カッコウ(郭公、Cuculus canorus)とは鳥綱カッコウ目カッコウ科に分類される鳥である。カッコウ科だけで約150種いる[1]。日本では、呼子鳥、閑古鳥、ふふどり、がっぽうどりなどとも呼ばれる[2]。
ユーラシア大陸とアフリカで広く繁殖する。
日本には夏鳥として5月ごろ飛来する。
アフリカや南アジアが越冬地で、ヨーロッパでは春を告げる鳥とされる。
森林や草原に生息する。日本では主に山地に生息するが、寒冷地の場合平地にも生息する。和名はオスの鳴き声に由来し、英名 cuckoo /ˈkʊku,ˈkuːku/ も同様である[3]。他言語においてもオスの鳴き声が名前の由来になっていることが多い。属名Cuculusも本種の鳴き声に由来する。種小名canorusは「響く、音楽的」の意。本種だけではなくCuculus属は体温保持能力が低く、外気温や運動の有無によって体温が大きく変動する(測定例:日変動29〜39℃)ことが知られている[4]。
本種は「托卵」を行う種として有名である。Aleksander D. Numerov (2003)による一覧によると約300種の鳥に托卵が確認されている[9]。
日本ではオオヨシキリ、ホオジロ、モズ等の28種で知られていたが、1975年ごろにはオナガに対しても托卵が行われるようになりホオジロへの托卵が稀になっていった[10]。托卵の際には巣の中にあった卵をひとつ持ち去って数を合わせる。本種のヒナは短期間(10-12日程度)で孵化し、巣の持ち主のヒナより早く生まれることが多い。先に生まれた本種のヒナは巣の持ち主の卵やヒナを巣の外に放り出してしまい、自分だけを育てさせる。ただし、托卵のタイミングが遅いと、先に孵化した巣の持ち主のヒナが重すぎて押し出せず、ごく稀に巣箱の中で托卵した場合は一緒に育つ場合もある。
ある個体が巣に卵を産みつけた後、別の個体が同じ巣に卵を産むことがある。2つの卵がほぼ同時にかえった場合、2羽のヒナが落とし合いをする。
また本種の卵を見破って排除する鳥もいる。それに対抗し、カッコウもその鳥の卵に模様を似せるなど見破られないようにするための能力を発達させており、これは片利片害共進化の典型である。
カッコウがなぜ托卵をするのかというのは未だ完全には解明されていない。が、他種に托卵(種間托卵)する鳥は体温変動が大きい傾向があるため、体温変動の少ない他種に抱卵してもらった方が繁殖に有利になりやすいのではないかという説が有力である[4]。ちなみに同種の巣に卵を預ける種内托卵は、鳥類では多くの分類群で認められる行動である。
成鳥は下側から見るとハイタカと同じカラーリングをしており、托卵の時間にホストとなる鳥に邪魔されないよう模倣しているという見方をしている研究者もいる[11][12]。托卵の時間、タカの鳴きまねも行うことが研究からわかっている[13]。
メス鳥は、似たような卵が産める托卵先の鳥を選択する遺伝的な指向性を持つ[14][15]。
日本では、閑古鳥が夏の季語とされるが、ヨーロッパでは、春を告げる鳥、春の嵐を呼ぶ鳥、幸運を呼ぶ鳥とされる[16]。ルクセンブルクでは、春先のイースターマンデーにエーマイシェン(英語版)(鳥の土笛市)が開かれ、カッコウやナイチンゲールの鳴き声の笛が売られる[17]。
ケルトでは、Gowkと呼ばれ、妖精憑きの愚者(フール)とも関連付けられた。エイプリルフールと関係のあるGowkの日は、かっこうの鳴き始める4月13日であり、この日はいたずらが行われる[18]。カッコウは生者と死者の世界の間を行き来できる鳥であり、メッセンジャーでもあった[19]。ノルウェーでは、作物や天気などの予言を行う鳥として、鳴き声の方向から占った(例として、北側から聞こえると死者がでるとして、カッコウ時計を家の北側に置かないなど)[20]。 ギリシャ神話で主神ゼウスはカッコウに化けて配偶神ヘーラーに求愛したとされる。 死者と生者との関係では、シベリアのブリヤート人には、死んだ英雄を復活させる伝説があり、8月からカッコウが来る春まで火葬を行わないようにする風習がある[1]。
アリストテレスは、季節で鷹に変身するという説を支持していた。16世紀以降のドイツでは、悪魔を名指しすると呼び寄せてしまうため、呼び寄せると幸せにつながる Kuckuck の名前が代用された[21]。フランスの一部地域では、初鳴きを聞いた時にポケットに金があれば、その一年金に困らないといわれている[22][23]。ノルウェーでは、カッコウの鳴く木の下にいると願い事が3つ叶うとされる[20]。
さびれたさまを表す「閑古鳥が鳴く」の閑古鳥とはカッコウのことである。古来、日本人はカッコウの鳴き声に物寂しさを感じていたようである。松尾芭蕉の句にも「憂きわれをさびしがらせよ閑古鳥」(嵯峨日記)というものがある[24]。
日本では、豆をまく季節に来ることから、豆播き鳥とも呼ばれる[1]。
など