チェシャ猫は公爵夫人 の飼い猫として初めて登場し、この時は台所の隅っこで香箱座り をして、ただニヤニヤと笑っていた。この色使いから、茶虎 ( ちゃとら ) (orange tabby ( オレンジ タビー ) ) であることが分かる。上目遣いをしているが、視線の先にアリスが立っている。『不思議の国のアリス』原著より、ジョン・テニエル の挿絵(彩色版、部分)。下の画像はノーカット版。
チェシャ猫 (チェシャねこ、英 : Cheshire cat [1] 〈日本語 音写 例: チェシャーキャット[1] [2] 〉)は、ルイス・キャロル の児童 小説 『不思議の国のアリス 』(1865年 )に登場する架空の猫 である。日本語 では "Cheshire (チェシャー )" の音写 形の表記揺れ と翻訳 者や翻案 者等の個性により、「チェシャー猫 」「チェシアの猫 」「チェシャーキャット 」等々、様々な呼ばれ方をしている。歯を見せたニヤニヤ笑いを常に浮かべ、人の言葉を話し、自分の身体を自由に消したり出現させたりできる不思議な性質を具えた、劇中で最も異能の存在として描かれている。
チェシャ猫は、「チェシャー 地方の猫」もしくは一応のキャラクター として既存していたかも知れない雛形としての「チェシャ猫」にまつわる慣用句 に材を採って、キャロルが創作 したキャラクターである(※後述 )。
作中での描写
ハートの女王 は不埒な猫の首を刎ねる よう死刑執行人 に命じたが、中空に頭だけで現れたチャシャ猫には切るべき首が見当たらなった。切り離す胴が無いのでは切れません。頭があるなら切れるではないか、たわけ者。さっさとやらねば誰彼かまわずみな処刑するぞ。
ニヤニヤ笑う、木の上のチェシャ猫 / テニエルの挿絵(彩色版、部分)。[注 1]
第6章「豚とコショウ」に初登場。公爵夫人 の家を訪れた主人公 のアリス は、いかれた料理人 のせいであたりに充満している胡椒(こしょう ) も気にせずに竈(かまど ) の上で「耳から耳まで届くような」ニヤニヤ笑いを浮かべているチェシャ猫を目撃する(■ )。
その後、アリスが公爵夫人の家を出ると、不意に木の上にチェシャ猫が出現し、アリスに帽子屋 と三月ウサギ の家の方向をそれぞれ教えた後、「笑わない猫」ならぬ「猫のない笑い (a grin without a cat)」となって消えてゆく(■ ,■ )。
第8章「女王のクロッケー場」では、ハートの女王 の出鱈目すぎるクロッケー 大会に付き合わされて退屈していたアリスの前に再び現れ、アリスの話相手になる。チェシャ猫の不敬を難じたハートの王 が、追い払うよう女王に頼むと、女王は猫の首を刎ねる よう死刑執行人 に命じる。ところがしかし、チェシャ猫は中空に頭だけ(あるいは、顔だけ)で現れているため、死刑執行人は困惑する。切り離すべき胴体が無いのでは、首なんて切れません。頭があるのだから切ることはできるであろう、たわけたことを言うでない。王はなんとかしろと死刑執行人に迫る。それでも死刑執行人は納得しない。いいかげん癇癪を起こし始めた女王は、さっさとやらねば誰彼かまわずみな処刑するぞと言いだす始末(■ ,■ )。チェシャ猫の飼い主である公爵夫人を牢からお出しして話を付けていただけばよろしいのではとアリスが提案すると、女王はこの助言を受け容れた。しかし、公爵夫人が到着したころには、肝心のチェシャ猫は姿を消してしまっていた。
grin like a Cheshire cat
1577年に作成されたチェシャー地方の古地図
「チェシャ猫が姿を消した後、ニヤニヤ笑いだけがそこに残った。」という
可視化 困難な文章を、テニエルはこのように表現した。眼と口周りの白っぽい部分だけを残して体は鬱蒼と繁った木の葉に紛れて消えかかっている。
1780年代 に初出 した "grin like a Cheshire cat " という英語表現がある[1] 。これは「チェシャー の猫(あるいは、チェシャ猫)のように、歯を見せてニヤニヤ笑う」「むやみにニヤニヤ笑う[1] 」「歯茎 を出して笑う[1] 」「訳も無くニヤニヤ笑う[1] 」などという意味で、"cat" を省略する形もある[1] 。例えば "He grins like a Cheshire cat." と言えば「彼は訳も無くニヤニヤ笑う。」などといった意味になる。
チェシャー 地方で生まれ育ったキャロルが作品を書いた当時、この慣用句はありふれた表現であった。この慣用句の由来についてははっきりしないが、オックスフォード大学出版局 の学術雑誌『ノーツ・アンド・クエリーズ (英語版 ) (Notes and Queries ) 』では1850年から1852年にかけて盛んに議論されており、そこで提示されていた説には次のようなものがある。
上記の説を紹介しているロジャー・グリーン (Roger Greene) は3番目が最もそれらしいと述べている。
また、アリス・リデル の家系であるリデル家の紋章 は3頭のライオン像 であった。初代レイヴンスワース男爵 (1st Baron Ravensworth ) ヘンリー・リデル (1708 -1784 ) が1747年 に成立させたリデル家の紋章に、クレスト に立つ1頭のライオン・ランパント と、サポーター (シールド を支える役)として相対する2頭のライオン・ランパントが描き込まれている[注 2] 。[注 3]
『ルイス・キャロル伝』(1979年)の著者アン・クラーク(1933 - 。のちのアン・クラーク・エイモア、cf. )は、チェシャーの州都 チェスター に住んでいたジョナサン・キャザレルという人物に関する説を紹介している。キャザレルの紋章には猫が1304年 という年号とともに描かれており、キャザレル自身は怒ると "grinning " をする癖 があった。つまり、歯を剥き出してニヤニヤ笑うような顔をする癖があった。チェシャーチーズが猫の形をしていて、その猫が grinning している(ニヤニヤ笑いをしている)のは、キャザレルの貢献を讃えて[疑問点 – ノート ] のものであるという。しかし、チェシャー州 の住民が最も好んでする説明は、「チェシャー州には酪農家 がたくさんあり、牛乳 とクリーム が豊富にあるので常に(子供と)猫が笑っている」というものである[8] 。
着想
クランリーの聖ニコライ聖堂にある、猫頭のガーゴイル
ブリティッシュショートヘア
クランリー
イングランド 南部のサリー州 ギルフォード 近郊にあってイギルス最大の村とも称されるクランリー (英語版 ) にある聖ニコライ聖堂 には、猫の頭をかたどったガーゴイル がある。この造形物がキャロルにインスピレーションを与え、チェシャ猫が創出されたともいわれている。■右列に画像あり。
クロフトオンティーズ
何人かの研究者 [誰? ] は、ルイス・キャロルがノース・ヨークシャー州 リッチモンドシャー地区の中心都市リッチモンド (英語版 ) 付近にある「クロフト教会」(行政教区 の村クロフトオンティーズ (英語版 ) にある郡教区教会 『セントピーター教会、クロフトオンティーズ (英語版 ) 』)の教会堂 内部にあった数多くの工芸品 や彫刻 の中に猫の造形物があり、そこからチェシャ猫のキャラクターを着想したという説を唱えている。ほかにも、この教会堂にあった造形物は『鏡の国のアリス 』に登場する怪物ジャバウォック のキャラクター創出のヒントの一つにもなったといわれている。ルイス・キャロルこと本名チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン (1832-1898) の父であるチャールズ・ドジソン (英語版 ) (1800-1868) の長男 [信頼性要検証 ] は、1843年から1868年にかけてこの地方の教区 牧師 を勤めており、キャロル自身も1843年から1850年までこの地で生活していた[11] 。
ブリティッシュショートヘア
猫の一品種 であるブリティッシュショートヘア は、グレートブリテン島 原産 種の中で最も歴史があると考えられている。キャロルも目にしていたであろうこの猫の佇まいはチェシャ猫を彷彿とさせる。キャット・ファンシアーズ・アソシエーション (英語版 ) (CFA)[注 4] は、この猫の面構えがチェシャ猫の笑い顔に似ていることを特徴として認めている。ただ、原著の挿絵 を描いたのはキャロルではなくジョン・テニエル であることから、チェシャ猫の描画上の由来についてはテニエルのほうに求めるべきかも知れない。■右列に画像あり。
月の満ち欠け
チェシャー州 デアズベリー (フランス語版 ) (ダーズベリー)のオールセインツ教会 (en ) を飾るステンドグラス の一部分 / 作者が生まれたこの町の教会堂 にあるステンドグラス窓はキリストの降誕 を描いているが、最下段の枠で『不思議の国のアリス』の登場キャラクター達を採り上げており、チェシャ猫が中空に頭だけで現れたシーンを描いているこの部分もそのうちの1図である。
アリスの注釈 者であるマーティン・ガードナー は、キャロルが月の満ち欠け からチェシャ猫のキャラクターを着想したのではないかという説を紹介している。月の満ち欠けは昔から狂気 と結びつけて考えられてきたものであり、また、三日月 の形はニヤニヤ笑う口の形そのものである。
チーズに化けた猫
精神分析学 者フィリス・グリーンエイカー (英語版 ) (1894-1989) は、精神分析的研究書『Swift and Carroll: A Psychoanalytic Study of Two Lives 』(1955年 刊)で、チェシャ猫のキャラクターは「チーズに化けた猫が、チーズを喰う鼠 を喰うところを想わせるから、まさにキャロル的な魅力を持つ」と指摘している。
ニヤニヤ笑うカワウソ
『不思議の国のアリス 』(1865年 刊)以前に、同書と同じくマクミラン出版社 から出版されてヒット作となったチャールズ・キングスレー の『水の子どもたち 』(1863年 刊)には、「水中から顔を出したカワウソ がチェシャ猫のようなニヤニヤ笑いを浮かべていた」との旨のくだりがある。『不思議の国のアリス』を出版する際、その版形は『水の子どもたち』に倣って決められている。チェシャ猫のキャラクターとそのエピソードは、『不思議の国のアリス』を正式に出版する際に付け加えられたもので、物語の原型である手書き本の『地下の国のアリス 』には登場しない。
翻案
アリス・シリーズの翻案 作品としての映像作品は、初の映像作品である1903年 公開の映画『不思議の国のアリス 』を初めとして数多くが知られている。最古の作品はフィルムが現存しないものの、映像の大部分はデジタルアーカイブ されている。
ディズニー
『ふしぎの国のアリス』
1951 film Sterling Holloway
ウォルト・ディズニー・カンパニー 製作のアニメーション映画 『ふしぎの国のアリス 』(1951年 公開)に登場するチェシャ猫は、日本語でも「チェシャ猫 」と呼ぶことが多いが、ウォルト・ディズニー・ジャパン は21世紀に入ってから「チシャ猫 」という名前をグッズ展開などで広く用いるようになり、こちらの名称で記憶するファンや取材者が増えた。その結果、取材記事などでも「チェシャ猫(チシャ猫) 」という表記が散見されるようになった。ただし、「チシャ猫」という名称がディズニー関連でしか通用しないことは言うまでも無い。ここで「日本の」という限定詞を付けないのは、英語圏 でのグッズ展開でも "Cheshire Cat (Chishia Cat) " および "Chishia Cat " という名称が見られるからである[16] 。日本初の商品展開である可能性は否めない[17] 。
チェシャ猫の声はスターリング・ホロウェイ が担当した。
胴体が紫色 系の横縞模様 (赤紫 系のピンク と青紫 のツートンカラー。日本語版公式ウェブサイトの解説ではピンクと菫色 〈すみれいろ 〉のツートン[18] )で頭部が赤紫という個性的なショッキングカラーの毛並みをした[19] 、相当に擬人化 された猫として描かれている。原作や後述する実写映画と決定的に違うのは歯 の描き方で、本作のチェシャ猫は、鋭い牙 ではなく人間と同様の剥き出しにしてもギザギザにならない平らな歯をもっている。胴より少し小さい程度の大きくて太い尾[19] も原作とは異なる特徴の一つで、杖 のように使ってもいる[19] 。原作同様に飄々としていて、悪戯 っぽいところも変わりないが、知的なキャラクターであり、アリスに助言を行う一方で、わざとトラブルに引き込んだりもするトリックスター の性格を強めている(原作でもトラブルに巻き込んではいるが、わざとではない)。神出鬼没で、顔 だけで現れたり、縞模様だけ残して消えたりできる[19] 。漫画 表現として、自分の顔をバラバラに分解することまで可能[20] 。
主人公でないにもかかわらず、ディズニーのキャラクタ-の中でも高い人気を保ち続けているものの一つである[19] 。特に女性に人気がある[19] 。飄々としているところや個性的な色合いが好まれており、グッズの新作が着実に開発され続けている。本作の主役 であるアリスを差し置いてグッズ化されることも珍しくない。2010年代および2020年代、東京ディズニーランド の大人気イベントの一つであるエレクトリカルパレード・ドリームライツ には、巨大なチェシャ猫のフロート車 が登場する(チェシャ猫がフロート車になっていて、最上部にアリス役の演者が乗る[20] [19] [注 6] )。また、ディズニーランド・パリ と東京ディズニーリゾート では、パレード やグリーティング にチェシャ猫が登場する。以前は世界のディズニーパーク で唯一パリにだけ登場していたが、2018年(平成30年)11月からは東京でもグリーティングが始まった[19] 。
『アリス・イン・ワンダーランド』
ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ 製作、ティム・バートン 監督による、実写 映画『アリス・イン・ワンダーランド 』(2010年 公開)に登場するチェシャ猫は、クレジットタイトル 上も、英語版 "Cheshire Cat " 、日本語版「チェシャ猫 」であるが、劇中では「チェシャー (Chessur )」と呼ばれており、ファンダム でもこちらの名前が通用している[23] 。
チェシャーの声はスティーヴン・フライ が担当。声色は中年男性の野太いもので[24] 、落ち着きと威厳が感じられるキャラクターとなっている。
2010 film : Stephen Fry
2016 film Stephen Fry
CG で描かれたチェシャーは、口が極限まで強調されており、普通に笑っていても目尻の高さまで裂けているのが、大きく笑うとさらに口角が上がり、眼の位置を越えて耳に届きそうな所まで達する。つまり、原作の文章表現を忠実に映像化している。加えて、口の中は普通の哺乳類 ではあり得ない異常な数の三角錐 形の歯が並んでいて、それを頻繁に剥き出しにするため、非常に怪しく凶暴そうな見た目になっている[25] [24] 。しかし、全体的にはいかにも猫という感じのキャラクターである[25] [24] 。体格は19歳に成長しているアリス(演者:ミア・ワシコウスカ )より一回り小さい程度、体重(※あればの話)では上回っているように見えるほどの大きさで、また、胴に比べて頭が大きい[24] 。毛並みは原作と同じ虎猫 系ではあるが、茶虎(ちゃとら。orange tabby;オレンジタビー;明るい茶色系と白色が繰り返される横縞模様)であったオリジナルに対してこちらは鯖虎(さばとら。白勝ちの silver mackerel tabby;シルバーマッカレルタビー;灰色 を主に白色と黒色が少し混ざった横縞模様)で、縞模様 の薄い所は不思議に青白い光を湛えている[24] 。原作に無かった描写として、アリスと会話するシーンで頭だけになり、中空で上下逆さまになって見せたりしている[24] 。
夜に鬱蒼とした森の中をひとり歩いていたアリスの前に現われたチェシャーは、バンダースナッチ に引っかかれてできたアリスの腕の傷を手当 した後[24] 、彼女が会うべきマッドハッター(※原作のマッドハッター〈帽子屋〉 に相当するが、本作では主人公 。演者:ジョニー・デップ )の居場所を教えて去る。白の女王 を裏切ったとしてマッドハッターから非難されたチェシャーは、マッドハッターが断頭台 で首を刎ねられようとしていた時にはマッドハッターに化けて彼の窮地を救っている[25] 。
『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』
2016年 に公開された『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 』は『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)の続編である。監督はジェームズ・ボビン が務め、前作のティム・バートン 監督は製作および製作総指揮 を務めた。原題は原作の2作目『鏡の国のアリス』と同じであるが、内容は前作のキャラクターや原作に無いキャラクターも多数登場する。チェシャーの声は前作と同じくスティーヴン・フライが担当。
本作はアリスが時間を遡って活躍する物語になっており、原作でも過去作でも描かれて来なかったチェシャーの仔猫時代が描かれた。仔猫のチャシャーは「ベイビーチェシャー (Baby Chessur)」と呼ばれている。
その他の映画
1985 film Telly Savalas
1999 film Whoopi Goldberg
子供向けのテレビ映画『不思議の国のアリス』(1985年 公開)は、アーウィン・アレン ・プロダクション製作の、ハリー・ハリス 監督作品。主演のアリス役はナタリー・グレゴリー (英語版 ) 。チェシャ猫の声はテリー・サバラス が担当。2部構成のテレビ向けのアドベンチャーファミリーファンタジーミュージカル映画 である。
子供向けのテレビ映画『アリス・イン・ワンダーランド/不思議の国のアリス 』(1999年 公開)は、ニック・ウィリング (英語版 ) 監督作品。アリス役はティナ・マジョリーノ であるが、主演ではない。チェシャ猫の声はウーピー・ゴールドバーグ が担当。テレビ局が製作した映画であり、最初にNBC で放送された後、チャンネル4 でも放映された。
ゲーム
『歪みの国のアリス 』は、サンソフト 内のGセクション部が製作した携帯電話 向け・ホラー 系のテキストアドベンチャー ・コンピュータゲーム である。本作でのチェシャ猫は、纏ったローブ のフード を深く被って、裂けた口だけを覗かせる、不気味な謎の男として登場する。
『ハートの国のアリス〜Wonderful Wonder World〜 』は、2007年 (平成19年)2月14日 に日本のQuinRose から発売されたパソコン 用女性向け 恋愛アドベンチャーゲーム で、『不思議の国のアリス』をモチーフとしたシリーズの第1作である。乙女ゲーム に属する本作では、チェシャ猫も「ボリス=エレイ」という名前の人間型の美少年 として登場する。
その他の影響
視覚装置
米国カリフォルニア州 のサンフランシスコ にあるエクスプロラトリアム では[26] [27] [28] 、ロバート・ラリュー・ミラー(ボブ・ミラー、Robert Larue (Bob) Miller)[29] とサリー・ダンシング (Sally Duensing, 1949-2015) [30] によって1978年 に開発された光学 的錯視 をテーマとした視覚装置 "Cheshire Cat" が長年に亘って展示され続けている[27] 。観察者は鏡を仕込んだ接眼レンズ を装着し、それからチェシャ猫の顔を描いた絵を見る[28] 。すると一方の眼にはチェシャ猫が見え、もう一方の眼には脇にある白いスクリーンが見える[28] 。
Galaxy cluster SDSS J103842.59+484917.7 "The Cheshire Cat" "The Smiley"
LSDのブロッティングペーパーにデザインされたディズニーアニメのチェシャ猫
「チェシャーキャット」を屋号 とする伝統玩具 の商店の看板 / 北アイルランド はダウン県 のヒルズバラ (en ) にて1976年創業[32] 。
小惑星
1990年 (平成2年)に日本の名取亮 と浦田武 が発見した火星横断小惑星 は、"6042 Cheshirecat "(日本語名:6042 チェシャーキャット)と命名された。
銀河団
2015年 11月23日 、アメリカ航空宇宙局 (NASA) は宇宙望遠鏡科学研究所 (STScI) の運用するチャンドラX線観測衛星 によってX線光学撮影された数多くの画像をハッブル宇宙望遠鏡 の可視光線 観測データとともに[31] [33] 一般公開したが、その中に「笑顔に見える」銀河団 SDSS J103842.59+484917.7 が発見された[34] [35] [36] [37] 。この天体 は、チェシャ猫の顔やスマイリーフェイス (ニコちゃんマーク)に似ているということから、"The Cheshire Cat "(日本語ではチェシャ猫銀河群 )および "The Smiley "(スマイリー)の愛称 で呼ばれるようになった[34] [35] [36] 。おおぐま座 の中にあり[35] [33] 、-23.63等級 という極めて暗い見た目をしている[35] 。
遠い宇宙にいるこのチェシャ猫の正体であるが、以下のようなことである[34] [33] 。2つの巨大な楕円銀河 が観測者の座標 からは両の眼に見え ("eye" galaxies)、ちょうど2つの間に鼻に見える小さな銀河 ("nose" galaxy) がある[34] [35] 。円い顔の輪郭と笑っている口を形作っている複数の弧 は、"eye" galaxies の遥か後方に位置する4つの銀河の発する光が "eye" galaxies など手前にある銀河群の重力質量 の総分布の莫大さがもたらす重力レンズ 効果を受けた結果生み出されている、約46億光年 先の空間 の歪みによる環 である[34] [35] 。このような環は「アインシュタインの環 (英語版 ) ;アインシュタインリング」と呼ばれている[31] [33] 。
この銀河団で最も明るく光っている "eye" galaxies は、時速 約30万マイル (約48万キロメートル )で激しく衝突しており、ガス が摂氏 数百万度にまで熱せられている[34] [35] 。さらに、左眼に見える銀河の中には超大質量ブラックホール が含まれているという[34] [35] 。"eye" galaxies は10億年以内には合体し、1つの巨大な銀河と無数の小さな銀河の集まりになると推定される[34] 。この銀河団は化石銀河群 が形成される途上を示している可能性があり、それが事実であればますます稀少な観測対象である[34] 。
音楽
アメリカのパンクバンドであるブリンク 182 のデビュー・スタジオアルバムは『チェシャー・キャット 』(1994年)である。チェシャ猫はメンバーのトム・デロング の好きなキャラクターであるという。
ゲーム
セガ のテレビゲームソフト 『ベヨネッタ 』(2009年)では、ルカというキャラクターが、鉤爪 のフックを使って様々な場所に出現するために、主人公のベヨネッタから「チェシャ」と呼ばれる。
薬物
欧米では、禁止薬物でもある幻覚剤 「LSD 」の水溶液を染み込ませた紙片 (LSD blotting paper) に、ディズニーのアニメ映画『ふしぎの国のアリス 』に登場するチェシャ猫の顔をデザインしたものが出回っている(もしくは、出回っていた)という[39] 。■右列に画像あり。
チェシャー猫症候群
チェシャー猫症候群 (チェシャーねこ しょうこうぐん)、チェシャーキャットシンドローム (英: Cheshire Cat syndrome )とは[40] 、症状があるのに病理的所見が無いか、病理的所見があるのに症状が無い、そのような症候群 である[41] 。猫自身はどこかへ去ってしまったのに笑いだけが残っている、そこに笑いが残っているのに笑った猫自身はもうそこにいない、チェシャ猫のそのような特徴になぞらえて命名されている[41] 。
脚注
チェシャ猫をかたどったぬいぐるみ / 1988年頃の作。インディアナポリス子供博物館 所蔵。
注釈
^ の記事に、原作書におけるこの絵の掲載ページの彩色版が画像2として掲載されている。
^ 画像検索用キーワード[ Coat of arms of Henry Liddell (1708-1784), 1st Baron Ravensworth ][ Coat of arms "Henry Liddell" ]
^ なお、タイン・アンド・ウィア にあるレイヴンスワース城 (英語版 ) を本拠とするレイヴンスワース男爵の真の初代であるヘンリー・リデル (1708-1784) のリデル家は早々に断絶しており、1808年 になってトーマス・ヘンリー・リデル (トーマス・リデル卿。1755 -1855 . Thomas Henry Liddell, Thomas Liddell, 1st Baron Ravensworth ) が再興を果たしている。アリス・リデルに直接繋がる血筋は後者である。要するに「初代レイヴェンスワース男爵」と呼ばれる人物は2名おり、「再興の初代レイヴェンスワース男爵」がアリス・リデルのご先祖様に当たる。
^ 血統猫の世界最大のレジストリーであり、北アメリカで最も権威のある血統猫登録協会。
^ 薄暗いシーンのため、色使いは暗色になっている。オフィシャルはこのシーンを色補正した画像も公表している。
^ 画像検索用キーワード[ チェシャ猫 フロート ]
研究者
出典
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参考文献
※ガードナーおよびハンチャーに関して、原著としての洋書とその再版書や和訳書の関係がどのようになっているかについては、略記している当セクションではなく『不思議の国のアリス』の「参考文献」節 と『鏡の国のアリス』の「参考文献」節 に詳しい。
書籍、ムック
ISBN 4-8169-1754-3 、ISBN 978-4-8169-1754-7 、NCID BA59907151 、OCLC 751582702 、国立国会図書館書誌ID :000004008588 。
関連文献
ウィキメディア・コモンズには、
チェシャ猫 に関連するカテゴリがあります。
ISBN 0-823662802 , ISBN 978-0-823662807 , LCCN 55-8236 , OCLC 648404 .
Radmer, Ethel Erickson (06 February 1996). The Cheshire Cat Syndrome: My Adventures With Arthritis . Independently published . ASIN B088T5GJ5S .
関連項目
外部リンク
Cecil Hepworth (Director) (1903). Alice in Wonderland . Hepworth Manufacturing Co. 2008年2月13日時点のオリジナル よりアーカイブ。2020年8月10日閲覧 。
※アリス・シリーズ初の映像作品である1903年 公開の映画『不思議の国のアリス 』は、アーカイブされたデータが公開されている。
※チェシャ猫の登場シーンは、03分04秒~03分36秒(公爵夫人邸。アリスがチェシャ猫を撫でているようであるが、画面が暗すぎて猫は見えない。)と、04分03秒~04分48秒(森の中、ニヤニヤ笑いを残して消えるシーン。)の2か所。
小説と詩 キャラクター 映像作品
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