ザ・シネマティック・オーケストラ [ 1] [ 2] [ 3] (英: The Cinematic Orchestra )は、1999年 にジェイソン・スウィンスコーが結成した、イギリス のニュージャズ ・電子音楽 グループである。グループはインディーズ レーベルのNinja Tune に所属している。スウィンスコー以外のメンバーは、DJフード (英語版 ) の元メンバーでターンテーブル (英語版 ) 担当のPC(パトリック・カーペンター)[ 4] [ 5] 、ドラム 担当のルーク・フラワーズ[ 4] 、サクソフォーン とピアノ のトム・チャント[ 3] 、ピアノのニック・ラム (英語版 ) 、コントラバス のフィル・フランス[ 3] である。元メンバーには、トランペット のジェイミー・コールマン、ドラムのT・ダニエル・ハワード[ 3] 、ドラムのフェデリコ・ウーギ (英語版 ) 、ピアノのアレックス・ジェームズ、シンセサイザー とプログラミング を担当していたクリーン・サッドネス、ギター のステュアート・マッカラム(2004年 - 2012年)[ 6] [ 7] [ 8] がいる。スウィンスコーとカーペンターは、「ネプテューン」(英: Neptune )という名前のバンドとしても活動している。
スタイル
音楽はライブ録音 ないしスタジオ収録 で、ターンテーブル (英語版 ) と、スウィンスコーが作成するサンプリング などの電子音楽要素を組み合わせ、生の即興 演奏で収録される。スタジオ・アルバムでは、即興のジャズ 生演奏とエレクトロニカ を組み合わせるために、スウィンスコーが生演奏の音源をリミックス することも多く、そのためどこまでが即興演奏で、どこからが編集済の音源か境目を聞き分けることは難しい。彼らの音楽はダウンテンポ やトリップ・ホップ に分類され、音楽のベースには1960年代から1970年代のジャズ があることが指摘されている[ 3] [ 9] 。
歴史
スウィンスコーは、カーディフ・カレッジ (英語版 ) でファインアート を学んでいた頃、「クラブラダー (Crabladder)」と呼ばれるグループを結成し(1990年)[ 9] 、1枚の公式シングルを自身のレーベル 「Power Tools」から発表した。このグループの音楽は、ジャズ とハードコア・パンク を融合させたもので、スウィンスコーはこの形態を発展させつつ、多くのクラブ や海賊放送 に出演した[ 9] 。
グループとしてのデビュー・アルバムである『モーション (英語版 ) 』は、1999年 に発売された[ 10] [ 11] 。このアルバムが好評を得たことから、グループはディレクターズ・ギルド賞 (英語版 ) 授賞式で、映画監督のスタンリー・キューブリック へ生涯貢献賞が贈られた際のプレゼンテーションで演奏した[ 12] 。
グループは2001年にポルト で開かれた欧州文化首都 祭で、ジガ・ヴェルトフ がソビエト連邦 で1929年に制作した無声映画 『これがロシヤだ 』(『カメラを持った男』)に新しい映画音楽 を付ける試みに招待され、映画を上映しながら生演奏するというパフォーマンスを行った[ 13] 。ポストプロダクション中だった『モーション』収録作品を除けば、生演奏の作品というのは、グループの通常の作風とは一線を画していた。グループはこの作品を引っ提げてツアーを行い、後に同名のアルバム『マン・ウィズ・ア・ムービー・カメラ (英語版 ) 』として発売した(2003年)[ 14] 。この際作られた曲の一部は、2002年発売のアルバム『エブリー・デイ (英語版 ) 』でリライトされた[ 15] [ 16] 。2002年5月には、全英アルバムチャート で54位に入った[ 17] 。ピッチフォーク・メディア のドミニク・リオーンは、アルバムに6.0点を付け、「多くのサウンドトラック と同じように、スクリーン上で起こる出来事をサポートするため、このアルバムでも水平を保ってひどく入り込まないようにした感覚を感じ——結果として、彼らは単独の視聴メディアほどよく働く必要が無くなった」と述べた[ 18] 。
2006年には、レディオヘッド の曲「イグジット・ミュージック (Exit Music (For a Film))」をカバーし、トリビュート・アルバム『イグジット・ミュージック:ソングス・ウィズ・レディオヘッド (英語版 ) 』に収録した[ 19] [ 20] 。オリジナルと比べて、カバー版ではテンポが落とされ、サクソフォーン から始まり、クラシック・ギター 、続いてエレクトリック・ギター のパート、原曲と同じアコースティック・ギター のリズムに乗せる部分と、4つの音色が繋がれている。
2007年5月7日には、アルバム『マ・フラー (英語版 ) 』を発売した[ 21] [ 22] 。このアルバムにはパトリック・ワトソン (英語版 ) やフォンテラ・ベース (英語版 ) 、ルー・ローズ (英語版 ) などがボーカル で参加した曲も収められ、またローズとワトソンが共演した曲も収録された[ 23] 。2008年には、初の来日公演を行った(これ以前の2002年には、フジロックフェスティバル への出演経験がある[ 24] )[ 22] 。スウィンスコーはこのアルバムについて、自身のパリ 生活を反映したものだと語っている[ 23] 。また同じ年には、ディズニーネイチャー の映画『フラミンゴに隠された地球の秘密 (英語版 ) 』のサウンドトラックを担当し、映画は2008年12月15日にフランス で封切られた[ 25] [ 26] 。映画音楽はグループとスティーヴ・マクローリン(英: Steve McLaughlin )の共同制作で作られたほか、2009年9月17日にはイズリントン のユニオン・チャペル(英: The Union Chapel )でロンドン・メトロポリタン・オーケストラ(英: London Metropolitan Orchestra )と共に生演奏を行い[ 27] 、2009年10月1日には、ワイオミング州 で開かれたジャクソン・ホール野生生物映画祭 (英語版 ) で最優秀オリジナル・スコア賞を獲得した[ 28] 。
2010年11月には、ロイヤル・アルバート・ホール で行われた、Ninja Tune の20周年記念ガラ公演で演奏を行った[ 29] 。
2011年には、アバンギャルド 短編映画 に曲を付けるシリーズを制作し、自らキュレーション して、「In Motion」というタイトルの元、ドリアン・コンセプト (英語版 ) やトム・チャント(サックス)、グレイ・レヴェレンド[ 注釈 1] 、オースティン・ペラルタ (英語版 ) とバービカン・センター で演奏し[ 30] [ 31] 、その後、2012年にアルバム『In Motion #1』として発売した[ 32] 。
2016年10月20日には、新作アルバムの発表に先立ち、コンセプト・ソングを発表した[ 1] [ 2] [ 33] 。タイトルは 「To Believe」で、歌手のモーゼス・サムニーがフィーチャリングしている[ 34] 。また、サンダーキャット やジャイルス・ピーターソン 、ジェイムスズー (英語版 ) らと共演するツアーの実施も発表した[ 35] 。『ガーディアン 』紙のインタビューで、スウィンスコーは、新作アルバムはコンセプト・ソングと同じ『To Believe』というタイトルで、2017年初めにリリースされる予定だと明かしていた[ 36] 。
曲の使用例
アルバム『マ・フラー (英語版 ) 』に収録された「トゥ・ビルド・ア・ホーム (英語版 ) 」は、カナダ のシンガーソングライター であるパトリック・ワトソン (英語版 ) がボーカルで参加した一作で、6千万回以上ストリーミング されているほか[ 36] 、多くの映画やテレビ番組で使用されている。2008年には、シーバスリーガル の広告「Live with Chivalry」で使用された[ 37] [ 38] 。また、日本ではキリン 本搾りチューハイのCMに使用された(2016年)[ 39] [ 40] 。2008年には、イギリスのソープオペラ 『ホーリーオークス (英語版 ) 』で、サム・"OB"・オブライエンが旅立つシーンに用いられた。また、映画『トリニダード (英語版 ) 』(2008年)[ 41] 、『パパの木 (英語版 ) 』(2010年)[ 42] [ 43] 、『静かなる叫び 』(2009年、ドゥニ・ヴィルヌーヴ 監督)[ 44] 、2011年の短編映画『ラファ・コンティネンタル』Rapha Continental や『ディス・イズ・ブライトン』This Is Brighton 、『ギミー・シェルター (英語版 ) 』(2013年、ヴァネッサ・ハジェンズ 主演)[ 45] 、『スウィート17モンスター 』(2016年)[ 46] でも使用されている。その他テレビ番組では、『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学 』、『One Tree Hill 』、『クリミナル・マインド FBI行動分析課 』、『アグリー・ベティ 』、『SUITS/スーツ 』、『トップ・ギア 』、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック 』(2017年、シーズン5フィナーレ)、『イーストエンダーズ 』(2016年1月26日放送話)などで使われた。また、2013年8月には、Showtime のドラマ『HOMELAND 』第3シーズンのトレイラーに用いられた[ 47] 。2012年には、サイエンス・コミュニケーター のニール・ドグラース・タイソン が『タイム 』誌読者の質問に答えるビデオ『The Most Astounding Fact』で使用されたが、フリーランス の映像作家 であるマックス・シュリッケンマイヤー(英: Max Schlickenmeyer )が編集してYouTube に投稿したところ、1,100万回以上も再生された[ 48] 。2013年には、車椅子バスケットボール 選手を特集したギネス の広告で使用された[ 49] 。また、ニューヨーク のスカイラインを前にダスティン・ホフマン が出演する、スカイ・アトランティック (英語版 ) のイギリス版コマーシャルでも使用された[ 50] 。またフィギュアスケート 選手のドミトリー・アリエフ 、ケイティ・パスフィールド らがこの曲を使用している[ 51] [ 52] 。
この曲を短く編曲して一部を書き換えた「ザット・ホーム (That Home)」も多数のメディアで用いられており、『ティーン・ウルフ (英語版 ) 』の1話、『SUITS/スーツ』のエピソード[ 53] 、2011年 (英語版 ) サンダンス映画祭 で受賞した『アナザープラネット (英語版 ) 』のトレイラー[ 54] 、ABC のドラマ『重力への挑戦 (英語版 ) 』、2012年の映画『ステップ・アップ4:レボリューション 』のダンスシーン[ 55] 、FOX のダンスコンペ番組『アメリカン・ダンスアイドル 』第7シーズンフィナーレ[ 56] [ 57] で使用されている。
2006年の映画『キダルトフッド (英語版 ) 』(原題)では、アルバム『エブリー・デイ (英語版 ) 』収録の「オール・シングス・トゥ・オール・メン (英語版 ) 」が使用された[ 58] 。またインストゥルメンタル版が、イギリスのテレビドラマ『華麗なるペテン師たち 』で用いられたことがある。この曲もイギリスのソープオペラ『ホーリーオークス』で2009年12月に使われたほか、物理学者のブライアン・コックス がナレーションを行うシリーズ「Wonders of the Solar System」 (en ) のエピソード「Thin Blue Line」で短く使用された。
パブリック・レディオ・エクスチェンジ (英語版 ) のラジオ番組、『ディス・アメリカン・ライフ (英語版 ) 』では、『マン・ウィズ・ア・ムービー・カメラ (英語版 ) 』収録の「ドランケン・チューン (Drunken Tune)」が頻用されている。2012年のテレビゲーム『スリーピングドッグス 香港秘密警察 』では、楽曲「バーン・アウト (Burn Out)」が使用されている。アルバム『イン・モーション#1』のトラック「Entr'acte」の抜粋は、『トップ・ギア』アフリカ・スペシャル(2013年3月10日初放送)の第2部に使用された。「Channel 1 Suite」は、デビッド・ラシャペル が監督し、チャンネル4 で放送された『LOST 』のトレイラーに用いられた。
2010年には、『フラミンゴに隠された地球の秘密 (英語版 ) 』に収録された「Arrival of the Birds」が、ジョルジオ アルマーニ コスメティックス の女性向け香水アクア・ディ・ジョイア(伊 : Acqua di Gioia )のコマーシャルで使用された[ 59] [ 60] 。また2014年の映画『博士と彼女のセオリー 』のラストシーン[ 61] 、コルネット・キューピディティ・シリーズ(英: Cornetto Cupidity Series )の短編映画『トゥギャザー・アパート』(原題、英: Together Apart )でも使用されているほか、フィギュアスケート選手のアダム・リッポン らがスケーティングに使用している[ 62] [ 63] 。
ディスコグラフィ
スタジオ・アルバム
その他のアルバム
シングル
チャート入りしたもの
その他
1999年 - "Diabolus"
1999年 - "Channel 1 Suite"/"Ode to the Big Sea"
2002年 - "All That You Give" (feat. Fontella Bass (英語版 ) )
2002年 - "Man with the Movie Camera"
2007年 - "Breathe"
2011年 - "Entr'acte"
2011年 - "Manhatta"
2012年 - "Arrival of the Birds"
2016年 - "To Believe" (feat. Moses Sumney)
脚注
注釈
出典
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外部リンク