短編小説や詩に加えて、1970年にはウォーカー初の小説である『グレンジ・コープランドの第三の人生』(The Third Life of Grange Copeland)が出版された。1976年には、2作目の長編小説『メリディアン』(Meridian)が出版。この小説は公民権運動の時期の南部におけるフェミニストの労働者について取り扱っており、ウォーカー自身の経験の一部にきわめて類似したものとなっている。
1982年、ウォーカーは後に自身の最も有名な作品として知られることとなる小説『カラーパープル』(The Color Purple)を出版した。人種差別主義の白人文化ばかりでなく、家長主義の黒人文化に対しても自分の流儀を貫いて闘う黒人女性の物語は、大きな反響を呼んで商業的成功をおさめ、登場人物と物語の即時性は、人種・年齢・性別を問わず読者の神経を直撃した。この本はベストセラーとなり、1985年には映画が制作され、2005年にはブロードウェイ劇場でミュージカルが制作された。2023年、そのミュージカルを基にしたミュージカル映画が制作された。
小説家のチャールズ・R・ジョンソン (Charles R. Johnson) は、1995年に出版した小説『Oxherding Tale』の序文において、以下のような発言で『カラーパープル』を批判した。「どちらの作品が慣習の境界線をより強固に追究しているか、そしてどちらが虚構と哲学が出会う空間において確信を持って位置を占めているかを決めるのは読者にお任せしよう。」彼のコメントは学問の世界にも衝撃を与えた。ジョンソンが、別の有色人種の作家を批判しないという暗黙のタブーを破ったためである。
ウォーカーは、1996年の著書『The Same River Twice: Honoring the Difficult』で、これらの批判について言及している。『The Same River Twice』はある種の自叙伝ともいえる作品で、ウォーカーの人生で起こった独特の出来事について語られており、『カラーパープル』に対する自分が経験した反応についての視点も2回(1つは書籍、もう1つは映画に対する反応)語られている。
健康に関して
作家イヴリン・ホワイト (Evelyn C. White) は、著書『アリス・ウォーカー:その生涯』(Alice Walker: A Life)において、ウォーカーが幼少時に負傷し、結果として片目を失明することとなった事件について述べている。ウォーカーの兄が、彼女の目をBB銃で撃ったのである。ホワイトはこの事件がウォーカーに大きな影響を与えたと述べている。特に重大なことは、町の白人の医師が彼女の両親から怪我の治療費として250ドル以上も詐取したということである。ウォーカーは記録資料的性質をもった著書『戦士の刻印』("Warrior Marks", アフリカにおける女性器切除の記録)において、この事件について言及しており、このことを女性達が弾圧と闘う「戦士」となるための犠牲的な刻印として描写している。
ウォーカーはまた、『The Same River Twice』において、自身のライム病による闘病生活についても記録している。
主な著作
小説・短編集
The Third Life of Grange Copeland (1970年)
Everyday Use (1973年)
In Love and Trouble: Stories of Black Women (1973年)