ロクソマ科[6][7][8][9](ロクソマか、学名:Loxsomataceae)は、ヘゴ目に属する大葉シダ植物の科の1つである[1][2]。ロクスソマ科とも表記される[10]。
現生ではロクソマ属とロクソモプシス属の単型属2属からなり、2種のみを含む[1]。また、白亜紀からの化石属 Loxsomopteris も記載されている[11]。
タイプ属である Loxsoma は、1837年にアラン・カニンガムの著書中で Loxoma として記載された[3]。翌年、ウィリアム・ジャクソン・フッカーにより(明言されていないもののおそらくロバート・ブラウンの手稿に基づいて) Loxsoma の誤記であったとして訂正された[3]。正書法における誤字・脱字の訂正とみなされる場合には国際藻類・菌類・植物命名規約 (ICN) 第60.1条に基づいて訂正することができるとされる[3]。なお、Loxsoma は古代ギリシア語の λοξός(loxos「斜め」)と σώμα(-sōma「体」)の合成語である[3]。そのため、Loxsoma ではなく Loxosoma が正書法上の正しい綴りに当たり、フッカーによる訂正は規約において認められた修正ではないと考えられる[3]。しかしこの綴りは正しいと考えられて多くの著者に引用されてきたため、Alfarhan et al. (2009) により、学名の安定化のために Loxsoma を保存名とすることが提案された[3]。
ICN の第18.1条に基づき、科の学名は属格単数形の屈折語尾を語尾 -aceae に置き換えて形成されるため、Loxsomaceae ではなく Loxsomataceae と綴られる[3][注釈 1]。この著者であるプレスルは Loxsomaceae という綴りを用いたが、これは第16.3条のもと著者の変更なしに語尾が訂正される[3]。
木生シダを擁するヘゴ目に属するが、木生ではない[4]。根茎は匍匐する[4][12]。ロクソマ属の根茎に比べ、ロクソモプシス属の方が長い[12]。中心柱は両篩管状中心柱である[13]。皮層内層には厚壁細胞に柔細胞群が交じる[13]。茎や葉柄には鱗片を持たない[4]。毛は基部が多細胞の円錐体で、先端に向かってだんだん細くなり、先端では1細胞列となる[14]。
葉は3回羽状複葉(ロクソマ属)または3回羽状深裂(ロクソモプシス属)で、前者は長さ 1 m(メートル)程度であるが、後者は 4 m に達する[12]。
胞子嚢群は葉縁に付着する[4][12]。コップ状包膜を持ち、成熟すると胞子嚢が突出する[12]。形状はコバノイシカグマ科やコケシノブ科に似ている[12]。ロクソマ属では胞子嚢に不完全環帯を持ち、縦裂開するのに対し、ロクソモプシス属では完全環帯を持ち横裂開を行う[15]。
現生の2属や化石種はいずれも分布域が大きく異なる[15]。
ロクソマ属はニュージーランド北島の固有属である[15][16][3][4]。低地や低山の明るい林縁や伐採跡地に生息している[9]。
ロクソモプシス属は中央アメリカおよび南アメリカ(ボリビアからコスタリカ)に分布する[9][15][4]。標高 1,600–2,900 m の雲霧林に生息し、周囲の木にもたれかかっている[12]。
現生種は Hassler (2024) に基づく。かつてロクソモプシス属には3–4種が含まれるとされたが[15][12]、現在は1種にまとめられ、いずれも Loxsomopsis pearcei のシノニムであるとされる[17]。化石種は西田 & 西田 (1982) に基づく。
白亜紀から化石記録(Loxsomopteris)が知られる[11][15]。この属は1976年にスコーグ(スペイン語版)によりアメリカ合衆国メリーランド州の下部白亜系(バレミアンまたはアプチアン)から得られた根茎の化石 Loxsomopteris anasilla に基づいて記載されたものである[15]。
日本では、北海道夕張市の上部白亜系(コニアシアン–サントニアン)から Loxsomopteris loxsomoides が産出している[18][15]。これは1930年に小倉謙により Solenostelopteris loxsomoides として記載されたものである[15]。
1947年のコープランドの分類でも既に独立した科として認識され、その後もほとんどの分類体系において、独立した科に位置付けられてきた[19]。かつては原始的で孤立した科であると考えられていたが、分子系統解析によりキジノオシダ科に近縁であることが明らかとなった[16]。
Christenhusz & Chase (2014) では、ヘゴ科にまとめられ[7][20]、そのうちの1亜科 Loxsomatoideae Christenh. (2014) とされた[21]。しかし、海老原 (2016) や PPG I (2016) ではこれは支持されず、ヘゴ目の1科としての分類が踏襲されている。
分子系統解析では、ロクソマ科は何れの系統仮説においてもヘゴ目に属することが示されている[4][22][23][24][25]。その中でも、ティルソプテリス科、クルキタ科、キジノオシダ科とともに単系統群をなし、クルキタ科とキジノオシダ科を合わせた単系統群の姉妹群となる[7][4][22][23][24][25]。
ティルソプテリス科 Thyrsopteridaceae
ロクソマ科 Loxsomataceae
クルキタ科 Culcitaceae
キジノオシダ科 Plagiogyriaceae
ヘゴ科 Cyatheaceae
タカワラビ科 Cibotiaceae
ディクソニア科 Dicksoniaceae
メタキシア科 Metaxyaceae