株式会社キュー・テック(英: Q-TEC, INC.)は、かつて存在した録画物のVTR編集、オフライン編集、ノンリニア編集、MA、Blu-ray Discなどのオーサリング等を手がけていた日本のポストプロダクション。
2022年10月1日に同じくメモリーテック・ホールディングス傘下であったポニーキャニオンエンタープライズと合併し、新たに「株式会社クープ」を設立した[1]。以降は、主要事業所の1つ「キュー・テックスタジオ」という扱いとなった。
沿革
- 1981年 - パイオニアがレーザーディスクの製造・普及拡大を目的にレーザーディスク株式会社を設立。同時に音響・映像編集スタジオを設置。
- 1989年 - レーザーディスク株式会社(同時期にパイオニアLDC株式会社に商号変更)から音響・映像編集スタジオを分離して発足。
- 2003年 - パイオニアが筆頭株主となる。
- 2004年 - パイオニアが経営不振に陥った時期を境にして、パイオニアから独立。
- 2007年 - ポニーキャニオン・三菱商事傘下で、音楽・映像メディアの生産委託を主力事業としているメモリーテック株式会社の系列になる。
- 2008年11月 - リアルD社の3Dプレビューシステムを導入。編集スタジオとしてはアジア地域で初導入[2]。
- 2009年 - ゴンゾのデジタル映像事業を譲受。100%子会社として株式会社グラフィニカを設立。
- 2010年12月 - 100%株主であるメモリーテック株式会社が持株会社制に移行し、社名がメモリーテック・ホールディングス株式会社となる。
- 2011年 - 遊技機映像制作事業を行う株式会社バンブーマウンテンの株式を取得。子会社化。
- 2016年 - 実写映像の制作プロダクション業務をスタート。
- 2019年9月19日 - ドルビービジョン対応コンテンツの制作を開始。
- 2022年10月1日 - 同じくメモリーテック・ホールディングス株式会社の100%子会社である株式会社ポニーキャニオンエンタープライズと合併。新たに株式会社クープを設立。
事業内容
映像の企画・制作、撮影、編集、各種オーサリング、フィルム作品のフィルムスキャン、またはテレシネによるデジタル化及びリマスター等。
3D映像撮影・編集・2D-3D変換やBlu-ray Disc 3Dのオーサリング等、3D事業も行っている。
編集
Smoke、Flame、Inferno、Avid、iQといったノンリニア編集システムと、Accom社のリニア編集システムを導入している。
CMやプロモーション映像、劇場映画、テレビアニメ等の編集を行っている。
テレビアニメでは、サンライズ作品や京都アニメーション作品、サテライト作品、studioぴえろ作品等。
2016年3月、映像編集ツール「Quantel Rio(grass valley社(旧英:Snell Advanced Media社製)」を中心としたUHD編集環境の整備を発表。
2019年9月、DOLBY VISIONの認証取得に伴い、対応コンテンツの制作環境を構築。
ディレクション
アニメ作品のPV制作や総集編ディレクター、アニメ・ゲーム関連特番のディレクター等としてクレジットされている事がある。[3][4]
MA
7.1ch、5.1chに対応したマルチチャンネルサラウンドMIXに対応。
「T032:テレビ放送における音声レベル(ラウドネス)運用基準」に対応。
オーサリング
毎月平均240タイトル、DVD等のオーサリングを行っている。
同社で編集やリマスターを行った作品のオーサリングを行うことも多い。BD-LIVEやBlu-ray Disc 3D規格にも対応している。
2016年3月、オーサリングツール「Scenarist UHD(米 Scenarist社製)」とHEVCエンコーダー「ATEME TITAN(仏 Ateme 社製)」を導入済である事を発表。Ultra HD Blu-ray(UHD BD)に対応したとしている。
ステレオ3D
3Dリグによる3D撮影と、独自技術による2D-3D変換を行っている。3D撮影には、2Kデジタルシネマカメラと垂直ミラーリグ、フラッシュメモリーレコーダーを組み合わせたシステムを使用。2D-3D変換は、自社開発プログラムと手作業の組み合わせとの事で、詳細は公表していない。編集・カラーグレーディングにはiQ Pabloを使用。プレビューは、RealD方式で行うことができる。
2D-3D変換においては、『とびだすアニメ!! ヒピラくん』が国際3Dアワード2011 Lumiere Japanをテレビ部門:アニメーションとして受賞、『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』が国際3D協会 ルミエール・ジャパン・アワード 2013にてグランプリを受賞した。[5]
主な3D撮影作品
主な2D-3D変換作品
FORS
Faithful Original Signalの略称。当初は、マスタリング時の情報劣化を極限まで抑えるキュー・テック独自のオーサリングプロセスの名称として、2009年7月に発表された。
2013年9月、概念を拡大し、キュー・テックの高画質・高音質ブランドの総称とされた。その際、従来のオーサリングプロセスはFORS systemからFORSと改名され、その他にFORS MASTER PROCESSとFORS CINEMAが設けられた。
FORS MASTER PROCESSのカテゴリにはさらに、FORS EX PROCESS、FORS EX SOUND、FORS EX PICTUREがある。
FORS(高画質・高音質総合マスタリング・プレス技術)
従来FORS systemと称されていた技術。マスタリング時の情報劣化を極限まで抑えるキュー・テック独自のオーサリングプロセス。
ハードディスクケースは筐体に中国産御影石の「山西黒」を3cm厚で採用し、振動による影響を低減。各機器間にはアイソレーショントランスを使用し、音や映像の信号以外をブロック。フルテック製コネクターを採用した電源ケーブルなどを使用している[6]。
同社でオーサリングを行った一部の作品で使用されている。
2010年、Hiviグランプリ技術特別賞を受賞した[7]。
主なFORS採用作品
FORS EX PICTURE(高画質映像信号変換技術)
従来、F.O.C.U.S(Fine Optimum Customization Up-convert System)=高画質HDリマスタリングアップコンと称されていた技術。FORSの定義拡大に伴い改名され(EX PICTURE HD)、同時にHDからHDの際にも採用可能になった他(EX PICTURE)、4Kへのアップコンバートにも対応した(EX PICTURE 4K)。独自のノウハウに基づいた技術で、ジャギーなどを極力排除したシャープな仕上がりになるとしている。SD映像を10項目以上にわたって診断し、作品特性にあわせた最適な方法でHD画質にアップコンバートを行うという。
そのプロセスが適用されている作品は以下の通り。
主なFORS EX PICTURE採用作品
- 青の6号 BD-BOX(旧F.O.C.U.S)
- 涼宮ハルヒの憂鬱 ブルーレイ コンプリート BOX(旧F.O.C.U.S、オープニング・エンディングは除く)
- 戦闘妖精雪風(旧F.O.C.U.S)
- 水樹奈々/NANA CLIPS 5(旧F.O.C.U.S、収録されているMUSIC CLIPの4曲と、BONUS CLIPの2タイトルのみ)
- 灰羽連盟 Blu-ray BOX(旧F.O.C.U.S)
- 咲-Saki- 嶺上開花 スペシャルBlu-ray BOX(旧F.O.C.U.S)
- 鋼鉄天使くるみ Blu-ray BOX(旧F.O.C.U.S)
- 機動戦士ガンダム Blu-ray メモリアルボックス
- 花右京メイド隊 Blu-ray BOX
- マクロスF ゼントラ盛り Blu-ray Box
FORS EX SOUND(高音質音声エンコード技術)
音質に特化したFORS。アップサンプリングにも対応。EX SOUNDとEX SOUND 96k、EX SOUND 128kがある。
主なFORS EX SOUND採用作品
主なFORS EX SOUND 96k採用作品
FORS CINEMA(高音質シネマ技術)
デジタル原信号の高忠実伝送を追求したとのことで、ダビングステージで制作されたマスターサウンドクオリティをシアターで忠実に再現できるとしている。
主なFORS CINEMA採用作品
CG / VFX
Autodesk Maya、3DS Maxによる3DCG作成や、Autodesk Flameのコンポジット、Autodesk Smokeのフィニッシングなど。
子会社の株式会社グラフィニカでも、CG・VFX制作を行っている。
テレシネ / フィルムスキャン
テレシネは、Spirit Data Cineによって行っているとしている。2011年にはARRISCANを導入し、4Kフィルムスキャンを推進している。4Kフィルムスキャンの採用作品は明らかにされていない。
なお、テレシネやフィルムスキャンと併せて、デジタルリマスタリングも行っている。
脚注
関連項目
外部リンク