テングタケ
Amanita pantherina
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神奈川県横浜市青葉区・2014年10月
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分類
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学名
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Amanita pantherina
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和名
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テングタケ
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英名
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panther cap, false blusher
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テングタケ(天狗茸、Amanita pantherina (DC. : Fr.) Krombh.)は、ハラタケ目テングタケ科テングタケ属のキノコである。
形態
子実体はハラタケ型(agaricoid)で全体的に褐色で中型から大型。テングタケ属に特徴的なschizohymenial development(和名未定)という発生様式を採り、卵状の構造物内に小さな子実体が形成され、成長と共にこれを破って出てくる。この発生様式の名残で根元にはツボを持つ。
傘は直径8 - 20センチメートル (cm) 程度で褐色から暗褐色、一般に中央部が濃色で辺縁部は淡色になる。生長した傘の縁には短い条線が現れる。傘ははじめ球形、のちに生長するとまんじゅう形から水平に開き、老菌ではやや反り返る程度まで開く。傘には外皮膜の名残である白色の破片(通称:いぼ)を傘に多数まばらに付着させる。これはテングタケ属のテングタケ節(Sect. Amanita)ではよく見られる特徴で、卵状の構造物の菌糸の接着が弱く脆いためにおこる。いぼは脱落しやすくしばしば完全に消失している。ひだは白色で密、柄に対しては離生する。幼菌には内皮膜がありひだを守っているが、成長して傘が開くと柄の上部に膜質で白いツバとして残る。卵状の構造物に由来するツボも菌糸の接着が弱いために崩れやすく、不明瞭なものとして残る。色はいぼ同様の白色。肉に変色性は無く匂いや味も温和。胞子紋(spore print)は白色。胞子はヨウ素水溶液で呈色しない(非アミロイド性)
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幼菌
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傘の縁には条線が現れる。長さは比較的短い。
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ひだは白色、ツバとツボあり。
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胞子紋は白色
生態
他のテングタケ科同様に樹木の根と外生菌根を形成し栄養や抗生物質のやり取りなどを行う共生関係にあると考えられている。子実体は林床から発生し、日本では夏から秋にかけてに多い。群生することが多い。
本種の子実体はヒポミケス属(Hypomyces)菌に寄生されることがある。寄生された子実体は奇形となり、傘は開かず陰茎を思わせる形状になることから通称タケリタケ(猛り茸)と呼ばれる。
分布
世界中で発生が記録されている。
人間との関係
一般には有毒キノコとして知られる。主要毒成分はイボテン酸とイボテン酸が変化したムッシモール。猛毒のアマトキシン類(アマニタトキシンとも呼ばれる)については微量に含むとも含まないともいわれるが、致命的なほどは含まれていないとされる。
中毒症状
食べると下痢や嘔吐、幻覚などの症状を引き起こし、最悪の場合、意識不明に至ることもある。死ぬことは稀とされている。
- 中毒事例
日本でも最も知名度が高い毒キノコの一つであるが、中毒事故がたびたび発生している[1][2]。
2023年9月には採取したキノコを画像検索した結果を信じ、喫食した結果本種で中毒する事例が起きている[3]。
2024年10月には本種と推定されるキノコをカラカサタケと間違えて採取喫食した結果、80代男性が食中毒を発症している[4]。
利用
イボテン酸の昆虫毒性を利用して殺ハエ剤として各地で利用されたという。もっともこれは本種に限らずベニテングタケや他のテングタケ属菌、ハエトリシメジなどの別科菌のきのこでも行われた。
類似種
テングタケ節に限らずテングタケ属菌では外皮膜がもろく傘にいぼを持つ種がしばしば知られる。同節のベニテングタケ(Amanita muscaria)は傘の色が赤色ないし橙色で、傘には条線を持ち白色のツバとツボを持つ。おもに寒冷地のカバノキ属やモミ属森林の林床に発生する。
イボテングタケ(Amanita ibotengutake)傘が褐色系のテングタケで本種よりやや大きく、いぼの形状や配置が異なる。本種と同一種として扱われていたが、2002年から別種扱いとなっている。
テングタケダマシ(Amanita sychnopyramis)は傘が褐色系のテングタケでツバの位置が本種よりも下に付く。傘は褐色で中央部が濃色柄周辺部が淡く、長い条線があり、外皮膜の破片(いぼ)を付着させる。ひだは白色で柄に対して離生。柄にツバをモツが脱落しやすい。柄の基部には不完全なツボあり。傘の直径5cm程度の小型菌。
テングタケモドキ(Amanita sepiacea)は傘が褐色系のテングタケでダマシとは逆にツバが柄の最上部に付く。種小名sepiaceaはセピア色のという意味で傘の色合いがやや薄いことに因む。傘には外皮膜の破片(いぼ)を付着させる。ツバは脱落しやすい。柄の基部には不完全なツボあり。傘の直径6-15cmの中型菌。
ガンタケ(Amanita rubescens)は全体的に赤みを帯びた褐色で、傘には条線を持たずいぼの形状は本種よりも平面的。肉に変色性があり傷つくと赤変する。キリンタケ(Amanita excelsa)も傘の色が似るが、いぼの形状が異なる。またこの種も傘に条線を持たない。和名が似ているコテングタケ(Amanita porphyria)もここに入る。和名と傘の色合いは似ているが傘にはいぼを持たない。また、コテングタケはヨーロッパとアメリカの種とされ、日本には分布していないとされる。これら3種はテングタケ属の中でもテングタケ亜属(Subgen. Amanita)ではなくマツカサモドキ亜属(Subgen. Amanitina)のキリンタケ節(Sect. Validae)に属しテングタケとはやや遠縁である。
オオフクロタケ(Volvopluteus gloiocephalus、ウラベニガサ科)は傘の色合いが似るが、全体的に濃淡は同一でかすり模様が出る。傘にはいぼを付けず、ツバも持たない。腐生菌で樹木の根とは共生しておらず必ずしも樹木のそばでなくても発生する。シイタケ(Lentinula edodes、キシメジ科)は傘の色合いや傘に付着する白いものが似ているが、ツボは持たずツバもクモの巣状のもので柄には痕跡程度にしか残らない。また、木材腐朽菌であり木材から発生し地面からは発生しない。
本種を含む傘の表面にいぼを持つきのこの同定の際には「いぼ」が重要だと思われがちだが、非常に脱落しやすくしばしば完全に消失しているので他の特徴でも判断する方が無難である。また、ツバも落失の可能性を考えること。
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参考:ベニテングタケ
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参考:ガンタケ。条線が無く肉に赤変性がある。
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参考:キリンタケ。条線がない
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参考:オオフクロタケ
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参考:シイタケは木材から発生する。
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参考:いぼが一部取れたテングタケ
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参考:ツバが脱落したテングタケ
名前
和名テングタケ(天狗茸)は子実体の柄が長いことを天狗の鼻に例えたと見られる。方言名ハエトリタケはハエ取りに用いたことから。
種小名pantherinaはラテン語で動物のヒョウ(豹)を指し、傘にいぼが乗る様がヒョウの模様に似ていることに由来する。一時期はこの直訳でヒョウタケ(豹茸)とも呼ばれたが、日本には分布しないヒョウという動物は馴染みが薄く、ヒョウタケの漢字は「瓢茸」だと思っていた人がいたという。川村清一は長野県での講演会で質疑応答の際、「教科書のひょうたけとはどんな毒茸か。ヒョウタンのような形なのか」と問われた思い出を『原色日本菌類図鑑』に記している[5]。
英語名はpanther cap(ヒョウ柄頭のきのこ)、false blusher(偽のガンタケ)、ロシア語名はМухомор пантерный(ヒョウ柄のハエ取りキノコ)でフランス語名やポーランド語名も同じ意味。多くの国で「ヒョウ柄のキノコ」という名前を当てているようである。標準中国語名もこれと同じ豹斑鹅膏(ヒョウ柄テングタケ)だが、四川省や広西チワン族自治区では満点星(星空キノコ)、白籽麻菌(白いアサの実きのこ)などの呼び名もあるようである。
脚注
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
テングタケに関連するメディアがあります。