この項目では、リス科に属する草食獣について説明しています。ロードス島戦記の登場人物 ウッド・チャックについては「ロードス島戦記の登場人物 」をご覧ください。
ウッドチャック (woodchuck 、学名 :Marmota monax )、別名グラウンドホッグ (groundhog ) は、哺乳綱 ネズミ目 (齧歯目)リス科 マーモット属 に分類されるマーモット の1種 [ 2] 。北アメリカ に広く分布する。
分布
カナダ およびアメリカ合衆国 北東部および中央部。北はアラスカ から南東はジョージア州 まで分布する[ 3] [ 4] 。
形態
最大級のリス科 の1種。体長40 - 65センチメートル、尾長15センチメートル、体重2 - 6キログラム[ 5] [ 3] 。穴を掘ることに適応した短く力強い前足と、曲がった厚い鉤爪を持つ。尾は比較的短く、体長の約4分の1ほどしかない[ 3] 。
生態
危険を感じると、口笛のような警戒声を上げて仲間に知らせる
捕食者から逃げるために木に登ることができる
他のマーモット は岩場や高地に生息するが、低地の開けた平野や森林地帯の端に生息する[ 5] 。森林が開拓され生息地 に適した土地が増えたため、ヨーロッパ諸国によるアメリカ大陸の植民地化 以前よりも個体数は多くなっている[ 5] 。
昼行性 で、朝早くと午後遅くに活動的である[ 6] 。巣穴の外で食物を食べていない時は、周囲に注意を払っている。1頭または複数が、後足で直立してじっと動かずに見張りをしている姿がよくみられる。危険を感じると、口笛のような高い警戒声を上げてコロニー の仲間に知らせるため、"whistle-pig" とも呼ばれる[ 3] [ 5] 。戦う時や、ひどい怪我をした時、捕食者に捕まった際には、キーキー鳴く[ 5] 。低い吠え声や歯をこすり合わせて音を立てることもある[ 5] 。おびえている時には、尾の毛が真っ直ぐに立ち上がり、ヘアブラシのような状態になる。
ずんぐりとした外見にもかかわらず、捕食者から逃げる際や周囲を見渡したい時には、泳ぎが堪能で、木登りも得意である[ 7] 。危険が迫ると、巣穴に退却する。巣穴に侵入されると、2本の大きな切歯 と前足の鉤爪で粘り強く身を守る。同種に対しても縄張り行動をみせ、優位を確立するため衝突する[ 8] 。
野生下の寿命は2 - 6年、飼育下では10年まで生きる[ 3] 。捕食者には、ハイイロオオカミ 、ピューマ 、コヨーテ 、アカギツネ 、ボブキャット 、アメリカグマ 、ワシ などがいる[ 3] 。子どもは、しばしば容易に巣穴に入ってくるヘビ に捕食される危険がある。
巣穴
穴掘りが大変得意で、掘った巣穴 を睡眠、子育て、排泄などに使用する。マーモットの中では最も単独性だが、何頭かの個体が同じ巣穴に住んでいる。通常、入り口は2 - 5か所あり、捕食者から避難する主な手段になっている[ 4] 。巣穴は大きく、地下のトンネルは最大14メートル、深さ1.5メートルになり、農業設備や建築基礎に損害を与えることがある[ 3] 。
冬眠
真の冬眠 をする数少ない種のひとつで、春・夏用の巣穴とは別に、冬眠用の巣穴を掘る[ 3] 。冬眠用の巣穴は、樹木の茂ったまたは藪に覆われた地域にあり、地上が凍りつく冬の間にも安定した温度を保つ地下凍結線の下に掘られる[ 5] 。ほとんどの地域では、10月から3 - 4月まで冬眠するが、より温暖な地域では3か月ほどしか冬眠しない[ 9] 。冬を生き延びるため、冬眠に入る前には脂肪を蓄え、体重を最大限に増やす[ 3] 。冬眠から目覚めた時には、いくらかの体脂肪が残っており、それを消費しながら暖かくなって食物になる豊富な植物が育つまでをしのぐ。
食性
食事をするウッドチャック
ほぼ草食性 で、主にイネ科の野草や、クローバー、果実、農作物を食べる[ 8] 。まれに昆虫 、カタツムリ 、鳥の雛を食べることもある[ 5] 。
繁殖
生後2年で性成熟 するが、生後1年で性成熟する個体も少ない割合でいる[ 3] 。繁殖期は、冬眠から目覚めた後の2月下旬から4月まで[ 10] 。妊娠期間は31 - 32日間で、つがいになったオスとメスは繁殖後も同じ巣穴に留まる[ 10] 。4 - 5月になり出産が近付くと、オスは巣穴を離れる。年1回の出産で4 - 6頭の子を産み、子は閉眼、無毛で生まれる[ 10] 。生後2か月で離乳し、生後5か月で分散する[ 10] 。
名称
ウッドチャックという名前の語源は、ネイティブアメリカン のアルゴンキン語族 (あるいはナラガンセット族 )の言葉で、この動物を指し、「穴を掘るもの」という意味のwuchak に由来する[ 3] 。木 (wood) や、物をぽいと投げること (chuck) には関連はないが、単語が類似していることで有名な早口言葉 が生まれた[ 11] 。
How much wood would a woodchuck chuck (ウッドチャックは何本の木を投げるだろう)
if a woodchuck could chuck wood? (もしウッドチャックが木を投げられるとしたら)
A woodchuck would chuck all the wood he could (ウッドチャックはできる限りの木材を投げるだろう)
if a woodchuck could chuck wood! (もしウッドチャックが木を投げられるとしたら)
人間との関わり
アメリカおよびカナダで毎年2月2日に行われるグラウンドホッグデー の祝典によって、人々から認知され人気を得ている。ウッドチャックの行動で春の到来時期を予測するこの行事は、巣穴から出たウッドチャックがしばしば再び冬眠する習性に由来すると考えられる[ 3] 。
スポーツハンティング の狩猟 対象となる[ 3] 。
肝癌 を誘発するB型肝炎 の医学研究に利用される。ウッドチャックがB型肝炎ウイルスに感染すると、肝癌になるリスクは100パーセントであるため、B型肝炎と肝癌治療の試験モデルとなっている[ 12] 。
ウッドチャックの巣穴によって、アメリカオハイオ州 の Ufferman Site という遺跡 の存在が明らかになった[ 13] 。それまで考古学者はこの遺跡を発掘 していなかったが、ウッドチャックがこの遺跡のあるエスカー の緩い土を好み、巣穴を作るために土を掘ったことで、多数の人骨と動物の骨、陶器類、石の破片などの人工遺物の発見につながった[ 13] 。
脚注
^ Linzey, A. V. & NatureServe (Hammerson, G. & Cannings, S.) (2008). "Marmota monax " . IUCN Red List of Threatened Species. Version 2008 . International Union for Conservation of Nature . 2009年1月6日閲覧 。
^ Thorington, R.W., Jr.; Hoffman, R.S. (2005). "Family Sciuridae" . In Wilson, D.E.; Reeder, D.M (eds.). Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.). Johns Hopkins University Press. p. 797. ISBN 978-0-8018-8221-0 . OCLC 62265494 。
^ a b c d e f g h i j k l m Light, Jessica E.. “Animal Diversity Web: Marmota monax ”. University of Michigan Museum of Zoology. 2009年7月14日 閲覧。
^ a b “Marmota monax (Linnaeus); Woodchuck ”. Pick4.pick.uga.edu.. 2011年9月15日 閲覧。
^ a b c d e f g h “Hinterland Who's Who ("Canadian Wildlife Service: Mammals: Woodchuck") ”. 2011年9月15日 閲覧。
^ “Woodchuck or "Ground Hog" (Marmota monax) ”. Illinois University. 2014年6月23日 閲覧。
^ Chapman, J.A.; Feldhammer, G.A. (1982). Wild Mammals of North America, Biology, Management, Economics . Johns Hopkins University Press. ISBN 0801823536
^ a b Whitaker, John O; Hamilton, W J. (1998). Mammals of the Eastern United States . Cornell University Press. ISBN 0-8014-3475-0
^ Woodchucks in Rhode Island . (PDF) . dem.ri.gov. Retrieved on 2011-09-15.
^ a b c d Woodchuck. Marmota monax . (PDF). North Caroline Wildlife
^ Lyrics and Words for Children's Nursery Rhymes and Songs . BusSongs.com. Retrieved on 2011-09-15.
^ 村上清史・内嶋雅人・金子周一. “ウッドチャック肝炎ウイルスとヘパドナウイルスエンハンサー ”. 2014年6月23日 閲覧。
^ a b Owen, Lorrie K., ed. Dictionary of Ohio Historic Places . Vol. 1. セント・クレアショアーズ : Somerset, 1999, p. 328.
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
ウッドチャック に関連するメディアがあります。
外部リンク