースが多いという理由で優先される一方で、シャルナークやウボォーギンなどのシンプルな戦闘用能力は替えが効くため優先度が低い。
その他、団としての結束を守るため、団員同士の「マジギレ」による殺し合い等も禁止事項となっており、揉め事はコイントスで解決するなどのルールが定められている。
ゴンやクラピカが受験するハンター試験の4年前に、クルタ族の隠れ里を襲撃し、皆殺しにして緋の眼をえぐり取って売り払ったとされている。続いて、団員13人が集まり何らかの活動が行われているが、その後に2人欠け、入れ替わりにヒソカとシズクが加入する。
ハンター試験の半年後の9月、ヨークシンシティにて開催される地下競売の品を全て盗むべく、13人全員がヨークシンに招集された。会場に潜り込み競売品の強奪を狙うも、直前にマフィアンコミュニティが競売品を移動させていたために入手できず、マフィアや陰獣らと交戦した。その際、謎の「鎖野郎」によりウボォーギンが死亡。マフィアの中枢部を潰し、偽の死体と競売品でマフィア関係者を欺いて、本物の競売品を盗み取る。さらに流星街との関係を匂わせることで追撃を諦めさせる。
その後は本拠地に戻る予定であったが、「鎖野郎」への報復を望むノブナガの意見とクロロとの戦いを目的とするヒソカの策略によりヨークシンに留まり、「鎖野郎」の追跡を敢行したことで、団長が連れ去られる。このとき、団長救出と「鎖野郎」撃破の二択をめぐり内部対立が起こっている。最終的に「鎖野郎」の正体であるクラピカにたどり着くも、クロロは念能力を封印され孤立、パクノダは死亡し、ヒソカは本性を現して旅団を抜ける。
劇場版『緋色の幻影』では、この直後に元団員のオモカゲと内部抗争となったとされ、一時的にやむを得ずゴンたちと共闘戦線を張っている。
団長クロロは「団員との接触」と「念能力の使用」を禁じられたため、ヒソカに除念師探しを依頼し、条件にヒソカが望む一対一での決闘を約束する。カルトが新加入し、グリードアイランド島で除念師を見つける。
キメラアントの新女王ザザンの一派が流星街を侵略してきたため討伐し、蟻に造り替えられてしまった同胞たちを介錯する。
クロロはヒソカとの前述の約束を果たすべく、彼と天空闘技場でデスマッチを行い勝利する。その後カキンの王族が持ち込む宝を狙い、他の団員とともにB・W1号に乗り込むが、ヒソカによってコルトピとシャルナークが殺害されたため、残りの団員たちとともに報復を誓い合う。
クラピカの強い復讐心に対し、旅団にとってのクルタ族滅亡は重要な出来事ではなく日常的な殺人の一つに過ぎない。
ウボォーギンの証言から、幻影旅団がクルタ族を襲撃し、戦闘があったことは確定している。ただ、拷問まで行ったかどうかは未確定である。また、ウボォーギンら旅団側はクルタ族や緋の眼についての記憶はあるものの、特に強い感情を持っていないことがうかがえる。
旅団側にとってのクルタ族は、パクノダ達の反応でもやっと「思い出した」と言う程度の取るに足らない存在でしかない。また、フェイタンも「生き残りがいたということか」と言っており、旅団側は過去にクルタ族は全員殺したはずという認識を持っていた。
クロロは「緋の眼」という限られた少ない情報から、もしもクルタ族の生き残りがいれば恨まれるだろうという心当たりがあったため、鎖野郎(クラピカ)の目的が復讐だとすぐに見抜いた。
また、幻影旅団は略奪した宝を一定期間愛でたあと売り払うが、緋の眼は「団長がいたくお気に入りだった」ことから、少なくとも一定期間緋の眼を所持していた時期がある。
判明している結成時のメンバー9名は、いずれも流星街出身。
クロロは団長を名乗ってはいるが、旅団の絶対的な支配者というわけではないようで、新入りのシズクを除いて団員たちは全員がタメ口でクロロと会話しており[注 8]、クロロも団員各自の意見を最大限に尊重しつつ重要なことは団員全員の合議によって決めるという方針で旅団を動かしている[注 9]。
なお、団員同士は愛称で呼ばれている人物が多いので、該当人物の紹介文の後はそれで表記する。
担当声優の項は第1作 / 第2作の順に表記。