国内避難民(こくないひなんみん)とは、政治的な迫害、武力紛争、内乱、武力による強制立ち退き、あるいは自然災害などの理由から自宅(あるいは自宅周辺の地域)には住めず、ある程度以上の遠方での避難生活を余儀なくされている人々のうち、国を出ることなく(国境を越えることなく)自国内で生活している人々をいう。国連は英語で、internally displaced people あるいはinternally displaced person(s)と呼び、またIDPと略す。一方、国境を越えて自国を出た人々は難民とよばれる。難民には条約による明確な定義が存在するが、国内避難民には明確な法的定義が存在しない[1]。
概要
国際社会からは見放された存在であったが、1980年代後半から国際会議などの場で議題に上るようになり、1990年代に入ってからはNGOによる活発な啓蒙活動もあり、国際的な関心が高まった。とりわけ、1991年のイラク北部においてクルド人避難民が大量に流出した事件は、この課題が安全保障とも結びついていることを印象付けた。1992年には国連の人権委員会によって「国内避難民に関する国連事務総長代表」のポストが創設され、スーダンのフランシス・デン大使が就任した(2004年には「国内避難民の人権に関する国連事務総長代表」としてケーリン・ベルン大学教授が就任した)。また、国連のIASCを中心に組織的な対応が協議され、2006年にはクラスター制で対応するとの方針が決まっている。また、法的な点では、国内避難民に特化した条約は現在も存在しないが、1998年に当時のデン代表によって国連人権委員会に提出された「国内強制移動に関する指導原則」(Guiding Principles on Internal Displacement)が存在し、この指導原則が国内避難民を抱える国において国内法や政策を策定する際の指針を提供している。
「国内強制移動に関する指導原則」では
internally displaced persons are persons or groups of persons who have been forced or obliged to flee or to leave their homes or places of habitual residence, in particular as a result of or in order to avoid the effects of armed conflict, situations of generalized violence, violations of human rights or natural or human-made disasters, and who have not crossed an internationally recognized State border.[2]