2820形は、かつて日本国有鉄道の前身である鉄道院、鉄道省に所属したタンク式蒸気機関車である。
概要
元は、九州鉄道が1898年(明治31年)にアメリカのブルックス・ロコモティブ・ワークスから12両(製造番号2898 - 2909)を輸入した、車軸配置2-6-0 (1C) の単式2気筒、飽和式タンク機関車である。九州鉄道では、102形 (102 - 113) と称した。九州鉄道国有化後の1909年(明治42年)に制定された鉄道院の車両形式称号規程では、2820形 (2820 - 2831) に改称された。
本形式は、九州鉄道、鉄道院時代を通じて直方に配置され、筑豊地区で石炭輸送に従事したが、1925年(大正14年)5月に全車が廃車された。民間に払下げられたもの、保存されたものはない。
外観上は、ブルックスの様式に従い、煙突が細く、大きな側水槽は運転室と一体化し、後部の裾はS字曲線で1段下がった形状をしていた。この車軸配置の機関車の例にもれず、各部の重量バランスが悪く、特に第3動輪の軸重は15.44tにも達し、バック運転(逆機)には不向きであった。この点も、民間への払下げがなかった要因であろう。
主要諸元
1914年度版形式図の諸元を示す。
- 全長:9,652mm
- 全高:3,632mm
- 全幅:2,337mm
- 軌間:1,067mm
- 車軸配置:2-6-0 (1C)
- 動輪直径:1,270mm
- 弁装置:スチーブンソン式アメリカ型
- シリンダー(直径×行程):432mm×559mm
- ボイラー圧力:9.8m2
- 火格子面積:1.31m2
- 全伝熱面積:84.5m2
- 煙管蒸発伝熱面積:76.5m2
- 火室蒸発伝熱面積:8.0m2
- ボイラー水容量:2.9m3
- 小煙管(直径×長サ×数):45mm×2,885mm×190本
- 機関車運転整備重量:45.51t
- 機関車空車重量:35.86t
- 機関車動輪上重量(運転整備時):39.58t
- 機関車動輪軸重(第2動輪上):15.44t
- 水タンク容量:5.0m3
- 燃料積載量:1.5t
- 機関車性能
- ブレーキ装置:手ブレーキ、蒸気ブレーキ
参考文献
- 臼井茂信「国鉄蒸気機関車小史」1956年、鉄道図書刊行会刊
- 臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社刊
- 臼井茂信「機関車の系譜図 2」1972年、交友社刊
- 金田茂裕「形式別 日本の蒸気機関車 I」エリエイ出版部刊