ロールス・ロイス・ファントム

ファントムVI(1970年)

ファントム (Phantom) は、ロールス・ロイス・ブランドの高級車。歴史上、以下の二者に大別される。

  1. イギリスのロールス・ロイス (Rolls-Royce Ltd, Rolls-Royce Motors) が、1929年から1991年までの間、ファントムIファントムIIファントムIIIファントムIVファントムVファントムVIの6世代に渡り製造・販売していた乗用車。
  2. ドイツの自動車会社BMWが設立したロールス・ロイス・モーター・カーズが、2003年から2017年の間に製造・販売したファントムVII、2017年に発表したファントムVIII乗用車。

概要

1998年ヴィッカースが所有していたロールス・ロイス (Rolls-Royce Motors) を買収したBMWは、1998年新たな自動車会社ロールス・ロイス・モーター・カーズを設立、同社として初めての乗用車として開発され、2003年から発売されたモデルが「ファントム」である。

「ファントム」は、ロールス・ロイスの最上級サルーンに使われてきた名称であり、このロールス・ロイス・モーターカーズによる「ファントム」にも、パルテノン神殿をモチーフとした大型のフロントグリルを始めとする特徴的なデザインが引き継がれた。また、かつてのロールスロイス車にも見られたコーチドア(観音開き)が採用されている。車室内インテリアのメタル仕上げ部分には、従来の「サテン・クロム」と呼ばれるやや光沢の控えめなクロムに加えて、より透明感のある光沢に仕上げたブルー・クロムが用いられている。

市販車はV型12気筒エンジンが搭載されているが、試作段階では9リットルV型16気筒エンジンが搭載される計画であった。しかしながら、オーバースペックという理由で却下され、3基試作されたエンジンは、ロールス・ロイスによってしばらく保管されていた。その内の1基を、『Mr.ビーン』で知られる俳優ローワン・アトキンソンが、ロールス・ロイスに直接交渉し、快諾を得て、所有するファントムに載せ換えた。(BBCトップ・ギア』シリーズ17・エピソード4より)[1]

当初は単一のボディバリエーション(4ドアサルーン)のみだったが、途中からホイールベースを延長し後席の空間を広げた「EWB」 (Extended Wheel Base) が追加されている。また、2ドアクーペ (Phantom Coupé) およびオープンカー (Phantom Drophead Coupé) も追加され、標準モデルを含むとファントムは4種のバリエーションを持つことになった。

2016年2月23日、メーカーにより、年内に生産を終える計画であることが発表された[2]。2017年1月末、最終モデルがラインオフし、生産終了となった[3]

2017年7月27日、新型モデルが発表された[4]

車種

ファントムI

ファントムI

ファントムIは1925年にシルヴァーゴーストの後継として登場した。[5]

ファントムII

ファントムII

ファントムIIは1929年から1935年まで製造された。[6]

ファントムIII

ファントムIII

ファントムIIIは1936年から1939年の間に715台が製造され、シリーズAからシリーズDが存在する。[7]

ファントムIV

ファントムIV

ファントムIVは1950年から1958年の間に18台のみ製造され、5台は英国のロイヤルファミリーへ、3台はスペイン政府へ、3台はクウェートのハキムへ、イラクの王室へ2台、イラン国王へ2台届けられている。現存する16台のうち5台が当初の所有者や後継者が所有しており、4台が政府コレクションとして管理、2台は博物館に展示されている。[8]

ファントムV

ファントムV

ファントムVは1963年に発表された。生産台数は112台。[9]

ファントムVI

ファントムVI (1972年)

ファントムVIは1968年のロンドンモーターショーで発表され、1991年まで製造された。[10]パルテノン神殿風のフロントグリルで縦長式のものが採用された最後のモデル。昭和天皇御料車にも採用された。[11]

ファントムVII

ファントムVII(2003年)

ファントムVIIは、BMWフォルクスワーゲングループからロールス・ロイスのブランドを取得してから最初に発表されたモデルで、2003年に発表された。ホイールベースを延長したEXBや2ドアクーペ、オープンモデルとなるドロップヘッドクーペが追加され、年間4000万台を売り上げた。2017年に生産を終了した。[12]


ファントムVIII

ファントムVIII(2018年)

ファントムVIIIは2017年にロンドンで発表された。エンジンはこれまでの自然吸気からツインターボに変更。世界一静粛な車を実現するために、過去最大級の鋳造アルミ製ボディジョイントや高性能な吸音素材を採用したほか、「サイレント・シール」というタイヤを開発し、時速100km/hにおいての騒音を先代比で約10%軽減した。また、安全運転支援システムを搭載した。[13]

ホテルによる使用

香港の高級ホテルザ・ペニンシュラ香港」では、ロールス・ロイスを1970年代よりホテル専用の送迎車として所有しており、現在は14台の緑色のファントムEWBをホテル-香港国際空港間の送迎などに利用している。なおこれは単一の企業が所有するファントムとしては最大の台数であり、同ホテルは「世界最大のファントム・フリート」と称している。2014年にはマカオで「ルイ13世ホテル」(La Villa Du Comte)が過去最多となる30台の真紅のファントムEWBを注文し、記録を塗り替えた。そのうちVIP用の2台は塗料に純金を調合して外装と内装を純金やダイヤモンドで装飾した史上最高級のファントムである[14]

また、ブルジュ・アル・アラブドバイ)と、ロンドンを代表する高級ホテルであるリッツ・ロンドンでも送迎車として採用している。リッツ・ロンドンの車両は「リッツ・ブルー」に塗られたファントムEWBであり、自店とヒースロー空港ガトウィック空港との間の送迎などに利用している。

正規ディーラー

脚注

  1. ^ Rowan Atkinson in Star in a Reasonably Priced Car. BBC. 23 July 2011. YouTubeより2021年8月18日閲覧
  2. ^ ロールスロイス ファントム 現行型、年内に生産終了へ…13年の歴史に幕”. Response.jp (2016年2月25日). 2016年2月25日閲覧。
  3. ^ ロールスロイス ファントム 現行型、生産終了…14年の歴史に幕”. Response.jp (2016年2月9日). 2017年2月27日閲覧。
  4. ^ ロールス・ロイスが新型「ファントム」を発表”. webCG (2017年7月28日). 2019年11月30日閲覧。
  5. ^ https://kurukura.jp/article/190717/
  6. ^ https://www.vehicle.city.hiroshima.jp/hyperbook_web/model/detail?id=29936
  7. ^ https://www.autocar.jp/post/957642
  8. ^ https://octane.jp/articles/detail/7523
  9. ^ https://www.autocar.jp/post/735132/2
  10. ^ https://www.wakuimuseum.com/heritage/car_detail.html?cid=23
  11. ^ https://gazoo.com/feature/gazoo-museum/meisha/grille/19/01/30/
  12. ^ https://www.businessinsider.jp/post-100531
  13. ^ https://www.gqjapan.jp/car/news/20170831/rolls-royce-phanto
  14. ^ ゴールドのファントム、マカオTHE13ホテルへ”. ロールス・ロイス・モーター・カーズ (2017年5月7日). 2017年6月30日閲覧。[リンク切れ]

関連項目

外部リンク

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