ハリー・ベイツ[注釈 1](Harry Bates)ことハイラム・ギルモア・ベイツ3世(Hiram Gilmore Bates III、1900年10月9日 - 1981年9月)は、アメリカ合衆国のSF編集者、作家である。1940年の短編小説『主人への告別』(Farewell to the Master)は、1951年のSF映画『地球の静止する日』(The Day the Earth Stood Still)の原作となった。
ベイツは、アンソニー・ギルモア(Anthony Gilmore)やH・G・ウィンター(H.G. Winter)というペンネームを使って、デズモンド・ウィンター・ホールと共同で「ホーク・カース」(Hawk Carse)シリーズなどのSF小説を執筆した。1952年、「ホーク・カース」シリーズが"Space Hawk: The Greatest of Interplanetary Adventurers"としてまとめられた。ベイツが執筆した作品で最も有名なものは、『アスタウンディング』1940年10月号に掲載された『主人への告別』(Farewell to the Master)である。この作品は、1951年のSF映画『地球の静止する日』(The Day the Earth Stood Still)の原作となった。ただしこれは、舞台設定を借用したのみで、ストーリーは大きく異なる。
ベイツは、1964年の『アスタウンディングへのレクイエム』の中で、「ホーク・カース」シリーズについて振り返り「当初から私は、説得力のあるキャラクターに説得力のない科学を組み合わせることが、[自身が編集する雑誌に執筆する]作家たちにはできないように思えることが気になっていた。その約2年後、作家に対して生き生きとしたヒーローと悪役(a vivid hero and villain)の例を示し、雑誌の読者に対してすごいヒーローと悪役(a whopping hero versus villain)の例を提供するという、2つの役割を持って、最初のホーク・カースの話を作り出したのだ」と述べた。
サム・モスコウィッツ(英語版)が編集するガーンズバックの『サイエンス・フィクション・プラス』に、ベイツの小説が2つ掲載された。1953年5月号に掲載された"The Death of a Sensitive"について、モスコウィッツはそれまでに同誌に掲載された中で最高の小説だと評価した。しかし、1953年12月号に掲載された"The Triggered Dimension"については、ガーンズバックもモスコウィッツも内容の一部修正を求めた。ベイツは修正に同意し、ガーンズバックの出版社のオフィスまで出向いて修正を行った。同年、モスコウィッツはシティカレッジで、同学で初めてとなるSFについての講義を始めた。その1回目の授業に、モスコウィッツはベイツをゲスト講師として招き、ベイツも承諾した。しかし、ベイツは自身の小説の修正への当て付けとして、授業を欠席した。モスコウィッツは後に次のように述べている。
これらの小説は、1952年に"Space Hawk: The Greatest of Interplanetary Adventurers"として出版された。アントニー・バウチャーとJ・フランシス・マッコーマス(英語版)は、この作品を「独特の偉大さに到達した、度を越して悪い散文の全ての目利きに強く推奨する」と評した[5]。P・スカイラー・ミラー(英語版)はこの作品を「古い、生々しい、手荒な流派のスペースオペラであり、当時の全てのクリシェを含んでいる」と評し、「ホース・カークは、彼がだいたい良いと思えるほど悪いものだった」と結論づけている[6]。エヴリット・ブライラーはこの作品を「伝統的なパルプ西部劇の舞台を宇宙に移し、それにサックス・ローマーのフー・マンチュー博士のような東洋風の悪役を加えたもの」と評した[7]。
その10年後、ベイツが単独で書いた「ホーク・カース」シリーズの小説"The Return of Hawk Carse"が『アメイジング・ストーリーズ』1942年7月号に掲載された。
著書
SF小説
"The Hands of Aten", with Desmond W. Hall, under the pseudonym H.G. Winter, 1931
"The Slave Ship from Space", with the pseudonym A.R. Holmes, 1931
"The Tentacles from Below", with Desmond W. Hall, as Anthony Gilmore, 1931
"Four Miles Within", with Desmond W. Hall, as Anthony Gilmore, 1931
"The Midget from the Island", with Desmond W. Hall, as H.G. Winter, 1931
"Seed of the Arctic Ice", with Desmond W. Hall, as H.G. Winter, 1932
"A Scientist Rises", with Desmond W. Hall, Astounding, November 1932
"The Coffin Ship", with Desmond W. Hall, as Anthony Gilmore, 1933
"Under Arctic Ice", with Desmond W. Hall, as H.G. Winter, 1933
"A Matter of Size", Astounding, April 1934
"Alas, All Thinking", Astounding, June 1935
"The Experiment of Dr. Sarconi", Thrilling Wonder Stories, July 1940
"Farewell to the Master", Astounding, October 1940
"A Matter of Speed", Astounding, June 1941
"The Mystery of the Blue God", Amazing Stories, January 1942
"The Death of a Sensitive", Science Fiction Plus, May 1953
"The Triggered Dimension", Science Fiction Plus, December 1953
エッセイ
"Introducing: Astounding Stories, 1930
"Editorial: Just Around the Corner", 1933
"Editorial: The Expanding Universe", 1933
"Meet the Authors: Harry Bates", 1942
Editorial Number One, "To Begin", in A Requiem for Astounding by Alva Rogers, with editorial comments by Harry Bates, F. Orlin Tremaine, and John W. Campbell. Chicago: Advent Publishers, 1964.
編集者として関わった雑誌
Astounding Stories of Super-Science, 1930
Astounding Stories, 1931
Astounding Stories, 1932
Strange Tales of Mystery and Terror, October, 1932