モジュラー・メトロ(英語: Siemens Modular Metro)は、ドイツのシーメンスグループの輸送部門シーメンス・トランスポーテーション・システムズ(現シーメンス・モビリティ)が開発した都市高速鉄道(地下鉄)向けの汎用コンセプトモデルによる鉄道車両。
2000年にオーストリアのウィーン地下鉄新車投入に伴い始動したプロジェクトによって「Mo.Mo」(Modular Mobirity)とも呼ばれているが[1][2][3]、それ以前から中国大陸(1997年の広州地下鉄)以降、タイや台湾でほぼ同様のコンセプトによるものが採用されている。
製品デザインは同国ポルシェデザインが手掛けたことで知られている[2]。2000年代にはドイツのみならず各国で採用が相次いだが、2010年代は同社の後継モデルであるInspiroシリーズが主流となっている。
仕様
モジュラー・メトロは輸送力毎時2-6万人の路線に対応し、車体デザインは既述のとおりポルシェデザインが担当。車端部、通路、屋根の空調から内装に至るまでモジュール化されている。動力車と付随車の複数の組み合わせパターンが可能で1両単位でも車両長17-25メートル、全幅2.6-3.2メートルの範囲でカスタマイズできる。車体はステンレス鋼あるいはアルミニウムで構成され、正面あるいは側面の3度の傾斜角が特徴。下記メルボルンと上海の案件を除き標準軌、直流750V、第三軌条方式が共通。
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ウィーン Type V 内装
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ニュルンベルクDT3内装
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バンコクメトロ内装
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上海2号線02A01型内装
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上海4号線内装
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メルボルン・メトロ・トレインズ内装
導入例
一覧
現在、以下の列車はすべて直流電化を使用しています。
事業者
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路線
|
運行開始
|
編成数
|
車両数
|
編成長
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全幅
|
設計速度
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座席数
|
定員
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軌間
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集電方式
|
電気方式
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m |
m |
km/h |
mm |
DC V
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広州地下鉄
|
1号線
|
1997年
|
4M2Tx21
|
168
|
139.98
|
3.0
|
80
|
336
|
1,860
|
1,435
|
架空電車線方式
|
1,500
|
バンコク・スカイトレイン[4]
|
1999年
|
[註 1]2M1Tx35
|
105
|
65.1
|
3.2
|
126
|
846
|
第三軌条方式
|
750
|
台北捷運
|
板南線
|
2M1Tx2x36
|
216
|
141.0
|
3.2
|
90
|
396
|
1,914
|
ウィーン地下鉄[5]
|
2000年
|
4M2Tx62
|
366
|
111.2
|
2.85
|
80
|
260
|
1,187
|
上海軌道交通
|
2号線
|
6M2Tx16
|
128
|
140
|
3.0
|
|
1,860
|
架空電車線方式
|
1,500
|
台北捷運
|
板南線
|
2003年
|
2M1Tx2x6
|
36
|
141.0
|
3.2
|
396
|
1,914
|
第三軌条方式
|
750
|
メトロ・トレインズ・メルボルン[6]
|
2M1Tx72
|
216
|
71.9
|
2.948
|
147
|
264
|
522
|
1,600
|
架空電車線方式
|
1,500
|
バンコクメトロ[3][7]
|
ブルーライン
|
2004年
|
2M1Tx19
|
57
|
61.5
|
3.12
|
80
|
126
|
886
|
1,435
|
第三軌条方式
|
750
|
上海軌道交通[8][9][10]
|
4号線
|
2005年
|
4M2Tx28
|
168
|
140
|
3.0
|
90
|
|
1,860
|
架空電車線方式
|
1,500
|
T-bane(オスロ地下鉄)[11]
|
2007年
|
3Mx115
|
345
|
54.34
|
3.160
|
80
|
124
|
678
|
第三軌条方式
|
750
|
ニュルンベルク地下鉄[12]
|
2号線
|
2008年
|
2Mx32
|
64
|
38.36
|
2.9
|
82
|
320
|
3号線
|
2Mx14
|
28
|
38.36
|
2.9
|
72
|
288
|
高雄捷運[13]
|
紅線・橘線
|
2M1Tx42
|
126
|
64.45
|
3.15
|
90
|
126
|
876
|
広州
シーメンス・アドトランツの共同生産で1号線用に採用された[14][15]。後に3号線用車両(広州地下鉄3号線列車(中国語版))のベースとなっている。
上海
2号線向けに02A01型が24編成(アドトランツと共同で35編成[16])、4号線向けには04A01型が28編成(南車株洲電力機車との共同[17])を受注。このうち最初の2編成はオーストリア・ウィーンでの製造で、残りは中国で組立[18]。広州と同じく架線電車線方式。いずれも初期は6両編成だったが[19]、現在は8両化されている。
台北
ともに台北捷運板南線に投入されている。341型は321型の後継車。台北捷運土城線延伸用に調達された。
バンコク・スカイトレイン
ウィーン
現地で「Type V」と呼ばれる新車にプロトタイプとその後の量産型が採用され、「モジュラー・メトロ」シリーズとして確立した。
メルボルン
メルボルンの近郊列車として投入されている。2ドアのオールクロスシート車で、架空電車線方式。
バンコクメトロ
ブルーライン用。後にスカイトレインとの直通を可能とするため、スカイトレインと同じモジュラー・メトロを導入した。
オスロ
ニュルンベルク
無人運転仕様の2号線(英語版)用のDT3と無人/有人運転両対応で運転室を備えた3号線(英語版)用のDT3-Fに大別される。
高雄
紅線、橘線に投入された。将来的には6両化に対応している。
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ウィーンの「Type V」
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ニュルンベルクのDT3
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バンコク・スカイトレイン
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バンコクメトロ・ブルーライン
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台北捷運C321型
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台北捷運C341型
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高雄捷運車両
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上海2号線02A01型
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上海4号線04A01型
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広州地下鉄1号線
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メルボルン・メトロ・トレインズ
源流
モジュラー・メトロは1993年にニュルンベルク地下鉄で投入された先代のDT2型(ドイツ語版)の車体を進化させたもの。さらにDT2は1960年代から製造されていたミュンヘン地下鉄のA型(ドイツ語版)を彷彿させるデザインを受け継いでいる。中国では広州に投入されたものは1993年から投入されていた上海1号線のDC01型(アドトランツとの共同)がベースとなっている。その後シーメンスは株洲電力機車との共同で現地化を進め、1998年から1号線用にAC01型(中国語版)が投入された[20]。
脚注
註釈
出典
- ^ (英語)“Case No COMP/M.2139 Bombardier/ADtranz.”. 欧州委員会. p. 10 (2001年4月3日). 2018年4月21日閲覧。 アーカイブ 2018年4月17日 - ウェイバックマシン
- ^ a b (英語)Siemens tries MoMo concept アーカイブ 2018年4月21日 - ウェイバックマシン1999-07-01,レールウェイ・ガゼット・インターナショナル
- ^ a b (英語)Metro System for Bangkok, Thailand Turnkey Project アーカイブ 2018年4月21日 - ウェイバックマシン シーメンス公式
- ^ (英語)Metro System Skytrain Bangkok BTS, Thailand アーカイブ 2019年3月6日 - ウェイバックマシン シーメンス公式
- ^ (ドイツ語)Metro System – Wien V-Wagen, Österreich アーカイブ 2023年4月4日 - ウェイバックマシン シーメンス・モビリティ公式
- ^ (英語)“VICSIG: Siemens trains”. www.vicsig.net. 2008年8月30日閲覧。 アーカイブ 2016年7月30日 - ウェイバックマシン
- ^ (英語)Siemens Transpotation Systems Sharping Tommorow's Railways アーカイブ 2019年12月23日 - ウェイバックマシン2005-12,Japan Railway & Transport Review(東日本鉄道文化財団)
- ^ (中国語)城轨车辆 为先进的城市轨道车辆提供部件及系统解决方案 アーカイブ 2016年8月21日 - ウェイバックマシン シーメンス中国公式
- ^ (中国語)西门子将为上海地铁提供72辆新车 アーカイブ 2018年7月31日 - ウェイバックマシン2005-10-24,海投资网
- ^ (中国語)上海市明珠二期轨道交通车辆 アーカイブ 2018年7月31日 - ウェイバックマシン2013-11-24,中国中車株洲電力機車
- ^ (英語)Metro – Oslo MX, Norway シーメンス公式
- ^ (ドイツ語)Automatische U-Bahn Nürnberg, Deutschland アーカイブ 2018年11月6日 - ウェイバックマシン シーメンス・モビリティ公式
- ^ (繁体字中国語)電聯車小百科 アーカイブ 2014年6月8日 - ウェイバックマシン2006-01,高雄捷運簡訊(高雄市政府捷運工程局)
- ^ (英語)Guangzhou Metro アーカイブ 2018年7月13日 - ウェイバックマシン Railway Technology.com
- ^ (英語)“アーカイブされたコピー”. 1998年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月30日閲覧。 アーカイブ 1998年2月4日 - ウェイバックマシン1997-07-29,アドトランツ
- ^ (英語)“アーカイブされたコピー”. 1996年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月30日閲覧。 アーカイブ 1996年12月29日 - ウェイバックマシン1996-08-14,アドトランツ
- ^ (中国語)株洲电力机车厂成为全国地铁列车生产基地 アーカイブ 2012年6月24日 - ウェイバックマシン2005-07-31,中国網
- ^ (英語)“Siemens, Alstom win Chinese transit contracts”. Railway Age. highbeam.com (May 2002). 2018年4月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年8月30日閲覧。 アーカイブ 2018年4月23日 - ウェイバックマシン
- ^ (中国語)轨道交通4号线首列列车抵沪 アーカイブ 2018年7月31日 - ウェイバックマシン2005-01-08,上海市政府
- ^ (英語)Metro – Line 1 & 2, Shanghai, China アーカイブ 2018年7月31日 - ウェイバックマシン ボンバルディア・トランスポーテーション公式
関連項目
外部リンク