マッツァル国立公園 (-こくりつこうえん、エストニア語 : Matsalu rahvuspark )はエストニア ・ラーネ県 にある国立公園 であり、また自然保護区 でもある。ヨーロッパ において渡り鳥 が秋を過ごすのに最も重要かつ大規模な場所の一つである。
マッツァルの歴史
マッツァルの地において初の科学的な調査が行われたのは1870年 頃のことで、タルトゥ大学 で自然史博物館 のキュレーター を務めていた、ヴァレリアン・ルソー(Valerian Russow)がマッツァル湾 (英語版 ) 近郊の鳥類 の概要を示したのが最初である[1] 。1928年 から1936年 にはエーリック・クマリ(Eerik Kumari)がマッツァルの鳥類を調査し、この地を鳥類保護区にすることを提言した[1] 。
ケーム鳥類観察塔(Keemu bird watching tower)
1945年 には科学的調査は正式なものとなり、エストニア科学アカデミー の植物学 および動物学 の研究基地がPenijõeに設立された[2] 。
そして1957年 にマッツァル自然保護区 は設立された。目的は主に鳥類の巣作り 、換羽 (羽毛の生え替わり)、渡り の保護などである。初の常勤者 である管理者 や科学者 は翌1958年 から勤務を開始した。Penijõe研究基地の業務は新たに作られた自然保護区の管理センターに引き継がれた[1] 。鳥類標識調査(鳥に個体識別 のための足輪を装着し、行動範囲を追跡調査する手法)[3] の管理を行う鳥類標識調査センター(エストニア語 : Rõngastuskeskus )もまたPenijõeに置かれた[4] 。
1976年 、マッツァルは「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約 」(ラムサール条約 )登録湿地に加えられた[5] [6] 。
2003年 には、欧州評議会 からマッツァル自然保護区における多数の鳥類や他の種 の生息に関する多様性の維持に成功している事が評価され、欧州自然保護地域賞 (英語版 ) (European Diploma of Protected Areas)を受賞した。これはエストニアで最初にして唯一のことである[7] [8] 。
2004年 にはこれまでの自然保護区の領域がマッツァル国立公園 として格上げされた[9] [10] 。
マッツァルの自然
ケーム鳥類観察塔からのマッツァル湾の眺望
マッツァル国立公園は、カサリ川 (英語版 ) と周囲のデルタ地帯 に加えて、マッツァル湾を取り囲む486.6km2 の陸地と水域の範囲に及ぶ。それらには氾濫原 、沿岸の草原 、ヨシ原 、森林 地帯、そして40以上の島々 がある、湾 に面したヴァイナメリ海 の一部からなる[9] 。
マッツァル湾は浅くて、塩分は薄く、栄養分に富んでいる。湾の奥行きは18kmであり、幅は6kmである。平均水深はわずか1.5mしかなく、最大水深でも3mに過ぎない[9] [1] 。
カサリ川はマッツァル湾に流れ込むいくつかの川の中で、最大のものである。カサリ川のデルタ地帯は1930年 から1960年 に行われた浚渫 により、天然の状態から改変されている。主要な流路を囲んでいるヨシ とイグサ からなる湿原は、毎年西へ100m拡大している[9] 。
飛行中のクロヅルの群れ
川は3,500km2 以上の流域から、栄養分に富んだ沈殿物を湾内に運び込む。沈殿物は川の河口 に堆積し、それはヨシ原の拡大の要因となっている。[10] マッツァルでは合計275種の鳥類が記録された。それらのうち175種はこの地で巣 を作り、33種は移動途中の水鳥 である。ノーザンパイク 、ヨーロピアンパーチ などの49種の魚類 と47種の哺乳類 、それに加えて772種の維管束植物 が記録されている[10] [9] [6] 。
毎年春に200万羽以上の水鳥(10,000-20,000羽のコハクチョウ 、10,000羽のスズガモ 、ホオジロガモ 、キンクロハジロ 、カワアイサ およびカリガネ などのその他多数の種)がマッツァルを通過する。最大で20,000羽に達するカオジロガン の群れ、20,000羽以上のハイイロガン 、そして数千羽の渉禽類 は沿岸の牧草地 で羽を休める。もっとも多数(約160万羽)を占める渡り鳥はコオリガモ である。おおよそ35,000-40,000羽のカモ 類はヨシ原で春のひとときを過ごす[10] [9] [6] 。
秋になると、約30万羽の水鳥がマッツァルを通過していく。マッツァルの湿地 は、クロヅル のヨーロッパ 最大の飛来地として知られている。クロヅルのいままで記録された中で最大の数は23,000羽であった[11] 。
マッツァル国際自然映画祭
マッツァル国際自然映画祭(エストニア語 : Matsalu loodusfilmide festival )は毎年秋にリフラ(Lihula)という街の近郊で催される。映画祭は非営利団体MTÜ Matsalu Loodusfilmide Festivalによって組織され、2003年の後半に企画された[12] 。
最初の映画祭は2003年 10月3日から5日にかけて、7カ国から23本の映画が互いに競い合った。その年は2,500人以上の観客が訪れた。2回目は2004年 の9月23日-25日に開催され、14カ国から35本の映画と、5,000人以上の観客が集まった。3回目は2005年 の9月22日-25日の4日間開催され、16カ国から39本の映画と、7,000人以上の観客が集まった。こうして2007年 まで毎年開催され、回を重ねる毎に規模が大きくなっている[12] [13] 。
脚注
※以上の文献の内、エストニア語のものは日本語版作成の際、内容の参照はしておりません。
外部リンク