『メルト』は、ryoが作詞・作曲を務め、ボーカルに音声合成ソフト「初音ミク」を使用して動画共有サイトのニコニコ動画にて公開された楽曲。後に、supercellの楽曲となったボーカロイド曲でもある[1][2][3]。
曲の概要
メルトは、一人の「人間」で、確かな人格のある16歳の少女として初音ミクを扱い、彼女がしそうだと考えられる恋愛を描いた楽曲である[4]。
投稿まで
作曲者のryoは小学校の頃からピアノを始め、高校1年生の時から作曲を学んでいた[5]。
2007年の秋にパソコンソフト売り場でVOCALOID「初音ミク」を入手したryoは、当時ニコニコ動画で人気だった初音ミクを使った動画を見て、「最初はカバー曲を歌わせていたが、そのうちカバー曲を歌わせるだけでなく、真剣に作曲をしたくなった」として自作の楽曲投稿を始めた[5]。
そして、自作で投稿したものとしては2曲目にあたる楽曲『メルト』を2007年12月7日に投稿している[5]。
ニコニコ動画の動画投稿後
2007年12月7日午後8時46分、ryoは動画投稿サイトのニコニコ動画に『初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「メルト」』と題した動画を投稿し、その演奏だけでなく、歌詞や旋律にも注目が行き、大ヒットを記録した[5]。
メルトの動画はその後も順調に再生回数を伸ばし、2008年8月時点では250万回以上[6]、2008年12月時点では330万回以上[7]、2009年3月時点では400万回[5]、2017年12月時点では1170万回以上[8]再生されている。
メルトの投稿を受けて、ニコニコ動画などの動画投稿サイトではメルトの「歌ってみた」動画などの派生作品が多数投稿されており、発表から1年ほどしか経っていない2008年12月時点で既に関連動画を含めた累計再生回数は1000万回を超えていたと言われている[6][7]。
また、『メルト』発表後には曲の依頼が増えるとともに、複数のレーベルからの誘いがあり、ryoはその中からソニーのレーベルに参加することを決めたとしている[5]。
2009年に発売された『初音ミク Project DIVA』の初代に収録された39曲の中にも『メルト』は選ばれている[9]。
2017年にはryo自身が再度アレンジしたものをやなぎなぎが『メルト 10th ANNIVERSARY MIX』として発表している[10]。
評価と影響
2007年12月7日午後8時46分にryoがニコニコ動画に投稿した『初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「メルト」』と題された動画は2024年3月現在、再生数が1600万回以上となっている他、100万件を超えるコメントが現在までに寄せられている[2]。
2019年12月7日に「音楽・サウンド」「初音ミク」「音楽」の3部門で1位を獲得した他、2021年のねとらぼの調査における2021年1月時点でのニコニコ動画におけるボーカロイド曲の再生回数ランキングで、1位の『みくみくにしてあげる♪【してやんよ】』、2位の『千本桜』に続いて3位にランクインしたり、JOYSOUND平成カラオケランキングの平成VOCALOID TM部門で『千本桜』に続いて2位を獲得したりしているなど、投稿から10年以上経った現在も人気が根強く残っている[2][11][12][13]。
また、ボーカロイドに関する調査が行われる際に、しばしば『メルト』は実験に使用されている[14][15]。
メルトショック
2007年12月13日に、多数のユーザー達が『メルト』の歌ってみた動画を投稿し、原曲を含むカバー曲がマイリストランキングの上位を独占するという事態を引き起こした。この一連の現象は「メルトショック」と呼ばれ、それまで初音ミク自身を題材にしたキャラクターソング的な楽曲が大半を占めていた中、メルト以降、バラエティ豊かなボカロ曲が投稿されるようになった。初音ミクにとってもシンガーとして広く受け入れられ、役割を大きく広げるきっかけとなり、後のボカロシーンの流れを決定付けた。
評価の声
米津玄師は、『メルト』のヒットを見て初音ミクのことを知り、ボカロの世界に入ったと語っており[19]、ryoとの対談では「ryoさんがいたからボカロシーンが始まったというのは間違いなくありますね[20]。」と述べ、「メルトを最初に聴いたんですけど、メロもいいし言葉もいいし、ドラムもスネアの「スタタン!」ってフレーズがめっちゃ気持ちよかったし、すごくちゃんとしたポップソングなんですよ。でもそれだけじゃない、計り知れないものがあるんです。言語化が難しいんですけど、たとえばミスチルとかサザンって、「偉大なるスタンダードだ」って言われるじゃないですか。けど、Mr.Childrenやサザンオールスターズの音楽を紐解いていくとめちゃくちゃ複雑なことをやってるし、“ただ普通にいい曲”じゃないんですよ。ryoさんの曲もおそらく同じような構造で成り立ってるんだろうなっていうのを最初に聴いたときに思って。だから純粋に音楽に強度がある。すごく影響を受けました[21]。」と語っている。
Kz(livetune)は、「メルトは完璧な曲だと思っています。僕は初めてメルトを聴いたときから、この曲を超えるボカロ曲にはまだ出会っていない気がしているんです。やっぱryoさんってすげえなって思っています。」と述べ、「この曲が登場したことで、あの界隈がメルト一色になっちゃったんですよね。ある意味世界が崩壊した感じでした。黒船が来たみたいな衝撃だったんですよ。メルトがきっかけでボカロに興味を持った人もめちゃくちゃ多かったし。ただ時間が経つにつれて「メルトが生まれて本当によかったな」と思うようになったんです。メルトのようなほかを圧倒してしまうような作品が登場しなかったら、ボカロの文化っていうのは本当に小さな集まりで少ない人数だけが楽しむもので終わっていたかもしれないですから。いい意味で垣根を取り払ってくれたのがメルトなんです[22]。」と語っている。
2019年4月21日放送の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)内の「実はあの曲が超大事だった!関ジャム流 平成音楽史」にて、ヒャダインは平成後半で挙げる大事な曲として『メルト』を推薦し、次のように評している[23]。
ボカロの最初の曲としてsupercell feat.初音ミクでみんなでプロデュースすることでボカロPが増えたきっかけになった。さらに”歌い手”というボカロ曲を肉声で歌う文化もできた源流がここにあった。現在ではヒットチャートにボカロが登場することが珍しく、米津玄師も「ハチ」名義でボカロPとして活躍していたのは有名な話。これらを知らないのは”遅れている”のではなく、音楽の聴き方の多様化と、趣味の細分化が理由でもある。この技術の発達によってプロの道が大きく広がったとも言われている。
収録シングル・アルバム
エピソード
- 『メルト』に使われた背景の絵は壁紙サイトから持ってきたものであったが、メルト投稿後にその絵自体が「119」(ひけし)という人物が描いたものを無断転載したものだということが発覚している[6]。しかし、絵の作者の119はこれを許したため、異例のコラボレーションとなったというエピソードが後のインタビューで判明している[6]。これがきっかけとなり、119は後にsupercellに絵師として参加している[25]。
- 後に、『メルト』のサムネイルを作っているのが「119」(ひけし)だったことから、三輪士郎はクリエイター集団の「supercell」に絵師として加入している[26][27]。
脚注
参考文献
書籍
外部リンク
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