『フェリペ4世』(フェリペよんせい、西: Felipe IV anciano、英: Philip IV) は、バロック期のスペインの巨匠ディエゴ・ベラスケスがキャンバス上に油彩で描いたスペイン国王フェリペ4世の肖像画である。簡素な小品であるが、ベラスケスの代表的な肖像画に数えられる。この作品は画家が以前に描いた国王の肖像とは明らかに異なっている。それらの作品で国王は端正かつ優美に、そして、ときには『フェリペ4世騎馬像』(プラド美術館) などに見られるように勇壮に描かれていたが、本作の国王の表情には苦渋、悲しみ、諦念が反映されているからである[1]。本作はまた、単身で描かれたフェリペ4世の最後の肖像画で、以降フェリペ4世は集団肖像画の『ラス・メニーナス』(プラド美術館) で鏡像として描かれるのみである[2]。作品はマドリードのプラド美術館に所蔵されている[3][4][5]。
この肖像画が描かれたのはフェリペ4世にとって非常に辛い時期で[1]、最初の妻イサベル・デ・ボルボンをなくし、後継者となる王太子バルタサール・カルロスも失った[5]。さらに国際政治におけるスペインの影響力が失墜し、スペインが衰退していくのを止めることができなかった。王は史上有数の絵画コレクターとして名高いが、絵画の収集に没頭したのは人生からの逃避であった。同時代の歴史家ヘロニモ・デ・バリオヌエボ (Jerónimo de Barrionuevo) は、1656年の手紙で次のように記している。