「キャンディ・セッズ」(原題:Candy Says)は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドが1969年に発表した楽曲。サード・アルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド』の1曲目。タイトルの「Candy」は、アンディ・ウォーホルの「ファクトリー」で女優として活躍したトランスジェンダーのキャンディ・ダーリングからとられた[2]。
概要
キャンディ・ダーリング(Candy Darling)は1961年、ロングアイランドのデヴァーン美容学校のクラスを受講し[3]、それからますます女装に傾斜していった。マンハッタンへ電車で通い、5番街でホルモン療法を受けながら、憧れのジョーン・ベネットやキム・ノヴァクのような女優になることを夢見た。1963年/64年ころから Hope Slattery と名乗り(Slatteryは本名)、のちに「キャンディ・ダーリング」に改名した。
転機は1967年に訪れた。ダーリングは、アンディ・ウォーホールの「スーパースターズ」の一人であるジャッキー・カーティスが書いた舞台『Glamour, Glory and Gold』に出演していたが[4]、ある深夜営業のクラブでカーティスといるときにウォーホールを紹介された。
ダーリングはすぐに彼の「スーパースターズ」に仲間入りし、彼女とトランスジェンダーの友人の Taffy Tits Terrifik(クライド・メルツァー)は、この年の11月に発売されたローリング・ストーンズのアルバム『サタニック・マジェスティーズ』に登場した。二人はアルバム2曲目の「魔王のお城」で「Candy and Taffy, hope you both are well」と歌われている。1968年にはウォーホールが制作した映画『フレッシュ』に出演した。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは3枚目のアルバム制作のために、1968年11月から12月にかけてロサンゼルスのTTGスタジオでレコ―ディングを行った。「キャンディ・セッズ」についてルー・リードは後年のインタビューでこう語っている。
そうだ。あれはキャンディ・ダーリングについての曲だ。彼女の視点から見た物事を俺は書こうとした。でももっと深くて普遍的なものが描かれているはずだと思うよ。ある意味俺たちの誰もが持っている普遍的な感情が。鏡を見れば俺たちはそこに映るものを好きになれない。「自分が違った奴だったら」とか「カーリーヘアだったら」とか、あるいは「真っ直ぐだったら」だとか俺たちはのべつ言っている。ともかく俺はそういう気持ちを抱かない人間にはまだお目にかかったことがない
[2]。
リードの意向により、「キャンディ・セッズ」はダグ・ユールがリード・ボーカルを務めた[5]。1969年3月発売のアルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド』の1曲目に収録された。
ライブ・アルバム『Live at Max's Kansas City』(1972年5月発売)の2004年再発盤にライブ・バージョンが収録された。また、リードは2007年に公開されたコンサート映画『Berlin: Live at St. Ann's Warehouse』で、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズとともに歌唱、演奏している。
脚注
- ^ The Velvet Underground - The Velvet Underground (Vinyl, LP, Album) at Discogs
- ^ a b DeCurtis, Anthony (2017). Lou Reed: A Life. New York: Little Brown. p. 121. ISBN 978-0-316-37654-9
- ^ Moynihan, Colin (February 24, 2009). “From the Archives, a Portrait of a Pop-Art Muse”. The New York Times. https://www.nytimes.com/2009/02/25/arts/design/25cand.html November 8, 2010閲覧。
- ^ “What is the Robert DeNiro Connection?”. For Members Only: The Story of the Mob's Secret Judge. February 13, 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。November 4, 2014閲覧。
- ^ Lapointe, Andrew. “Interview with Doug Yule”. PopMatters. March 4, 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。December 3, 2013閲覧。