アブダレラ・ハルーン・ハッサン、またはアブダル・ハルーン・ハッサン(アラビア語: عبد الإله هارون、英語: Abdalelah Haroun Hassan、1997年1月1日 ‐ 2021年6月26日)は、スーダン出身でカタール国籍の陸上競技選手。専門は短距離走の400m。自己ベストは44秒07で元アジア記録保持者。2017年ロンドン世界選手権男子400mの銅メダリストである。
経歴
2013年にカタールに移り住み、2015年2月2日にカタールの市民権を取得。2015年4月2日からカタール代表として競技することが可能になった[2]。
2014年に陸上競技を始め[3]、400mの自己ベストを45秒74まで更新した[2]。
2015年2月19日のXL-ガラン (en) 男子400mで45秒39の室内アジア新記録を樹立[4]。苅部俊二が1997年にマークした45秒76を更新した[5]。
2015年3月19日にサソルバーグ (en) で行われた大会の男子400mで、高地記録ながら44秒68の自己ベスト(当時)をマーク[4]。イブラヒム・イスマイルの持つカタール記録とハムダン・アル=ビシの持つU20アジア記録(ともに44秒66)に迫る好タイムをマークすると、翌月のアラブ選手権 (en) 男子400m決勝でも44秒68の自己ベストタイをマークして優勝し、自身初の国際タイトルを獲得した[6]。
2015年6月のアジア選手権でアジアの大会に初出場を果たすと、4日の男子400m決勝で今季3度目の44秒68をマーク。大会3連覇がかかっていたアジア記録保持者のユセフ・マスラヒを抑えて優勝し、初のアジアチャンピオンに輝いた[7]。アンカーを務めた7日の男子4×400mリレー決勝では3分02秒50の大会新記録を樹立しての優勝に貢献し、男子400mとの大会2冠を達成した[8]。
2015年7月5日のResisprint国際男子400mで44秒27のアジア新記録(当時)を樹立。ユセフ・マスラヒが2014年にマークした44秒43を更新するとともに、イブラヒム・イスマイルが2000年にマークした44秒66のカタール記録も更新した。また、これはスティーブ・ルイス(43秒87)に次ぐU20世界歴代2位(当時)の記録となった[9]。
2015年8月の北京世界選手権男子400mには今季世界ランク4位タイ(44秒27)のメダル候補として出場予定だったが[10]、怪我のため出場しなかった[3]。
2016年2月17日のゴールデンガラン(旧XL-ガラン)男子500mで59秒83の室内世界最高記録を樹立。Brycen Spratlingが2015年にマークした1分00秒06を更新した[11]。
2016年3月のポートランド世界室内選手権男子400mには今季室内世界ランク10位(45秒88)で出場すると[12]、18日の予選を46秒15(全体1位)、準決勝をシーズンベストの45秒71(全体3位)で突破し、世界大会初出場ながらこの種目でカタール勢初のファイナリストになった[13]。迎えた翌日の決勝では、ディフェンディングチャンピオンのパヴェル・マスラクに0秒15及ばなかったものの、準決勝の記録を更に縮める45秒59をマークして銀メダルを獲得し、カタールにこの種目初のメダルをもたらした[14]。また、19歳78日という若さでメダリストとファイナリストになったハルーンは、1985年パリ大会でトーマス・シェーンレーベが打ち立てた19歳166日の最年少メダリスト記録と最年少ファイナリスト記録を更新した[15]。
2016年7月のU20世界選手権男子400mには今季U20世界ランク2位(44秒81)のメダル候補として出場し[16]、順当に決勝まで進出した。5月にU20世界歴代2位の44秒22(ハルーン以外で今季唯一の44秒台)をマークしていたバボロキ・テベが準決勝で姿を消し(レーン侵害の失格)、ライバル不在となった22日の決勝では、今大会唯一の44秒台(44秒81)をマークして金メダルを獲得[17]。初の世界タイトルを獲得するとともに、カタールにこの種目初のメダルをもたらした[18]。
2017年8月のロンドン世界選手権男子400mに出場を果たしたが、今季は怪我もあり[19]、大会前のシーズンベストは44秒台に届かない45秒15だった[20]。ところが、5日の予選をシーズンベストに迫る45秒27で突破すると、6日の準決勝ではシーズンベストを大幅に更新する44秒64をマーク。ホームストレートで怒涛の追い上げを見せ、着順で突破できる2着以内に入れなかったもののタイムで拾われて決勝に進出した。迎えた8日の決勝ではホームストレートに入った時点で7位(最下位)、残り30m時点で6位だったが、そこから準決勝同様に怒涛の追い上げを見せ、シーズンベストを更に縮める44秒48をマークして3位でフィニッシュ。ウェイド・バンニーキルク(43秒98)、スティーヴン・ガーディナー(44秒41)に次いで銅メダルを獲得し、400mではオリンピックも含めアジア勢初のメダリストになった[21][22]。
2018年3月のバーミンガム世界室内選手権男子400mでは金メダル候補だったが、予選でフライングを犯し失格に終わった。なお、ハルーンがいた予選3組目は全員が失格になるという(ハルーン以外はレーン侵害で失格)、世界選手権初の珍事が起こった[23][24]。
2021年に延期された2020年東京オリンピックにも代表になるべく活動していたが、2021年6月26日、ドーハにて交通事故に遭い死去したことがカタールオリンピック委員会によって発表された。24歳没[25][26]。
人物
ヒーローはマイク・タイソン[1]。
自己ベスト
主要大会成績
備考欄の記録は当時のもの
脚注
- ^ a b c “プロフィール”. NBC Olympics. 2016年11月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月10日閲覧。
- ^ a b Rio 2016 Olympic Games athlete biographies - men (part 1) / P.12参照 (PDF, 3.05 MB) 国際陸上競技連盟 2017年08月10日閲覧
- ^ a b “Haroun over the moon after making history for Asia”. The Peninsula Qatar (2017年8月9日). 2017年8月10日閲覧。
- ^ a b “17-Year-Old Qatari Abdalelah Haroun Runs World Leading 44.68 in 400m”. Watchathletics.com (2015年3月20日). 2017年8月10日閲覧。
- ^ “Filter By discipline / Men's indoor 400 Meters”. 国際陸上競技連盟. 2014年3月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月10日閲覧。
- ^ “Qatar’s ‘dream team’ aim to shine at IDL Doha 2015”. Gulf Times (2015年5月6日). 2017年8月10日閲覧。
- ^ “Qatari sprinters dominate at Asian Championships”. 国際陸上競技連盟 (2015年6月4日). 2017年8月10日閲覧。
- ^ 2015年アジア選手権リザルト (PDF, 580 KB) アジア陸上競技連盟 2017年08月10日閲覧
- ^ “Makwala regains African 400m record with 43.72”. 国際陸上競技連盟 (2015年7月5日). 2017年8月10日閲覧。
- ^ 2015年世界選手権男子400m予選スタートリスト (PDF, 243 KB) 国際陸上競技連盟 2017年08月10日閲覧
- ^ “Dibaba and Souleiman break world indoor records in Stockholm”. 国際陸上競技連盟 (2016年2月17日). 2017年8月10日閲覧。
- ^ 2016年世界室内選手権男子400m予選スタートリスト (PDF, 122 KB) 国際陸上競技連盟 2017年08月10日閲覧
- ^ World Indoor Championships Portland 2016 Athletics Statistics Handbook / BEST NATIONAL PLACINGS(P.322参照) (PDF, 24.76 MB) 国際陸上競技連盟 2017年08月10日閲覧
- ^ “2016年世界室内選手権男子400m決勝リザルト”. 国際陸上競技連盟 (2017年8月10日). 2017年8月10日閲覧。
- ^ World Indoor Championships Portland 2016 Athletics Statistics Handbook / YOUNGEST & OLDEST(P.25参照) (PDF, 24.76 MB) 国際陸上競技連盟 2017年08月10日閲覧
- ^ 2016年世界U20選手権男子400m予選スタートリスト (PDF, 130 KB) 国際陸上競技連盟 2017年08月10日閲覧
- ^ “2016年世界U20選手権男子400m決勝リザルト”. 国際陸上競技連盟 (2017年8月10日). 2017年8月10日閲覧。
- ^ Facts and figures - IAAF World U20 Championships Bydgoszcz 2016 / COUNTRY INDEX(P.59参照) (PDF, 1.8 MB) 国際陸上競技連盟 2017年08月10日閲覧
- ^ “Qatar’s Haroun in 400m final, Samba crosses heats hurdle”. Qatar Tribune (2017年8月7日). 2017年8月10日閲覧。
- ^ 2017年世界選手権男子400m予選スタートリスト (PDF, 136 KB) 国際陸上競技連盟 2017年08月10日閲覧
- ^ “2017年世界選手権男子400m決勝リザルト”. 国際陸上競技連盟 (2017年8月10日). 2017年8月10日閲覧。
- ^ “Report: men's 400m final – IAAF World Championships London 2017”. 国際陸上競技連盟 (2017年8月8日). 2017年8月10日閲覧。
- ^ “バーミンガムでの世界室内選手権、男子400メートル予選で全員失格の珍事が(1/2)”. THE ANSWER (2018年3月4日). 2018年3月5日閲覧。
- ^ “バーミンガムでの世界室内選手権、男子400メートル予選で全員失格の珍事が(2/2)”. THE ANSWER (2018年3月4日). 2018年3月5日閲覧。
- ^ “Qatari Abdalelah Haroun, 2017 world bronze medallist, dies at 24” (英語). olympics.com/. (2021年6月26日). https://olympics.com/en/news/qatari-abdalelah-haroun-2017-world-bronze-medallist-dies-at-24 2021年6月27日閲覧。
- ^ “Abdalelah Haroun: Qatari sprinter killed in car crash in Doha, aged 24” (英語). BBC. (2021年6月26日). https://www.bbc.com/sport/athletics/57621408 2021年6月27日閲覧。
外部リンク
記録
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先代 Brycen Spratling (1分00秒06) 2015年2月14日
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男子500m 室内世界最高記録保持者 (59秒83) 2016年2月17日 -
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次代 未定
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先代 ユセフ・マスラヒ (44秒43) 2014年7月3日
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男子400m アジア記録保持者 (44秒27) 2015年7月5日 - 2015年8月23日
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次代 ユセフ・マスラヒ (43秒93) 2015年8月23日
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先代 苅部俊二 (45秒76) 1997年3月9日
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男子400m 室内アジア記録保持者 (45秒39) 2015年2月19日 -
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次代 未定
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先代 イブラヒム・イスマイル (44秒66) 2000年8月30日
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男子400m カタール記録保持者 (44秒27 - 44秒07) 2015年7月5日 -
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次代 未定
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先代 ハムダン・アル=ビシ (44秒66) 2000年10月20日
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男子400m U20アジア記録保持者 (44秒27) 2015年7月5日 -
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次代 未定
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先代 トーマス・シェーンレーベ (19歳166日) 1985 パリ 1985年1月19日
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世界室内選手権男子400m 最年少メダリスト記録保持者 最年少ファイナリスト記録保持者 (19歳78日) 2016 ポートランド 2016年3月19日 -
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次代 未定
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