聴衆の前でのキングストン・アポン・テームズ(英語版)のザ・バージでの初めての出演の後、デニーはトム・パクストンの曲などのアメリカに影響を受けたレパートリーや、伝統的なフォークソングを引っ提げて夜にフォーククラブ巡りの活動を始めた[6]。数多くのBBCへの出演の初めてのものは、セシル・シャープ・ハウス(英語版)での1966年12月2日の番組『Folk Song Cellar』で、2曲のトラディショナル・ソング「Fir a Bhata」と「Green Grow the Laurels」を演奏した。
プロとしての最初のレコーディングは、その数か月後の1967年中ごろのサーガ・レーベルでのもので[7]、トラディショナル・ソングと当時恋人だったアメリカ人シンガー・ソングライターのジャクソン・C・フランク(英語版)などの同時代のフォークソングのカバーをフィーチャーしている。これらの曲はジョニー・シルヴォも加わったアルバム『アレックス・キャンベル・アンド・ヒズ・フレンズ(英語版)』およびサンディ・アンド・ジョニー(英語版)』に収録されてリリースされた[8]。これらの曲は1970年のアルバム『イッツ・サンディ・デニー(英語版)』に収録されたが、『サンディ・アンド・ジョニー』からの曲はより完成度の高いボーカルとギター演奏で再録された[8]。サーガの完全なスタジオ録音は、2005年のコンピレーション・アルバム『Where The Time Goes』に収録された[9]。
The Lady Alexandra Elene MacLean Lucas (Sandy Denny) 6·1·47 – 21·4·78
死後のリリース
公式リリース
生前のデニーには熱狂的なファンがいたが、マスマーケットでの成功には至らなかった。しかし、死後数年を経て、デニーの評価は高まっている。ソロやフェアポート・コンヴェンション(1968年、1969年、1974年)、フォザリンゲイ(1970年)とのデニーの珍しい未発表のトラックも納めた、『サンディ・デニー・ボックス(英語版)』と題されたアルバム4枚組のボックスセットが1985年にデニーの寡夫トレヴァー・ルーカス(英語版)とジョー・ボイド(英語版)のプロデュースでリリースされた[30]。これは未発表の素材の大規模な蓄積が存在することを公に示した最初のものだった。その後、これらの録音の一部が1987年にアイランドから『The Best Of Sandy Denny』というタイトルでCD化された。
1987年にはまた、フェアポート・コンヴェンションのVHDドキュメンタリー『It All Comes 'Round Again』がリリースされ[31]、これにはデニーが参加した数曲の録音の抜粋と、バーミンガム大学のアマチュア組織「Guild TV」が撮影した、1974年にデニーが2度目にフェアポートに参加した間にデニーが「ソロ」を歌っている画質の悪いビデオ録画が1曲収録されていた。このビデオのオリジナルテープは行方不明になってしまったようだが、「ライク・アン・オールド・ファッションド・ワルツ」はDVDドキュメンタリー『Sandy Denny Under Review』(下記参照)に収録されており、その他の曲はYouTubeで非常に質の悪い状態で公開されている。
1988年から1994年にかけて、オーストラリアの「Friends of Fairport」は主にトレヴァー・ルーカスの(実際には彼の屋根裏部屋に保管されていた)コレクションの未発表テープを使用した、加入者限定のカセット・コンピレーション・シリーズを発行した。『アティック・トラック(AT)1』(1988年)にはサンディのアウトテイク、数曲のフェアポートの曲および奇妙なおまけが収録され、『AT2』(1989年)はトレヴァー・ルーカスの曲だけで、デニーは収録されていない。『First and Last Tracks』と題された『AT3』(1989年)には1966年から1967年のホーム・デモや希少なラジオ録音とともに1977年11月27日のロンドン、ロイヤルティ・シアターでのデニーの最後のコンサートからの「オーバーダビング前」の9曲(後にギターがオーバーダビングされてCD化された『ゴールド・ダスト』の一部)が納められ、1994年の『AT4: Together Again』は片面にルーカス、もう片面にデニーで構成され、ホーム・デモやスタジオでのアウトテイクおよび1973年のBBCラジオコンサートからの4曲が収録されている。これらの楽曲(18曲)の短く編集したバージョンが、オーストラリアのレーベル、レイヴン・レコード(英語版)から1995年に『Sandy Denny, Trevor Lucas and Friends: The Attic Tracks 1972–1984』と題してCD化された[32]。
1997年、デニー単独でのBBCでの録音がストレンジ・フルート・レコード(英語版)から『The BBC Sessions 1971–1973』と題されてリリースされた。権利関係の問題で、発売当日に販売中止になったので、2007年に包括的なボックスセット『ライブ・アット・ザ・BBC(英語版)』が発売されるまではコレクターズアイテムとして高い人気を得ていた。このリリースに続いて1998年にはデニーのロイヤルティ・シアターの最後の公演が『ゴールド・ダスト〜ザ・ファイナル・コンサート 1977』としてCD化されたが、これは問題のあったオリジナル・テープのバッキングパートを再録音し、オーバーダビングしたものだった。
1999年、アイランド・レコードからリリースされた4枚のソロ・アルバムからこれまでにシングルで発売された17曲を集めた『Listen Listen – An Introduction to Sandy Denny』がアイランドから発売された[33]。
2000年に『サンディ・デニー・アンソロジー』(No More Sad Refrains: The Anthology)がユニバーサル・レコードから発売された。最初に発売された際には、このコンピレーションには『リージ・アンド・リーフ』セッションでの「イージー・ライダーのバラード」、ザ・バンチのアルバム『ロック・オン』収録の「ラーニング・ザ・ゲーム」と「ウェン・ウィル・アイ・ビー・ラヴド」、『Pass of Arms』サウンドトラックの「Here in Silence」と「Man of Iron」、未発表曲「Stranger to Himself」など、数曲の希少な音源が含まれていた。
2002年、未発表だったデニーが出演したフェアポート・コンヴェンションの1974年のアメリカでのコンサートの録音が2枚組CDとしてバーニング・エアライン・レーベルから発売された。1974年5月23日と24日にコロラド州デンバーのエベッツ・フィールドからのラジオ放送を元にしたCDは『Before the Moon』と題された。2枚目のディスクは、このコンサートの2日目の演奏曲目からなる限定的なボーナストラックだった。この録音は2011年に1枚のディスクに縮められて『Fairport Convention with Sandy Denny: Ebbets Field 1974』と題されて再発売された。
2002年にはまた、アメリカのA&Mレコードが、低価格のコンピレーション・シリーズ「20th Century Masters」シリーズとしてデニーのスタジオ・アルバムからの10曲を納めた『The Best of Sandy Denny』を発売した。
2004年には、多くの未発表録音が収録された2つ目の包括的なCD5枚組ボックセットがフレッジリング(英語版)レコードから『
A Boxful of Treasures』として発売されたが[34]、特にバイフィールド(英語版)の自宅で録音されたアコースティック・デモのディスクはファンや、デニーのソロ演奏は作品を最高の形で表現し、デニーのボーカルスタイルと作品の質を明らかにしていると以前から主張している評論家の間でも高く評価されている。2004年にはまた、スペクトラム・レーベルから、スタジオ録音と、『ゴールド・ダスト』ロイヤルティ・コンサートからの抜粋が含まれた、過去にリリースされた曲を集めた『The Collection: Chronological Covers & Concert Classics』と題された16曲入りのコンピレーション・アルバムが発売された。
2005年、デニーの全てのソロ・アルバムのリマスター版がボーナストラック付きで発売された。2005年にはまた『Where the Time Goes: Sandy '67』と題された、サーガでのデニーのアルバムの全ての楽曲(『イッツ・サンディ・デニー(英語版)』の別テイクを含む)と、自分で伴奏したストローブスでの2曲を収録した1枚のコンピレーションCDがキャッスル・ミュージックからリリースされた[35]。
デニーの同時代人へのインタビューと、デニーのスタジオ録音からの抜粋、上記でも述べられているバーミンガム・大学でのフェアポートの低画質の2曲やドイツのテレビ番組『Beat-Club』でのフォザリンゲイでの2曲(詳細は下記)およびBBCの番組『One in Ten』で残された3曲のソロ演奏の抜粋などのビデオクリップが収録された『Sandy Denny Under Review』と題されたドキュメンタリーDVDが2006年にセクシー・インテレクチュアル・レーベルから2006年にリリースされた。
2回のコンサート全体(1972年のパリス・シアターと1973年の番組『Sounds on Sunday』)と1966年から1973年にかけてのその他の素材全般を含むデニーによる(実質的に)全てのイギリスの放送局でのソロ・レコーディングを収録した4枚組のボックスセット『ライブ・アット・ザ・BBC(英語版)』が2007年9月に発売された[36]。このセットのディスク3はディジタル化されたデニーの日記から抜粋、希少な写真およびディスコグラフィーとともに、「ザ・ノース・スター・グラスマン・アンド・ザ・レイヴンズ」、「クレイジー・レイディ・ブルース」および「レイト・ノーヴェンバー」のデニーによるソロ演奏のBBCの1971年の番組『One in Ten』でのセッションの残されていたテレビ録画が収録されたDVDとなっている。その後、『The Best of the BBC Recordings』と題されたボックスセットのディスク1枚からなるサブセットが2009年に発売された。
上記の限定版のCD19枚組セットの前例のない需要と、それに対する供給の枯渇から2012年10月に『The Notes and The Words: A Collection of Demos and Rarities』と題された、「ボックスセットからの希少なもの、デモおよびアウトテイクの精華を表す75曲」が収録された、CD4枚組の限定版が発売された[49]。3500セット限定のこのコンピレーションも現在は廃盤である。
2013年、スペクトラム・レコードは、デニーのよく知られているアルバムからの、すでに公開されている15曲を集めた『The Lady – The Essential Sandy Denny』と名付けた1枚のCDを発売した。
フォザリンゲイの回顧的な4枚組『Nothing More: The Collected Fotheringay』は2015年3月30日に発売された。これはグループの録音素材の最も包括的なコンピレーションであり、『フォザリンゲイ』および『フォザリンゲイ2』の全曲の最終的なスタジオバージョンに加えて、デモテイクおよびオルタネートテイク、1970年のロッテルダムのコンサート全体のライブ録音(これまで未発表だった楽曲を含む)、BBCラジオでの7曲のフォザリンゲイの楽曲(これまでは海賊版でのみ)および1970年にドイツの『Beat-Club』テレビシリーズでフォザリンゲイが演奏した4曲(デニーの数少ない既知のテレビ映像を大幅に補強するもの)が収録されている。
2016年5月に、過去に発売されたが散逸していた、アルバム収録曲のアコースティックバージョンやデモバージョンが多数収録されている他、単発的なバンドザ・バンチによる1972年の『ロック・オン』セッションから3曲の未発表デモ(リンダ・トンプソン(英語版) - 当時はリンダ・ピータース - との共演)も収録された2枚組のコンピレーション『I've Always Kept A Unicorn – The Acoustic Sandy Denny』がリリースされた。
『Come All Ye – The First 10 Years』と題された、2017年7月に発売されたフェアポート・コンヴェンションの7枚組CDボックスセットには、1968年から1969年にかけてバンドに1回目の在籍をしていたデニーの未発表デモや、別テイクが少数ながら追加収録されている。未発表の楽曲としてはジョニ・ミッチェルの「イースタン・レイン」のカバー、「ノッタムン・タウン」のアカペラ・バージョン、「オートプシー」と「時の流れを誰が知る」の別テイク、「ザ・デザーター」のリハーサル・バージョンなどが含まれている。
非公式のリリースと聴衆による録音
以上の公式の素材に加えて、数多くの非公式で許可を得ていないコンピレーションと、さまざまな品質の幅広い聴衆による録音が存在し、これらはいずれも商業的な問題として日の目を見ることはないだろうが、デニーの聴衆の一部にとっては、歴史的あるいは美的な理由から興味のあるものであり、しばしば商業的にリリースされたバージョンでしか知られていない曲の別の見方を提供している。1980年代と1990年代に入手可能になった無許可の海賊版CDは『Borrowed Thyme』『Poems from Alexandra』『Dark the Night』『Wild Mountain Thyme』などのタイトルで、主に放送されていない曲やその他の無名の曲で構成されていたが、このようなコンピレーションは、その後、上述のように放送されていない曲のほとんどが公式のリリースとしてより良い品質で入手できるようになったことで、ほとんど取って代わられた。
デニーの娘のジョージアは公開のフォーラムで母親について語ることは珍しく、2000年代半ばには『ライブ・アット・ザ・BBC』のライナーノーツを書かないかという誘いを断っている[26]。しかしながら、2006年にオーストラリアからイギリスに渡航し、母親に代わってフェアポート・コンヴェンションの『リージ・アンド・リーフ』に贈られたBBCラジオ2フォーク・アウォードの「史上最も影響力のあるフォーク・アルバム」賞を受賞した[50]。ジョージアは1997年4月29日に双子の娘を出産し、子供たちを称えてサンディ・デニーのかつてのバンド仲間や友人が多数参加したトリビュート・アルバム『Georgia on Our Mind』が編纂された[51]。ジョージアは母親の記憶に捧げられたFacebookのページ「Sandy Denny and Family」の管理者であり、近年ではジョージア・カット名義で自身のDJ系のアルバムをリリースしている[52]。
トリビュート
デニーの死後、多数のデニーへのトリビュートが音楽と、それ以外で作られた。フェアポート・コンヴェンションのデイヴ・ペッグ(英語版)は、自身の1983年のソロ・アルバム『The Cocktail Cowboy Goes It Alone』にトリビュート曲「Song for Sandy」を録音した。ストローブスのデイヴ・カズンズ(英語版)は、デニーの死後すぐにデニーを偲んで「Ringing Down the Years」を作った。よりデニーの死に特化した楽曲としては、バート・ヤンシュの 「Where Did My Life Go」や、リチャード・トンプソンの「Did She Jump or Was She Pushed?」がある。ブリテッシュ・フォーク仲間のスプリガンズ(英語版)は、レコーディング中にデニーの訃報に接した1978年のアルバムのタイトルを『Magic Lady』へと変更した[53]。1998年にワスレグサの品種がサンディ・デニーにちなんで名付けられた[54][55]。
BBC Radio 2の『The Sandy Denny Story: Who Knows Where the Time Goes』など、いくつものデニーの生涯と音楽についてのラジオ特番が製作された。2007年、デニーの楽曲「時の流れを誰が知る」がBBC Radio 2の2007年フォーク・アウォードで「史上最高のフォーク曲」を受賞した[57]。2010年、デニーはNPRの特別シリーズ50 Great Voicesに選出された[58]。
その翌年の12月に、ベロウヘッド(英語版)のメンバーで構成されるバンドとともに「The Lady: A Tribute to Sandy Denny」と題した、より大規模なトリビュートがサウスバンク・センターのクイーン・エリザベス・ホール(英語版)で開催され、ジム・モレイ(英語版)やリサ・ナップなどの若いフォークアーティストが、デイヴ・スウォーブリックやジェリー・ドナヒューなどのデニーと一緒に働いていたミュージシャンとともに参加した。これらの公演にはフォークジャンル以外からもP.P.アーノルドやマーク・アーモンドなどが参加した。主としてデニーによって作られた曲をフィーチャーしたこのコンサートは、ザ・ガーディアン紙のレビューで星4つを受けた[59]。2012年5月にサウスバンク・コンサートは「The Lady: A Homage to Sandy Denny」と題されて、8回公演の全英ツアーに拡大された[60]。このツアーは、フェアポート・コンヴェンション、フォザリンゲイ、ソロ活動およびティア・ギルモアがアルバム『Don't Stop Singing』で完成させた曲の総合的なソングブックの展示となっていた。
バンドは再びベロウヘッドのメンバーで構成されていた。その他には上述のティア・ギルモアをはじめ、トレンブリング・ベルズ(英語版)のラヴィニア・ブラックウォール、ブレア・ダンロップ(英語版)とサム・カーター(英語版)などの新進気鋭のフォーク・アーティストや、マディ・プライヤー、デイヴ・スウォーブリックおよびジェリー・ドナヒューといった著名なフォーク・スターが出演していた。さらにグリーン・ガートサイト(英語版)、ジョーン・ワッサー(英語版)(ジョーン・アズ・ポリス・ウーマンとして知られる)やP.P.アーノルドといった、普段はフォーク・シーンに関わらない出演者も参加していた。このツアーは好評を博し、タイムズ紙では星4つのレビューを獲得した[61]。バービカンでのロンドン公演はBBC4向けに録画され、『The Songs of Sandy Denny』と題された90分の番組として、2012年11月に放送された[62]。
^Brian Hinton and Geoff Wall, Ashley Hutchings: The Authorised Biography – The Guv’nor and the Rise of Folk-Rock, 1945–1973. London: Helter Skelter, 2002, p. 111.
^Neill, Andy; Kent, Matt (2007). Anyway Anyhow Anywhere: The Complete Chronicle of The Who 1958-1978. London: Virgin Books. pp. 310, 313-314. ISBN978-0-7535-1217-3