シシンギア[1]またはシーシンギア[2](学名:Shixinggia)は、中華人民共和国の広東省始興県から化石が発見された[2]、オヴィラプトル科(英語版)に属する獣脚類の恐竜の属[1][2]。タイプ種Shixinggia oblita(シシンギア・オブリタ[1]あるいはシーシンギア・オブリータ[2])が知られる。全長は約1.5メートル[2]から約2メートル[1]程度と推定されているが、保存部位がごく一部に限られるため解剖学的な情報は少ない[1]。
発見と命名
化石は中国南部に分布する上部白亜系マーストリヒチアン階の坪嶺層(Pingling Formation[3])から産出した[1]。発見は1995年のことであったが、当時南メソジスト大学の博士課程学生であった呂君昌が研究に着手するまで未記載であった[3]。ホロタイプ標本BPV-112は北京自然博物館に所蔵されており、呂の博士論文によれば腰帯付近と部分的な後肢(具体的には3個の後側胴椎、1個のほぼ完全な仙椎、3個の関節した前側尾椎、2本の不完全な肋骨、両腸骨、部分的な右大腿骨、脛骨、腓骨、第IV趾のつま先)が保存されている[3]。
呂は2004年の博士論文においてタイプ種Shixinggia oblitaをオヴィラプトロサウルス類カエナグナトゥス科(英語版)の新属新種として記載し[3]、研究成果はLü and Zhang (2005)として出版された[2]。属名は化石が産出した始興県に由来し、タイプ種Shixinggia oblitaの種小名は「忘れられた」を意味する[2]。
特徴
シシンギアの全長は約1.5メートル[2]から約2メートル[1]と推定されている。呂の博士論文において記相(diagnosis)に用いられている形質状態には、腸骨の寛骨臼前後に存在するpreacetabular process と postacetabular processのいずれもが鈍いこと、またそれらの腹側縁が寛骨臼の背側縁よりも背側に位置すること、preacetabular processがpostacetabular processよりも短いこと、腸骨の前後長に対する背腹高の比が0.39であること、大腿骨近位端の前内側に大型の開口部、脛骨の近位端に比較的小型の開口部が存在することが挙げられる[3]。
postacetabular processが鈍いことと腸骨の背側縁が凸であることは同じくオヴィラプトロサウルス類に分類されるキロステノテスと共通する形質状態であり、他のオヴィラプトロサウルス類と一致しない[3]。呂の博士論文の系統解析においてキロステノテスとシシンギアは姉妹群を構築しており[3]、この形質状態は両者の共有派生形質とされた[3]。
分類
シシンギアは呂の博士論文においてカエナグナトゥス科(英語版)に分類され、系統解析では厳密合意樹上でキロステノテスとの姉妹群をなした[3]。出版された論文であるLü and Zhang (2005)ではオヴィラプトル科(英語版)として分類されており[2]、後続研究の系統解析でもオヴィラプトル科の分岐群に位置付けられている[4][5]。オヴィラプトル科はキチパチにより近縁な分岐群(Citipatiinae)とヘユアンニアにより近縁な分岐群(Heyuanniinae)とに大きく分かれるが、シシンギアは後者に含まれ、特にコンコラプトルやカーンよりも基盤的な位置に置かれている[4][5]。
以下はFunston et al. (2020)に基づくクラドグラム[5]。
出典