画家のフィリップ・ルビノブ・ジェーコブソンによれば、Visionary Art の言葉は1933年に心理学者のカール・グスタフ・ユングが造語したものであり、ユングは幻視芸術を啓示として説明しそれは非日常的な意識の状態に由来する[4]。そしてユングは1940年代にヴィジョンについての講義を行っており、その取り組みには能動的想像法(英語版)の実験や(その結果としてヴィジョンを描いた)『赤の書』がある[16]。ジェーコブソンによれば、幻視芸術とは、観想の眼によって現れた「見えている」ヴィジョンであるか、そうした経験に基づいている[4]。
Visionary art as defined for the purposes of the American Visionary Art Museum refers to art produced by self-taught individuals, usually without formal training, whose works arise from an innate personal vision that revels foremost in the creative act itself. アメリカン・ビジョナリーアート・ミュージアムのための幻視芸術の定義は、通常は正式な美術教育を受けていない独学の個人によって生み出された芸術であり、創造的な活動そのものの中でも何よりの楽しみである、その人本来のヴィジョンから生まれた作品である。
1989年に創刊されたアウトサイダー・アートの専門誌である Raw Vision は、アール・ブリュット、コンテンポラリー・フォーク・アート、幻視芸術のような同類の分野も取り扱ってきた[20]。同誌のウェブサイトの「アウトサイダー・アートとは何か」では、幻視芸術や INTUITIVE ART とは、宗教体験やヴィジョンに基づくものだけでなく、第三世界の多くの都市の民俗芸術までを含めることができると説明されている[21]。イギリスのアウトサイダー・アートの研究者によれば、アウトサイダー・アートという言葉は大衆芸術、幻視芸術のような他の用語を取り込んでいっている[6]。1992年から1993年にかけて、欧米3か国と日本の世田谷美術館でアウトサイダー・アートの展覧会である「パラレル・ヴィジョン」展が開催され、アウトサイダー・アートの中のひとつとして幻視者の作品が紹介された。それにあわせて展覧会の著作が翻訳されており、主に精神障害者による作品が提示されているが、アウトサイダー・アートの中のひとつとして幻視芸術が紹介され、精神障害者以外の幻視者、霊媒者、心霊術師の作品も少数ではあるが展示された[22]。そこで集められたのは「強迫的幻視者」たちの作品である[7]。なお、主催したロサンゼルス・カウンティ美術館では1986年に、「芸術における霊的なもの:抽象絵画1980-1985」が開催されている[7]。芸術における神秘主義についての文献は膨大であり、95人の芸術家すべてについて125冊の本から「霊的な」伝記を裏付け、専門家に依頼した論文でも、認識の「別種の方法」への関心が見られた[7]。そして、1995年には、アメリカのボルチモアに国立美術館としての認可を受けた、前述のアメリカン・ヴィジョナリーアート・ミュージアムが創設されており、乱用されているアウトサイダーという言葉の代わりにヴィジョナリーという言葉を用いたのである[23]。
^C. G. Jung (2015). On Psychological and Visionary Art: Notes from C. G. Jung's Lecture on Gerard de Nerval's "Aurelia". Princeton University Press. p. 1-2. ISBN0691162476
^アレックス・グレイ、Hamaguchi Mariko訳「The Mission of Art」『zavtone』第10号、1998年、57-61頁。
^L. Caruana (2010). The First Manifesto of Visionary Art. Recluse. ISBN978-0-97826373-7
参考文献
ヴィクトル・I・ストイキツァ 著、松井美智子 訳『幻視絵画の詩学』三元社、2009年。ISBN978-4-88303-237-2。Visionary Experience in the Golden Age of Spanish Art, 1995.
モーリス・タックマン、キャロル・S.エリエル『パラレル・ヴィジョン―20世紀美術とアウトサイダー・アート』淡交社、1993年10月。ISBN978-4-473-01301-9。Parallel Visions : Modern Artists and Outsider Art, 1992.
アレックス・グレイ、ケン・ウィルバー、カルロ・マコーミック 著、秋津一夫 訳『聖なる鏡―アレックス・グレイの幻視的芸術』ナチュラルスピリット、2010年。ISBN978-4-903821-70-2。 先行翻訳は『セークレッド・ミラーズ―聖なる鏡』1994年、河出書房新社。 Sacred Mirrors : The Visionary Art of Alex Gray, 1990.
『現代パリの幻想画家たち』、朝日新聞社、1994。 (展覧会カタログ) 『Les Visionnarires Contemporains de Paris』.
『シュタイナー 危機の時代を生きる』W・クグラー著 久松 重光 訳 1987年 Walter Kugler 『Rudolf Steiner und Anthoroposohie』