ジョージアにおける映画の製作は、1910年に技師のアレクサンダー・ディグメロフ(Alexander Dighmelov)がいくつかの短い記録映画を撮影したのが最初とされている[3]。1912年にはヴァシル・アマシュケリ(Vasil Amashukeli)が、ジョージアの詩人、アカキ・ツェレテリが故郷の山岳地帯、ラチャ=レチフミを再訪するドキュメンタリー映画『アカキ・ツェレテリのラチャ・レチフミへの旅(英語版)(The Journey of Akaki Tsereteli in Racha-Lechkhumi)』を製作、これがジョージア最初のドキュメンタリー映画となった[3][4]。
この後いくつかのサイレント映画が製作され、長篇では1918年の『クリスティネ(Kristine)』(監督:アレクサンダー・ツツナワAlexander Tsutsunava)[5]、1921年の『グリャズノフ将軍の殺人(Arsena Jorjiashvili/The Murder of General Gryaznov)』(監督:イワン・ペレスティアニIvane Perestiani)などが重要作とみなされている[1]。
1921年にボリシェヴィキの侵攻を受けてグルジア民主共和国は崩壊、アルメニアやアゼルバイジャンとともにソビエト連邦に組み込まれる[6]。翌1922年にコーカサス地方の映画製作を監督するゴスキノ(英語版)(ソ連国家映画委員会)、1923年には国内でジョージア国家映画協会(The Georgian State Film Institute)が設立されて、国家建設をささえる道具としての映画製作が本格的に開始された[1]。このように、ジョージア映画界はソビエト政権からの支配が強化されていたものの、1920年代後半にはゴスキンプロム(国立映画産業)のもとにニュース映画部、アニメーション映画部が創立された[7]。
1970年代から1980年代、ブレジネフ体制のソビエト連邦は停滞の時代を経験したが、ジョージアの映画にとっては活況の時代であった。1974年、トビリシ演劇大学(英語版)に映画学科が設立[11]。同大学の1期生であったナナ・ジョルジャーゼ(Nana Djordjadze)は、在籍中テンギズ・アブラゼとイラクリ・クヴィリカゼに師事している。また、1979年には映画学科出身の若手らによってスタジオ「Debut」が立ち上げられ、彼らはそこで実験的映画表現を追求した[11]。1985年にソ連でペレストロイカが始まるとジョージア国内の映画製作も活発化し、1987年には第40回カンヌ国際映画祭においてアブラゼの『懺悔(英語版)(Repentance/Pokoyanie)』が審査員特別大賞、ナナ・ジョルジャーゼの『ロビンソナーダ(英語版) (My English Grandfather/Robinsonada)』がカメラ・ドール(新人賞)を同時受賞している[12][13][14]。上述の通り、この時代のジョージア共和国内ではソビエト連邦の映画としては作家性の強い作品が数多く製作されたが、この背景として、当時のグルジア共産党第一書記であったエドゥアルド・シェワルナゼの援護があったとされる[15]。
この時期の作品では、レゾ・エサゼ(ロシア語版)監督(Rezo Esadze)の『屋根または未完成映画素材(The Roof or the Unfinished Film Material/Cheri anu daumtavrebeli pilmis masala)』(2003年)や、レヴァン・ザカレイシュヴィリ監督(Levan Zakareshvili)の『トビリシ・トビリシ(英語版)(Tbilisi-Tbilisi)』(2005年)などが国外で高く評価された[1]。
国際化の時代
1970年代からフランスへ移住して製作をつづけていたオタール・イオセリアーニは、1980年代に『月の寵児たち(フランス語版) (Les Favoris de la Lune)』(1984年)や『そして光ありき(フランス語版) (Et la Lumière fut)』(1989年)がヴェネチア国際映画祭で審査員特別大賞を受賞して国際的な注目を集めた[20]。ジョージア独立後の混乱期には、フランスのTV局で、ジョージアの豊かな歴史と近年の政治的動乱をみつめるドキュメンタリー大作『唯一、ゲオルギア(Seule, Georgie)』(1994年)を製作[21]。『月曜日に乾杯!(Lundi Matin)』(2002年)がベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞して世界的な巨匠とみなされるようになった[20]。
Kepley Jr., Vance. “Federal Cinema: The Soviet Film Industry, 1924-32,” Film History, Vol. 8, No. 3 (1996)
Merrill, Jason ʻBrothers and Others: Brotherhood, the Caucasus, and National Identity in post-Soviet filmʼ, Studies in Russian and Soviet Cinema, 6 (1), 93–111 (2014).
Sarkisova, Oksana. Screening Soviet Nationalities: Kulturfilms from the Far North to Central Asia (2017).
Steffen, James. The Cinema of Sergei Parajanov (2013).
White, Jerry and Dzandzava, Nino ʻThe Cinema of Georgiaʼs First Independence Periodʼ, Film History, 27 (4), 151–82 (2015).
White, Jerry. "The Archival Situation of Georgian Cinema," The Moving Image: The Journal of the Association of Moving Image Archivists, Vol. 14, No. 1 (Spring 2014),
Wilson, Carl ʻArmeniaʼ, in Nelmes, Jill and Jule Selbo (eds.), Women Screenwriters: An International Guide (2015).