伊藤 裕之(いとう ひろゆき)は、スクウェア・エニックスのゲームクリエイター、東京造形大学造形学部卒業。岐阜県岐阜市出身。
概要
大学卒業後、スクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社。最初はデバッグや効果音などの仕事をしていたが、『ファイナルファンタジーIV』で趣味のF1観戦から思いついたアクティブタイムバトルシステム (ATB) を発案する。ATBは特許を取り、現在の「ファイナルファンタジーシリーズ」の骨格となった。また、アビリティシステムやジャンクションシステムといった独創的なゲームシステムも開発している。
ゲームデザインとは別に「シオミ」の名で、『ファイナルファンタジーV』のアレンジ曲や、『ファイナルファンタジーIX』の主題歌の作詞なども手掛けている。2006年には、『ファイナルファンタジーXII』のディレクター(ゲームデザイン)を担当した。
趣味はモータースポーツ観戦、パズル、書道。
好きなゲームは『ウィザードリィ』、『ウルティマオンライン』、『ファイナルファンタジータクティクス』。
経歴
ゲームデザイン
一般的にRPGは、時間をかけて育てれば誰でもクリアできるバランスの作品が多く、伊藤作品でもそういったやり込み要素は多いが、レベル上げ禁止やタイムアタックによるプレイヤー自身のスキルによってもクリア出来るバランスを非常に重視している。また、ボスモンスターを倒す事はプレイヤーの実力を試す試練であり、経験値といったご褒美は不要であるという持論も持っている。ただし、育成をせずにボスを倒すテクニックの多くは、アイテムやアビリティで敵の攻撃を封じる力押しやハメ技である事が多く、通常のプレイの際にそれらを駆使するとバランスを壊す面が少なからずある。これに関して一緒に仕事をしたスタッフは「レベルを上げるより装備やライセンスを集めたほうが強いと思います。人間の肉体が短期間で成長するわけがなく、新兵だろうと武装が強いほうが勝つのが伊藤の持論なので」と伊藤が近代戦的な思想を持っている事を語った。
『ファイナルファンタジーIX』以降は、『ファイナルファンタジーXII』でディレクター(ゲームデザイン)として参加。ガンビットを搭載したシームレスな戦闘システムADBは、『FFXII』のエグゼクティブプロデューサーである河津秋敏から「ATBはこの形にならなければ完成ではなかった、流石は伊藤」と絶賛された。余談だが『FFXII』完成直後に「次にやるなら『FF150』」としばらく関わりたくないような発言をした直後にインターナショナル版に早々と登板した。
過去の「実験作」『FFVIII』が「評価以前に成長システムを理解をできなかった」ユーザーが発生してしまったため、『FFXII』の記事ではライトユーザーがバトルシステムを理解するのが精一杯で成長システムを使いこなせない事を不安視する発言を何度もした。
ゲームシステムの構築
アクティブタイムバトルシステム (ATB)
『ファイナルファンタジーIV』にて、アクティブタイムバトルシステムを発明。ターン制のRPGには緊張感がなく眠いと評価し、フェラーリのセミオートマチック技術を参考に「セミリアルタイムバトルシステム」を発明、これを「アクティブタイムバトルシステム」と名付けた。このシステムは特許をとり、現在もFFシリーズの人気を支える売りとなっている。
アビリティシステム
『ファイナルファンタジーV』にてアビリティシステムを発明。アビリティ(能力)を自由に取り外し・組み合わせを可能とした。『FFV』では「コマンドアビリティ」と「ジョブ特性」という2つの概念しかなかったが、『ファイナルファンタジータクティクス』で「コマンドアビリティ」「サポートアビリティ」「リアクションアビリティ」「ムーブアビリティ」の4体系に整理した。
担当したゲームシステム
カードゲーム
『ファイナルファンタジーVIII』から登場したゲーム内ミニゲームで、トリプルトライアド、クアッドミスト(テトラマスター)の2種類のカードゲームをデザインした。
それぞれ現実のカードゲームやオンラインゲーム等に発展し、『FFVIII』ではスタッフの要望で精製によってカードをアイテムに改造できたが、『FFIX』では廃止されている。
関連項目