中村 千栄子(なかむら ちえこ、1932年4月25日 - 1997年9月22日)は、日本の詩人、作詞家。中村は旧姓で、本名は新野 千栄子(あらの ちえこ)。
来歴
中村家の二女として新潟県柏崎市に生まれる。1945年、新潟県立柏崎高等女学校に入学。1951年、山脇学園高等学校卒業。高校時代に上京し、1953年、東京女子大学短期大学部国語科を卒業。そのまま東京で詩の勉強を続けようとしたが、母のすすめでいったん故郷に戻る。1954年、新潟大学学生歌、応援歌をそれぞれ応募し、前者が1位、後者が2位に選ばれたのを機に、詩作を本格的に行おうと決意する。同年5月より、加藤省吾の下で童謡の作詞を学ぶ。翌年、同郷の新野央と結婚し、再び上京。
1956年、童謡「あの音ほらね」「しまだいの赤ちゃん」でデビュー。NHK「うたのえほん」などで発表(彼女はこれらの歌を「童謡」ではなく、「こども歌」と呼んでいたという)。「ふしぎなでんき」(作曲:佐藤眞)、「かいてんもくば」(作曲:山崎八郎)、「ツッピンとびうお」(作曲:櫻井順)、「ママとかけっこ」(作曲:溝上日出夫)の4曲は、1982年に日本童謡協会が選定した「日本童謡200選」に入っている。また、NHK「みんなのうた」においては、「雪映えの町」(作曲:小川寛興)、「小さな海の絵本」(作曲:川津恒一)、「こんな時があってもいいね」(作曲:浜口庫之助)などを手がけている。1980年、日本童謡賞特別賞受賞。
1964年に『レモンと海』を出版。111篇の詩のうち、34篇が楽譜になって収録されているというものである。この時、尾崎喜八が序文を書いたのがきっかけとなり、彼に師事。出版後は、校歌や合唱曲の作詞にも力を注いだ。合唱曲では、1966年に組曲「愛の風船」(作曲:大中恩)で第21回文部省芸術祭奨励賞を、1981年に組曲「花之伝言(はなのことづて)」(作曲:石井歓)でも同じく第36回文化庁芸術祭優秀賞を受賞している。
著書
- レモンと海(カワイ楽譜、1964年)
- ツッピンとびうお(音楽之友社、1976年) - 「中村千栄子“母と子の詩”選集」という副題がある。子供のための歌66曲を譜面つきで収録。
- わたしの風紋(新潟日報事業社出版部、1983年) - 40篇の詩、9つの合唱組曲、31篇の随筆から成る。
主な作詞作品
()内は作曲者。
子供のための歌
- 秋のえかきさん(湯山昭)
- あきのバイオリン(越部信義)
- あたらしいうち(湯山昭)
- いやんなっちゃう(小森明宏)
- おおきくなったらぼく(大中恩)
- おひさまはアイロン(湯山昭)
- かいてんもくば(山崎八郎)
- シンデレラの馬車(中田喜直)
- すてきなテレビ(池辺晋一郎)
- ちいさいくじらおおきいくじら(小森明宏)
- ちいさくなったぼうし(大中恩)
- ツッピンとびうお(櫻井順)
- パチャママ(服部公一)
- 花火(萩原英彦)
- ふしぎなでんき(佐藤眞)
- フラミンゴってなんだか(溝上日出夫)
- ママとかけっこ(溝上日出夫)
- ゆかいなめ(湯山昭)
- 夕日が好きなお父さん(越部信義)
合唱曲
- 女声合唱のためのソネット「愛の花束」(小川寛興)
- 女声合唱組曲「愛の風船」(大中恩)
- 女声合唱組曲「愛のメモリアル」(有馬礼子)
- 混声合唱組曲「明日香の風」(石井歓)
- ソプラノと男声合唱のためのカンタータ「あすへの足音」(石井歓)
- 混声合唱のためのノスタルジア「五つの鼓動」(後藤丹)
- 混声合唱曲「歌ごえはささやく」(湯山昭)
- 混声合唱組曲「海の童話」(中田喜直)
- 女声合唱のためのファンタジー「越後の恋歌」(湯山昭)
- 混声合唱組曲「風のうた」(大中恩)
- 女声合唱のためのエチュード「風の話」(平井哲三郎)
- 少年少女のための合唱組曲「くいしん坊の世界旅行」(越部信義)
- 女声合唱のためのエッセイ「古寺慕情」(溝上日出夫)
- 少年少女のための合唱組曲「佐渡の四季」(岩河三郎)
- 混声合唱組曲「潮風のうた」(多田武彦)
- 女声合唱組曲「少女のいる画集」(石井歓)
- 混声合唱のためのバラード「杉の木のうた」(石井歓)
- 女声合唱組曲「生活の歌」(磯部俶)
- 混声三部合唱曲「石仏」(岩河三郎)
- 女声合唱組曲「その日の2時のために」(有馬礼子)
- 女声合唱組曲「小さな世界のなかに」(磯部俶)
- 女声合唱組曲「嫁ぐ日に」(岩河三郎)
- 児童合唱曲「トランペット吹きながら」(湯山昭)
- 混声(女声・男声)合唱曲「日本のみのり」(小山清茂)
- 混声(男声)合唱組曲「花之伝言」(石井歓)
- 日向の讃歌(石井歓)
- 女声合唱組曲「ふたりだけの展覧会」(平野淳一)
- 少年少女のためのメルヘン「星の絵本」(岩河三郎)
- 少年少女のための合唱組曲「祭と子ども」(岩河三郎)
- 少年少女のための合唱バラード「武蔵野の子ども」(岩河三郎)
- 混声三部合唱曲「野生の馬」(岩河三郎)
- 混声合唱組曲「雪国のくらしのうた」(岩河三郎)
- 女声合唱組曲「ユニフォームのわたし」(磯部俶)
- 独唱、合唱と管弦楽のためのカンタータ「良寛と貞心」(石井歓)
歌曲
- 青い群像(溝上日出夫)
- 馬酔木に寄せて(溝上日出夫)
- 蟹の話(有馬礼子)
- カンナ(市場幸介)
- さよなら(溝上日出夫)
- すてきなレモン(中田喜直)
- 夏の日のレクイエム(小林秀雄)
- まだ見ぬ 小さな あなた(清瀬保二)
- レモンと海(湯山昭) - 女声合唱版あり。
校歌
市町村歌
その他の歌
- ここは瀬戸内(芥川也寸志)
- こんな時があってもいいね(浜口庫之助)
- 小さな海の絵本(川津恒一)
- 遠い風紋(長谷川きよし)
- 雪映えの町(小川寛興)
参考文献
- 『わたしの風紋--中村千栄子 詩<うた>の世界--』「わたしの風紋」実行委員会、2002年(没後5周年演奏会にあたって出版されたプログラムおよび記念誌)
外部リンク