アバコーン公爵 (英語 : Duke of Abercorn )は、アイルランド貴族 の公爵 位。
1868年 に第2代アバコーン侯爵ジェイムズ・ハミルトン が叙されたのにはじまり、スコットランド の貴族の家系であるハミルトン家によって世襲されている。ハミルトン公爵 ダグラス=ハミルトン家の分家に当たる。2019年 現在の爵位保持者は第5代アバコーン公爵ジェイムズ・ハミルトン である。
歴史
1984年 の第5代アバコーン公爵ジェイムズ・ハミルトン 。
スコットランド女王 メアリー の摂政を務めた第2代アラン伯爵ジェイムズ・ハミルトン の三男クロード・ハミルトン (英語版 ) (1543–1621) は、スコットランド王国 の政治家として活躍し、1587年 7月にスコットランド貴族 「カウンティ・オブ・レンフルーにおけるペイズリー卿 (Lord Paisley, in the County of Renfrew )」に叙された[ 2] 。彼の家系が後にアバコーン公爵に叙されることになる。ちなみに彼の兄にあたる初代ハミルトン侯爵ジョン・ハミルトン (英語版 ) の家系が後にハミルトン公爵家 となる。
初代ペイズリー卿の嫡男であるジェイムズ (英語版 ) (1575–1618) は、父より先に死去したが、1603年 4月にスコットランド貴族 「カウンティ・オブ・リンリスゴーにおけるアバコーン卿 (Lord Abercorn, in the County of Linlithgow )」、1606年 7月にスコットランド貴族「マウントカシェルおよびカークパトリック、ハミルトン、ペイズリー卿 (Lord Paisley, Hamilton, Mountcashell and Kirkpatrick )」と「アバコーン伯爵 (Earl of Abercorn)」に叙された[ 3] [ 4] 。
その長男ジェイムズ (英語版 ) (1604頃–1670頃) は、1617年 5月にアイルランド貴族 「カウンティ・オブ・ティロンにおけるハミルトン卿・ストラバーン男爵 (Lord Hamilton, Baron of Strabane , in the County of Tyrone )」に叙され、1618年3月に父から第2代アバコーン伯爵以下3つの爵位を継承し、1621年には祖父から第2代ペイズリー卿を継承した。このうちハミルトン卿・ストラバーン男爵については1633年に退き、翌1634年に弟クロード (英語版 ) (1606頃–1638) が第2代ハミルトン卿・ストラバーン男爵を継承することが認められている[ 5] [ 6] 。このためハミルトン卿・ストラバーン男爵だけしばらくアバコーン伯爵位と分離したが、第2代ハミルトン卿・ストラバーン男爵クロードの孫にあたる第4代アバコーン伯爵クロード (英語版 ) (1659頃–1691頃) の代に継承者が重なった[ 7] 。
第6代アバコーン伯爵ジェイムズ (英語版 ) (1661年頃–1734年) は、1701年 12月にアイルランド貴族 爵位「カウンティ・オブ・ティロンにおけるマウントキャッスル男爵 (Baron Mountcastle, in the County of Tyrone )」と「ストラバーン子爵 (Viscount Strabane )」に叙された[ 8] [ 9] 。
その孫である第8代アバコーン伯爵ジェイムズ (1712年–1789年) は、1761年 から1784年 にかけてスコットランド貴族代表議員 としてトーリー党 所属のイギリス貴族院 議員を務め、さらに1786年 にはグレートブリテン貴族 「ハミルトン子爵 (Viscount Hamilton )」に叙せられた[ 10] (これにより以降の当主は自動的に貴族院 議員となる)。
その甥である第9代アバコーン伯爵ジョン (1756年–1818年) は、1789年 の襲爵前にトーリー党の庶民院 議員を務め、1790年 10月にはグレートブリテン貴族「アバコーン侯爵 (Marquess of Abercorn)」に叙せられた[ 11] [ 12] 。
さらにその孫である第2代アバコーン侯爵ジェイムズ (1811年–1885年) は、1866年 から1868年 にかけてアイルランド総督 を務め、1868年8月21日 にアイルランド貴族「カウンティ・オブ・ティロンにおけるストラバーンのハミルトン侯爵 (Marquess of Hamilton, of Strabane in the county of Tyrone )」及び「アバコーン公爵 (Duke of Abercorn)」に叙せられた[ 13] [ 14] 。
その孫である第3代アバコーン公爵ジェイムズ (1869年–1953年) も1922年 から1945年 にかけて北アイルランド総督 を務めた[ 15] 。
2014年 現在の当主はその孫である第5代アバコーン公爵ジェイムズ・ハミルトン (1934年-) である。
1612年 以来、北アイルランド ・ティロン県 ・ニュータウンスチュワート (英語版 ) に地所バロンズコート (英語版 ) を保有している。地所内は自然豊かでニホンジカ が多く生息しており、野生のまま管理されている。評価の高い鹿肉を提供している[ 16] 。
現当主の保有爵位/準男爵位
上記の経緯から現在の当主であるジェイムズ・ハミルトン は以下の爵位を保持している[ 17] [ 18] 。
第5代アバコーン公爵 (5th Duke of Abercorn)
(1868年 8月10日 創設アイルランド貴族 爵位)
第6代アバコーン侯爵 (6th Marquess of Abercorn)
(1790年 10月15日 創設グレートブリテン貴族 爵位)
ティロン県におけるストラバンの第5代ハミルトン侯爵 (5th Marquess of Hamilton, of Strabane in the county of Tyrone)
(1868年8月10日創設アイルランド貴族爵位)
第14代アバコーン伯爵 (14th Earl of Abercorn)
(1606年 7月10日 創設スコットランド貴族 爵位)
第9代ストラバン子爵 (9th Viscount Strabane)
(1701年 9月2日 創設アイルランド貴族爵位)
第7代ハミルトン子爵 (7th Viscount Hamilton)
(1786年 8月8日 創設グレートブリテン貴族爵位)
レンフルー州における第14代ペイズリー卿 (14th Lord Paisley, in the County of Renfrew)
(1587年 7月29日 創設スコットランド貴族爵位)
リンリスゴー州における第14代アバコーン卿 (14th Lord Abercorn, in the County of Linlithgow)
(1603年 4月5日 創設スコットランド貴族爵位)
第14代ペイズリー、ハミルトン、マウントカシェルおよびカークパトリック卿 (14th Lord of Paisley, Hamilton, Mountcashell and Kirkpatrick)
(1606年7月10日創設スコットランド貴族爵位)
ティロン県における第15代ハミルトン卿、ストラバン男爵 (英語版 ) (15th Lord Hamilton, Baron of Strabane in the County of Tyrone)
(1617年 5月8日 創設アイルランド貴族爵位)
ティロン県における第9代マウントキャッスル男爵 (9th Baron Mountcastle, in the County of Tyrone)
(1701年9月2日創設アイルランド貴族爵位)
(ドナロングの)第10代準男爵 (英語版 ) (10th Baronet, "of Donalong")
(1660年 頃創設アイルランド準男爵位)
歴代当主一覧
ペイズリー卿 (1587年)
アバコーン伯爵 (1606年)
アバコーン侯爵 (1790年)
アバコーン公爵 (1868年)
爵位継承順位
ハミルトン侯爵(儀礼称号)ジェイムズ・ハロルド・チャールズ・ハミルトン (James Hamilton, Marquess of Hamilton, 1969-) 現当主の息子
ストラバン子爵(儀礼称号)ジェイムズ・ハミルトン (James Hamilton, Viscount Strabane, 2005-) ハミルトン侯爵の長男
クロード・ハミルトン卿 (Lord Claud Hamilton, 2007-) ハミルトン侯爵の次男
ニコラス・ハミルトン卿 (Lord Nicholas Hamilton, 1979-) 現当主の次男
クロード・ハミルトン卿 (Lord Claud Hamilton, 1939-) 現当主の弟(4代公の次男)
アレグザンダー・ハミルトン (Alexander Hamilton, 1987-) 上記の息子
系図
脚注
注釈
出典
^ Mosley, Charles, ed. (2003). Burke's Peerage, Baronetage & Knighthood (107 ed.). Burke's Peerage & Gentry. pp. 4–7.
^ Lundy, Darryl. “Claud Hamilton, 1st Lord Paisley ” (英語). thepeerage.com . 2014年11月30日 閲覧。
^ Lundy, Darryl. “James Hamilton, 1st Earl of Abercorn ” (英語). thepeerage.com . 2014年11月30日 閲覧。
^ Millar, Alexander Hastie (1890). "Hamilton, James (d.1617)" . In Stephen, Leslie ; Lee, Sidney (eds.). Dictionary of National Biography (英語). Vol. 24. London: Smith, Elder & Co .
^ Lundy, Darryl. “James Hamilton, 2nd Earl of Abercorn ” (英語). thepeerage.com . 2014年11月30日 閲覧。
^ Lundy, Darryl. “Claud Hamilton, 2nd Lord Hamilton ” (英語). thepeerage.com . 2014年11月30日 閲覧。
^ Lundy, Darryl. “Claud Hamilton, 4th Earl of Abercorn ” (英語). thepeerage.com . 2014年11月30日 閲覧。
^ Lundy, Darryl. “James Hamilton, 6th Earl of Abercorn ” (英語). thepeerage.com . 2014年11月30日 閲覧。
^ Henderson, Thomas Finlayson (1890). "Hamilton, James (1656-1734)" . In Stephen, Leslie ; Lee, Sidney (eds.). Dictionary of National Biography (英語). Vol. 24. London: Smith, Elder & Co .
^ Lundy, Darryl. “James Hamilton, 8th Earl of Abercorn ” (英語). thepeerage.com . 2014年11月30日 閲覧。
^ Lundy, Darryl. “http://thepeerage.com/p11029.htm#i110283 ” (英語). thepeerage.com . 2014年11月30日 閲覧。
^ "Hamilton, John James (HMLN773JJ)" . A Cambridge Alumni Database (英語). University of Cambridge.
^ Lundy, Darryl. “James Hamilton, 1st Duke of Abercorn ” (英語). thepeerage.com . 2014年11月30日 閲覧。
^ Hansard 1803–2005: contributions in Parliament by the Duke of Abercorn (英語)
^ Lundy, Darryl. “James Albert Edward Hamilton, 3rd Duke of Abercorn ” (英語). thepeerage.com . 2014年11月30日 閲覧。
^ “Baronscourt Estate ” (英語). 2014年11月30日 閲覧。
^ Lundy, Darryl. “James Hamilton, 5th Duke of Abercorn ” (英語). thepeerage.com . 2014年11月30日 閲覧。
^ Heraldic Media Limited. “Abercorn, Duke of (I, 1868) ” (英語). Cracroft's Peerage The Complete Guide to the British Peerage & Baronetage . 2015年11月2日 閲覧。
関連項目