塩化ニトロシル(えんかニトロシル、nitrosyl chloride)は、化学式 NOCl の無機化合物である。広く一般に、王水の分解によって生成する。ハロゲン化ニトロシルは他にフッ化ニトロシル、臭化ニトロシルが知られている。
性質
黄赤色の気体で、強い酸化力を持ち、塩酸や硝酸に溶かしても反応しない金や白金も、NOClによって酸化されて塩化金や塩化白金が生じる。塩素化・ニトロ化・酸化反応を起こす。ただしタンタル、イリジウムは酸に対しての耐性が極めて高いため、塩素化できない(イリジウムは粉末にすればわずかに反応する)。
構造
化学式はNOClであるが、構造を考慮するとONClと書いた方が適している。NとOの結合は二重結合でその結合距離は1.16 Å、NとClの結合は単結合でその結合距離は1.69 Åである。また、O-N-Clの結合角は113°である[1]。
合成
NOClは活性炭のもとで一酸化窒素と塩素を作用させて発生させる。または、硫酸水素ニトロシルと塩酸から合成することもできる。
また、塩酸と硝酸の反応によっても合成できる[2]。
反応
- ハロゲン化合物アクセプターと反応してニトロシルカチオン [NO]+ を与える。
- 水と反応して塩化水素を放出する。
- 100℃まで熱すると塩素と一酸化窒素に分解する。
- アルケンに付加させるとα-クロロオキシムを与える。
脚注
- ^ Holleman, A. F.; Wiberg, E. "Inorganic Chemistry" Academic Press: San Diego, 2001. ISBN 0-12-352651-5.
- ^ L. J. Beckham, W. A. Fessler, M. A. Kise (1951). “Nitrosyl Chloride”. Chemical Reviews 48: 319–396. doi:10.1021/cr60151a001.
外部リンク