宝剣岳方面から望む三ノ沢岳
三ノ沢岳(三沢岳)(さんのさわだけ)は、木曽山脈(中央アルプス)にある標高2,847 mの山[3][注釈 1]。主稜線上にある宝剣岳から南西方向に延びた尾根上[注釈 2][1]に位置する。山体すべてが長野県に属し、木曽郡上松町と大桑村にまたがる[4]。地形図では「三沢岳」と表記されているが、三ノ沢岳が用いられることが多い。
麓の木曽谷の上松町[5]、木曽駒ヶ岳や宝剣岳などから、端正な三角錐のその美しい山容を眺めることができる[6]。木曽川の支流の滑川及び伊奈川に挟まれた稜線上の山で、それぞれの川の支流の三ノ沢の源流となっている。この三ノ沢の源頭部の山であることが山名の由来である[5][7]。山頂には、三等三角点(点名「三ノ沢」[1])があり、大きな岩が乱立する展望台となっている。
三ノ沢岳の西側に続く山脈は中三ノ沢岳を経て奇岩の萩原沢岳山塊(蕎麦粒岳)で尾根が北西の風越山山系と南西の糸瀬山山系に分かれ共に木曽川迄続く。三ノ沢岳の西側には登山道はない。
三ノ沢岳を含む中央アルプスの主要な山域は中央アルプス国定公園に指定されている(1951年11月22日、長野県の中央アルプス県立自然公園に指定)[8]。
北東面の伊奈川源流部は、氷河地形の三ノ沢カール(圏谷)が見られる[4][7]。このカールは木曽山脈の木曽側側(西側)での唯一カール地形である[5]。氷河によって削られて堆積したモレーンの地形が原型を留めている[5]。山体は花崗岩で形成されている[4]。山頂部には巨石が重なり合い、独立峰のように見晴らしの良い展望地となっている[7]。
中腹は亜高山帯針葉樹林。山頂付近は森林限界を越える高山帯で、アオノツガザクラ、ウサギギク、コバイケイソウ、シナノキンバイ、コマウスユキソウ、タカネグンナイフウロ、チングルマ、ハイマツ、ハクサンイチゲ、ハクサンチドリ、ハクサンフウロ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマクロユリ、ミヤマダイコンソウ、ヨツバシオガマなどの多くの高山植物が見られる[6][9][10][11]。花の名山の一つとして、NHKのテレビ番組で『花の百名山 三ノ沢岳 コマウスユキソウ』として紹介されている[12]。エーデルワイスに似た花のヒメウスユキソウ(別名がコマウスユキソウ)は周辺の山域のみに生育する木曽山脈の固有種で、三ノ沢岳では山頂部の岩陰や砂礫地などに分布している[10]。三ノ沢岳の南面にはコバイケイソウの群生地があり、山頂付近の斜面は多くのハクサンチドリが分布している[10]。主稜線の極楽平付近から三ノ沢岳にかけての砂礫地などに、アオノツガザクラのカーペット状の群落がある。木曽山脈では南駒ヶ岳の摺鉢窪カールに次ぐ高山植物の群生地で、伊奈川源流部の北側斜面一帯(通称「西千畳敷」)と山頂直下南斜面の2箇所に大群落がある[5]。
1967年(昭和42年)7月に駒ヶ岳ロープウェイが開通したことに伴い、訪れる登山者が増加した[4]。主稜線から木曽側に外れた稜線上にあることから、木曽駒ヶ岳と比べると訪れる人の数は少ない[13]。山頂には花崗岩が積み重なりそこからは木曽駒ヶ岳、空木岳、乗鞍岳、御嶽山などの展望が広がる[9][6][13]。標高2,846 mの日本で46番目に高い高峰であるが、木曽山脈の主稜線から外れた箇所にあるため、中央アルプスの縦走を行う登山者が立ち寄らない場合がある。登山適期は6-10月頃で、初夏には残雪があり、登山道周辺での主な高山植物の開花時期は7月上旬-8月中旬頃[9]。
山体は木曽側にあるが、ふもとから直接登る登山道はない。伊那側の千畳敷カールから極楽平に登り、宝剣岳との分岐から尾根伝いに三ノ沢岳山頂へ向かうのが一般的。山頂に至る登山道はこの1本のみであり[4]、その途中の山頂手前には遭難慰霊碑のケルンがある[9][7]。登山ルート上に水場はない[9]。
木曽駒ヶ岳周辺には、多くの山小屋がある[14][15]。駒ヶ岳ロープウェイの千畳敷駅に併設されているホテル千畳敷は一般の宿泊施設で、日本で最も高い場所(標高2,612 m)に建つホテルである[16]。三ノ沢岳の周辺にある山小屋を下表に示す。
木曽山脈の北西部の支尾根上にあり、主稜線からは独立峰のように見える[9][7][10]。その稜線はさらに、中三ノ沢岳(標高2,485 m)、独標(2,339 m)、キニバ岩(2,120 m)、中八丁峠、糸瀬山から須原方面まで延びている。また独標からは、独標尾根が北北西に、天狗山(2,118 m)、風越山へと延びている[18]。木曽山脈では、木曽駒ヶ岳(付属の山として宝剣岳を含む)、空木岳に次いで3番目に高い山である[19]。
源流となる以下の木曽川水系の河川は、太平洋側の伊勢湾へ流れる[14][18]。木曽川の支流の滑川は下流から順に、左岸側に一ノ沢、二ノ沢、三ノ沢、A1沢、A2沢、奥三ノ沢、四ノ沢、五ノ沢、宝剣沢の支流に分かれ、三ノ沢から奥三ノ沢にかけての流域が三ノ沢岳北面を源流としている。
山域には一般道と林道はなく、木曽山脈主稜線上の宝剣岳の南から山頂に至る登山道が開設されている[14]。