「ヒトラーのキンタマ」(Hitler has only got one ball、ヒトラーにはひとつしかキンタマがない )は、ケネス・アルフォード作曲『ボギー大佐』に連合国の敵であるヒトラーをバカにする歌詞を付けた歌である。第二次世界大戦中のイギリス軍兵士の間で広まった。歌詞はナチス・ドイツの指導者を揶揄する四行詞であるが、さまざまなバリエーションがある。
アメリカの小説家ジョン・ノウルの小説『A Separate Peace』を映画化した1972年の映画で歌われた(小説中ではこの歌は登場しない。映画中の曲も『ボギー大佐』ではない)。
2000年、Vertigoのミニシリーズ『Adventures in the Rifle Brigade』で登場。後続のミニシリーズ『Operation Bollock』では失われた睾丸が物語の中心的なプロットデバイスになっている[3]。
2003年、イギリスのビール・スピットファイアの広告「ボトル・オブ・ブリテン」で登場。第三帝国の制服に身を包んだヒトラーの写真に「Spot the ball (タマを探せ)」というキャプションが添えられていた。この広告は、印刷メディアの「Spot the ball」コンペティション(ボールだけ修正で消してあるサッカーの試合のある瞬間の写真を読者に見せて、ボールのある位置を当てさせる企画)と掛けている。
BBCテレビのコメディー番組『Alas Smith and Jones』中のある回でメル・スミスとグリフ・ライズ・ジョーンズが戦争の頃を回想し、その時代の歌を歌う。スミスは「White Cliffs of Dover」や「We'll Meet Again」感傷的に歌うが、ジョーンズが「ヒットラーのキ……」と歌い始めたときにそれを止める。
BBCテレビのコメディー番組『Two Point Four Children』では(バーバラ・ロットが演じる)おばあさんが友人との会話の中でゲッベルスに言及し、「タマが無かったんですって?」と質問する。
BBCテレビのシチュエーション・コメディ『The New Statesman』の登場人物が冷凍保存されたヒトラーの性器を目撃したとき、「しかし1つしかないじゃないか!」と驚いて叫ぶ。
Amazon Prime のドラマ『高い城の男』、シーズン4、エピソード8で、レジスタンスがピアノを弾きながらこの歌を歌い、ダンスをする場面がある。
戦後すぐに行われたとされるソ連によるヒトラーの死体解剖によると、ヒトラーは単睾丸であったと主張している。しかし大部分の歴史家はこの言及をプロパガンダとして退けている。この解剖は1970年頃になって初めて公開されたものである。しかしその一方、記録によるとヒトラーは1916年にソンムの戦いで負傷しており、一部の情報源では彼の負傷は鼠蹊部だったとしている。第一次世界大戦中のヒトラーの中隊長は、性病検査のときにヒトラーには睾丸が1つしかないことが見つかったと言っている。ロバート・G・L・ウェイトは著書『The Psychopathic God: Adolf Hitler』(1978年)でこの証拠の正確さを認めている:
子供時代以降のヒトラーの心理的成長にとって相当に重要な問題であるから、ここで一旦本題を措いて、総統の睾丸問題について考察しよう。ここで、イギリス歩兵はボギー大佐の一行目について全く正鵠を得ていたと断言できるが、最後の行については明らかに間違っている。すなわち、ゲッベルスの6人の子供が養子か代理母か、考えたくも無い「Gott mit uns」型の神の仲裁でもない限りである。
赤軍病理学者によるヒトラーの死体解剖は明瞭な結果を得た:
左の睾丸は陰嚢、鼠蹊部の精索、小骨盤腔のいずれの中にも発見できなかった。
この問題について、1970年代初期のイギリスの雑誌ニュー・ステーツマン誌の投書欄で数週間に渡り議論が行われたことがあるが、すべての投書がソ連の解剖を本当だと受け止めていた。ある者は、イギリスの情報部がヒトラーが単睾丸だったことを発見し、ヒトラーを一層怒らせるために歌にしたのではないかと主張した。また、それはただの偶然の一致だという者もおり、さらにナポレオンについても同様の歌があったと主張する者すらいる。英語圏の話者は「ゲッベルス (Goebbels)」を正しく発音できず、「ゴーボールズ」のように発音するため、これが「ノーボールズ (no balls)」の着想を呼んだのだと言うものもいる。この一連の投書は、不法入国者が拘留されているとされる状況についての問題提起と、ヒトラーの睾丸より重要な問題があるという指摘の投書により、終息した。
^ abKelly, Greg (2012). "Colonel Bogey’s March through Folk and Popular Culture" in Warrior Ways: Explorations in Modern Military Folklore. Utah State University Press. p. 208
^Anthony Hopkins' "Songs from the Front & Rear" Hurtig Publishers, Edmonton; 1979 pg 186