坪郷 實(つぼごう みのる、1948年 - )は、日本の政治学者。早稲田大学社会科学部・社会科学総合学術院名誉教授。日本比較政治学会理事。
専門は比較政治、環境政策の政治学、環境社会論、新しい社会運動、EU地域研究、『緑の党 (ドイツ) 』研究。
経歴
1948年、山口県下関市に生まれる。1972年、大阪市立大学法学部を卒業し、1978年に同大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。
その後は、北九州市立大学教授に着任。1991年、『新しい社会運動と緑の党 福祉国家のゆらぎの中で』を大阪市立大学に提出して法学博士の学位を取得。1994年より早稲田大学社会科学部教授・大学院社会科学研究科教授に就いた。2019年、早稲田大学を定年退任し、名誉教授となった。
役職
- 日本比較政治学会 常務理事 1998~2000。
- 日本比較政治学会 理事 2000~2004、2006~現在。
- 日本公共政策学会 理事 1996~2000、2002~2004。
研究内容・業績
ドイツと緑の党
日本における「緑の党」の可能性
日本版『緑の党』のような「試み」は、これまで何度か為されてきたものの、いずれも消滅するなど「失敗」に終わっている。その理由について、以下のような分析を行っている。
- ヨーロッパと日本では「政党の在り方」が異なる。ヨーロッパの場合は、政党によって「政治理念」が明確に分かれており、そのため、ヨーロッパで「緑の党」が現れた際には、『新しい争点』として有権者に受け入れられた。一方、日本の場合、「緑の党」が唱えるような政策は「既存政党」の議員が既に訴えており、こうした状況下では、埋没する可能性が高いと指摘する。
- 日本の場合、政権交代を何度も経験した先、「政党の在り方」が変容していった場合には可能性があるものの、現段階では、特定の政策を訴えるこうした小政党が力を持つのは容易ではない[6]。
著書
単著
- 『新しい社会運動と緑の党 ―― 福祉国家のゆらぎの中で』九州大学出版会、1989年)
- 『統一ドイツのゆくえ』岩波新書、1991年)
- 『ドイツの市民自治体-市民社会を強くする方法』生活社、2007年)
- 『環境政策の政治学 ―― ドイツと日本』早稲田大学出版部、2009年)
- 『脱原発とエネルギー政策の転換 ドイツの事例から』明石書店, 2013.10
- 『環境ガバナンスの政治学 脱原発とエネルギー転換』法律文化社, 2018.3
編著
- 『新しい公共空間をつくる ―― 市民活動の営みから』(日本評論社、2003年)
- 『参加ガバナンス ―― 社会と組織の運営革新』(日本評論社、2006年)
- 『比較・政治参加』(ミネルヴァ書房、2009年)
- 『ソーシャル・キャピタル』 (福祉+α)ミネルヴァ書房, 2015.8
共著
- 『比較・選挙政治 ―90年代における先進5カ国の選挙』(梅津實・森脇俊雅・後房雄・山田真裕)(ミネルヴァ書房, 1998年)
- 『比較・選挙政治 ―21世紀初頭における先進6カ国の選挙』(後房雄・大西裕・山田真裕・梅津實・森脇俊雅)(ミネルヴァ書房, 2004年)
共編著
- 『EC経済統合とヨーロッパ政治の変容 ―21世紀に向けたエコロジー戦略の可能性』(住沢博紀・長尾伸一・阪野智一・長岡延孝・伊藤公雄)(河合文化教育研究所, 1992年)
- 『連立政治 同時代の検証』(山口二郎・新川敏光・後房雄・伊藤光利)(朝日新聞社, 1997年)
- 『ポスト福祉国家とソーシャル・ガヴァナンス (ガヴァナンス叢書) 』(山口二郎・宮本太郎)ミネルヴァ書房, 2005年)
- 『ヨーロッパ・デモクラシーの新世紀 ―― グローバル化時代の挑戦』(高橋進)(早稲田大学出版部, 2006年)
- 『市民が描く社会像 ―政策リスト37 (CiViCS叢書)』(生活社, 2009年)
- 『分権と自治体再構築 ―行政効率化と市民参加』(縣公一郎・ゲジーネ フォリャンティ=ヨースト)(法律文化社, 2009年)
- 『市民自治講座 前編 (自治総研ブックス) 金子匡良,杉田敦,辻山幸宣, 坪郷[述], 市民がつくる政策調査会共編. 公人社, 2014.12
- 『市民自治講座 後編 (自治総研ブックス)廣瀬克哉,石毛鍈子,井手英策,大西隆[述],市民がつくる政策調査会共編. 公人社, 2016.8
訳書
論文
- 「戦後ドイツの極右主義と共和党」 『思想』 第833号(岩波書店, 1993)
脚注
- ^ a b 「西ドイツ『緑の党』の支持者像について(上・下)」 北九州大学法政論集 1985・1986年
- ^ a b 「新しい社会運動と緑の党 ― 福祉国家のゆらぎの中で ― 』 九州大学出版会 1989年
- ^ a b 朝日新聞 「ドイツ、進む多党化 総選挙の結果確定 2大政党の退潮際立つ」 2005年10月4日
- ^ a b 読売新聞 「『大連立』打診 現実味薄い日本 理念を明確に」 2005年12月14日
- ^ a b 毎日新聞 「大連立の行方:’09ドイツ総選挙 混迷の中の選択(中) 中道右派政権、誕生へ」 2009年9月29日
- ^ a b 東京新聞 「【こちら特報部】― 『緑の党』日本に根付くか ― 《野党との差別化、具体策カギ》 ― 識者の見方」 2011年11月15日