「ボール・アンド・チェイン 」(Ball 'n' Chain、ないし、Ball and Chain) は、アメリカ合衆国 のブルース 歌手ビッグ・ママ・ソーントン が書き、自ら吹き込んだ楽曲。彼女自身が吹き込んだバージョンは『ビルボード 』誌のチャートに入らなかったが、後にジャニス・ジョプリン がこの曲を演奏し、吹き込んだことによって、ソーントンの作品の中でも最も広く知られた楽曲となった。
背景とリリース
1960年代 はじめ、ソーントンはベイ=トーン・レコード (Bay-Tone Records) で数曲を吹き込んだ。そのうち、「You Did Me Wrong」と「Big Mama's Blues」はレコードになった (Bay Tone no. 107)。このレコードについて当時の『ビルボード 』誌のレビューは、「そこそこ売れそう (moderate sales potential) と評していたが[ 1] 、結局のところ同誌のR&Bチャート入りは果たせなかった[ 2] 。音楽評論家のギリアン・ガール (Gillian Gaar) によれば、ソーントンは「ボール・アンド・チェイン」も吹き込んだが、それがリリースされることはなかったという[ 3] 。
1968年 、アーフーリー・レコード が「ボール・アンド・チェイン」をリリースした[ 4] 。アーフーリー・レコードによるコンピレーション・アルバム『ボール・アンド・チェイン 』[ 5] には4分半に及ぶバージョンが収録され、これを短く編集したバージョンは、「ボール・アンド・チェイン パート1」(Ball and Chain Part 1) としてシングルになった。ソーントンのバックを務めたスモール・コンボには、常連のギター伴奏者であったエドワード・"ビー"・ヒューストン (Edward "Bee" Houston) が加わっていた[ 6] 。後に彼女は、この曲をいくつものスタジオ録音やライブ録音で取り上げており、その中には1969年 にアルバム・チャートである「Billboard Top 200 」に入った『Stronger Than Dirt 』(Mercury SR 61225) も含まれている。
ジャニス・ジョプリン/ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーのバージョン
ジャニス・ジョプリンは、ソーントンから音楽的な影響を受けたことをしばしば公言していたが、「ボール・アンド・チェイン」も様々なライブの機会に取り上げて歌っていた。ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニー のギタリストだったジェイムズ・ガーリー (英語版 ) によると、ジョプリンは、サンフランシスコ のバー でソーントンが歌っているこの曲を初めて聞いたのだという[ 7] 。バンドは、この曲をゆっくりとした短調のブルースに作り替え、数カ所にブレイクを盛り込んだ[ 7] 。1967年 、彼らはモントレー・ポップ・フェスティバル でこの曲を演奏し、聴衆からの熱狂的な反響と好意的批評を受けた[ 8] 。最初にこの曲を取り上げた、6月17日 の演奏は、映像の記録が撮られていなかったので、バンドは翌日も同じ曲を演奏するよう説得された。こうして撮影された映像は、ガーリーの長いギター・ソロを短くカットした形で、1968年の映画 『Monterey Pop 』に収録されたが、6月17日 の演奏の音源も、1995年 にジョプリンのコンピレーション・アルバム『18 Essential Songs 』に収録された。1968年 3月8日 に収録されたフィルモア・イースト におけるライブの録音は、ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニー名義のアルバム『チープ・スリル 』に収録された。このほか、様々なライブ音源が、ジョプリン名義の『チープ・スリル 』や、『Live at Winterland '68 』、『Live at the Carousel Ballroom 1968 』、『en:The Woodstock ExperienceThe Woodstock Experience 』、『InConcert 』に収録されている。
著作権をめぐる問題
上述のガールによると、1960年代 はじめに、ソーントンがベイ=トーン・レコード でこの曲を最初に吹き込んだが、同レーベルは結局この曲のレコードを発売しなかった[ 3] 。ガールによると、この曲はベイ=トーンが「著作権を所有しており、60年代の終わりのジョプリンのレコードからの著作権使用料は、ソーントンにはもたらされなかった」のだという[ 3] 。いずれにせよ、ソーントン自身のレコードにも、ジョプリン/ビッグ・ブラザーのレコードにも、演奏権管理団体BMI の名とともに、作者名として「W・M・ソーントン」が明記されている[ 9] 。別の説では、ソーントンがベイ=トーンと交わした契約が、その後のリリースに問題を生じさせたともいわれている[ 10] [要ページ番号 ] 。ただし、1972年 のインタビューで、ソーントンは、ジョプリンに録音の許可を与え、売り上げに応じたロイヤリティを受け取ったと語っている[ 10] [要ページ番号 ] 。
評価
ビッグ・ママ・ソーントンの「ボール・アンド・チェイン」は、ロックの殿堂 が選定した「500 Songs that Shaped Rock and Roll」のひとつに選ばれている[ 11] 。
その他のカバー
アメリカのバンド、ハーフ・ジャパニーズ は、1985年 のアルバム『Sing No Evil 』にこの曲を収録した[ 12] 。
エタ・ジェイムス は、ジョプリンが歌った楽曲を様々な歌手が歌ったトリビュート・アルバム『Blues Down Deep: Songs of Janis Joplin 』に、ジョプリンが『チープ・スリル』に収録したバージョンに基づく「ボール・アンド・チェイン」の自身のバージョンを収録した[ 13] 。
脚注
^
Billboard (1961-05-15). “Reviews and Ratings of New Records”. Billboard (Nielsen Business Media, Inc) 73 (19): 49. ISSN 0006-2510 .
^
Whitburn, Joel (1988). Top R&B Singles 1942–1988 . Record Research, Inc. p. 411. ISBN 0-89820-068-7
^ a b c
Gaar, Gillian (1992). She's a Rebel: The History of Women in Rock & Roll . Seattle: Seal Press. p. 4. ISBN 978-1580050784
^
Dahl, Bill (1996). Erlewine, Michael . ed. All Music Guide to the Blues . Miller Freeman Books. p. 251. ISBN 0-87930-424-3
^ このアルバムには、ソーントンの3曲のほか、ラリー・ウィリアムズ (Larry Williams) の3曲、ライトニン・ホプキンス の6曲が収録されている。:Ball And Chain - Discogs (発売一覧)
^
Schulte, Tom. “Bee Houston: The Hustler – Album Review ”. AllMusic . Rovi Corp.. 2013年5月10日 閲覧。
^ a b
Friedman, Myra (2011). Buried Alive: The Biography of Janis Joplin . Crown Publishing Group. p. 334. ISBN 978-0307790521
^ Gilliland, John (1969). "Show 47 - Sergeant Pepper at the Summit: The very best of a very good year. [Part 3]" (audio) . Pop Chronicles . University of North Texas Libraries .
^
“BALL AND CHAIN (Legal Title) – BMI Work #82820 ”. BMI Repertoire . BMI . September 16, 2014 閲覧。
^ a b
Spörke, Michael. Big Mama Thornton: The Life and Music . McFarland Inc.. ISBN 978-0-7864-7759-3 . http://www.mcfarlandbooks.com/book-2.php?id=978-0-7864-7759-3
^
“500 Songs That Shaped Rock and Roll ”. Exhibit Highlights . Rock and Roll Hall of Fame (1995年). 2007年5月2日時点のオリジナル よりアーカイブ。2013年5月10日 閲覧。
^ Sing No Evil - Discogs (発売一覧)
^ Blues Down Deep: Songs Of Janis Joplin - Discogs
外部リンク