グッドナイト・ウィーン
『グッドナイト・ウィーン』(英語: Goodnight Vienna )は、リンゴ・スターが1974年11月に発表した4枚目のスタジオ・アルバムである。
1992年にCDで再リリースされ、ボーナス・トラック3曲が収録された。
解説
制作に至る経緯
1974年6月、当時ロサンゼルスにいたスターは、4月まで毎晩のように一緒に飲み歩いていた旧友ジョン・レノンとハリー・ニルソンがレコーディングのためニューヨークに行ってしまった[注釈 1]ので、1年ぶりに自分も新しいアルバムの制作をすることにした。前作『リンゴ』同様、プロデュースはリチャード・ペリーに、レノンらには楽曲提供やレコーディングへの参加を依頼した。
アルバム『心の壁、愛の橋』のレコーディングの準備を進めていたレノンは「グッドナイト・ウィーン」を書き上げ、セッション・ミュージシャンとデモを録音してスターのもとに届けた。またプラターズのヒット曲「オンリー・ユー」のカバーをスターに提案し、スターがフォローできるようにガイドボーカルとアコースティック・ギターの演奏を含むベーシックトラックを提供した。エルトン・ジョンもバーニー・トーピンとの共作で「スヌーカルー」を提供、ハリー・ニルソンは「イージー・フォー・ミー」を提供した[注釈 2]。
レコーディング
8月、クラウス・フォアマンやジム・ケルトナーなど主要メンバーが『心の壁、愛の橋』のセッションに参加していたので、その終了を待って本格的なレコーディングを開始した。セッションにはジェシ・エド・デイヴィスやビリー・プレストン、デイヴィッド・フォスター、ニッキー・ホプキンス、後にリンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンドにも参加したドクター・ジョンなど有名ミュージシャンが集結した。レノンも8月下旬にロサンゼルスを訪れ、セッションに参加した。
リリース
アルバム・タイトルはレノンの提供曲「グッドナイト・ウィーン((It's All Da-Da-Down to) Goodnight Vienna)」から取られた。「Goodnight Vienna」はレノンやスターの故郷リバプールなどイングランド北方の俗語で「ずらかるぞ (I'm getting out of here.)」という意味である[注釈 3]。なお、原題の "Vienna" はオーストリアの首都 "Wien" の英語名であり「ヴィエナ」と発音する。邦題の「ウィーン」は元々ドイツ語の「Wien」をローマ字式に読んだ、実際の発音とは異なった、日本でのみ使われているカタカナ言葉である[注釈 4]。
アメリカでは11月18日に発売された。折しも元ビートルズのメンバーの作品が相次いでリリースされて話題となっており[注釈 5]、1週間前に先行発売されたシングル「オンリー・ユー」も好評だった[注釈 6]ため、大ヒットした前作『リンゴ』には及ばなかったものの、翌年1月11日にビルボード・アルバムチャートで8位に到達した。一方、イギリスでは11月15日にシングル「オンリー・ユー」と同時に発売されたが、30位までしか届かなかった[注釈 7]。
このアルバムのテレビCMは、スターを乗せてロサンゼルス上空を飛ぶ円盤がハリウッドのキャピトル・レコード・ビルの屋上に着陸する、というものであった。『心の壁、愛の橋』のCMでスターがナレーションを引き受けてくれたお返しにレノンがナレーションを担当し、最後にスターが「Thank You, John」とお礼を述べている。
1992年に初めてデジタル・マスタリングを行ったCDが発売された。ボーナス・トラックとして1972年リリースのシングル「バック・オフ・ブーガルー/ブラインドマン」とアルバム『リンゴ』のテスト盤・プローモション盤に収録されていた「シックス・オクロック(エクステンデッド・ヴァージョン)」の3曲が収録された。
なお、このアルバムには 4チャンネルステレオ・ミックス・ヴァージョンが存在しており、アメリカのみで8トラック・カートリッジがリリースされた[11]。
アートワーク
アルバムのアートディレクションはロイ・コハラ[注釈 8]が担当した。アルバム・ジャケットの表面は、1951年のアメリカSF映画『地球の静止する日』のスチール写真を基に、ロボット・ゴートの後ろに立っているマイケル・レニー演じる宇宙人クラトゥの姿にスターの頭を重ね合わせ、胸には星マークをあしらったものになっている。これは、スターがニルソンの自宅に飾られていた同映画のロビーカードを見つけたことに端を発している。インナースリーブのフォトモンタージュには、エンジニアのラリー・エメライン[注釈 9]が撮影したセッション風景の写真が使われた。
収録曲
オリジナル・アナログ・LP
1992年再発盤
CD# | タイトル | 作詞・作曲 | 時間 |
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1. | 「グッドナイト・ウィーン」((It's All Down to) Goodnight Vienna) | ジョン・レノン | | 2. | 「オカペラ」(Occapella) | アラン・トゥーサン | | 3. | 「ウー・ウィー」(Oo-Wee) | ヴィニ・ポンシア, リチャード・スターキー | | 4. | 「ハズバンズ・アンド・ワイブス」(Husbands and Wives) | ロジャー・ミラー | | 5. | 「スヌーカルー」(Snookeroo) | エルトン・ジョン, バーニー・トーピン | | 6. | 「オール・バイ・マイセルフ」(All By Myself) | ヴィニ・ポンシア, リチャード・スターキー | | 7. | 「コール・ミー」(Call Me) | リチャード・スターキー | | 8. | 「ノー・ノー・ソング」(No No Song) | ホイト・アクストン, デヴィッド・ジャクソン | | 9. | 「オンリー・ユー」(Only You (And You Alone)) | バック・ラム | | 10. | 「イージー・フォー・ミー」(Easy for Me) | ハリー・ニルソン | | 11. | 「グッドナイト・ウィーン (リプライズ)」(Goodnight Vienna (Reprise)) | ジョン・レノン | | 12. | 「バック・オフ・ブーガルー」(Back Off Boogaloo) | リチャード・スターキー | | 13. | 「ブラインドマン」(Blindman) | リチャード・スターキー | | 14. | 「シックス・オクロック(エクステンデッド・ヴァージョン)」(Six O'Clock (Extended Version)) | ポール・マッカートニー, リンダ・マッカートニー | | 合計時間: | |
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参加ミュージシャン
- リンゴ・スター - ボーカル、ドラムス(#1,2,3,5,6,7,8,9,11)、パーカッション(#8)
- ジョン・レノン - ピアノ(#1,11)、ギター (#6)、アコースティック・ギター (#9)
- ロン・ヴァン・イートン - ギター(#1,2,11)、ホーン (#1,11)、アコースティック・ギター (#4)、バッキング・ボーカル (#7)
- ジェシ・エド・デイヴィス - ギター(#1,2,11) 、エレクトリック・ギター (#8,9)
- ヴィニ・ポンシア - アコースティック・ギター (#4)、ハーモニー・ボーカル (#3,4)、バッキング・ボーカル (#6,7)、ストリングス・アレンジ (#10)
- クラウス・フォアマン - ベース (#2,3,5,6,7,8,)、バッキング・ボーカル (#7)
- リチャード・ペリー – ベース (#6)、バッキング・ボーカル(#6,7)
- ジム・ケルトナー - ドラムス (#1,2,3,5,6,9,11)
- トレヴァー・ローレンス - ホーン (#1,2,3,5,6,8,11)
- スティーヴ・マダイオ[注釈 11] - ホーン (#1,2,3,5,6,11)、ストリングス・アレンジ (#10)
- ボビー・キーズ - ホーン (#1,2,3,5,6,8,11)
- クライディー・キング - バッキング・ボーカル (#1,2,3,5,6,11)
- ジョー・グリーン – バッキング・ボーカル (#2,5,6)
- ザ・ブラックベリーズ - バッキング・ボーカル (#1,3,11)
- ドクター・ジョン - ピアノ (#3)、エレクトリックピアノ (#2,6)
- ビリー・プレストン - クラビネット (#1,11)、エレクトリックピアノ (#9)
- カール・フォルティナ[注釈 12] - アコーディオン (#1,4,11)
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チャート
週間チャート
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年間チャート
認定
^認定のみに基づく出荷枚数
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脚注
注釈
出典
参考文献
- Kent, David (1993). Australian Chart Book 1970-1992. St Ives, N.S.W.: Australian Chart Book. ISBN 0-646-11917-6
- Badman, Keith (2001). The Beatles Diary Volume 2: After the Break-Up 1970-2001. Omnibus Press. ISBN 978-0-711-98307-6
- Harry, Bill (2004). The Ringo Starr Encyclopedia. London: Virgin Books. ISBN 978-0-7535-0843-5
- Whitburn, Joel (2002). Top Adult Contemporary: 1961-2001. Record Research
- Blaney, John (2005). John Lennon: Listen to This Book (illustrated ed.). Paper Jukebox. ISBN 978-0-9544528-1-0
- “A Space Odyssey”. NME. NME Originals 2 (3). (2005).
- Rodriguez, Robert (2010). Fab Four FAQ 2.0: The Beatles' Solo Years, 1970–1980 (illustrated ed.). New York: Backbeat Books. ISBN 978-0-87930-968-8
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