『ホワイト・クイーン 白薔薇の女王』(ホワイト・クイーン しろばらのじょうおう、原題: The White Queen)は、2013年に放送されたイギリスのテレビドラマシリーズ。フィリッパ・グレゴリー(英語版)の小説『The Cousins' War』シリーズの『The White Queen(英語版)』『The Red Queen(英語版)』『The Kingmaker's Daughter(英語版)』を原作に、薔薇戦争に巻き込まれた女性たちの物語を描く[4]。全10話のミニシリーズで、イギリスでは2013年6月から8月にかけてBBC Oneで、アメリカではStarzで放送された[5]。
本作は批評家から高い評価を受け、ゴールデン・グローブ賞3部門、プライムタイム・エミー賞4部門にノミネートされた。
2017年には本作の続編となる『ホワイト・プリンセス エリザベス・オブ・ヨーク物語』が、2019年には『スパニッシュ・プリンセス キャサリン・オブ・アラゴン物語』が放送された[6]。
日本では、2020年4月からSTARZPLAYで日本語字幕・吹き替え版が配信され[7]、2021年1月からチャンネル銀河で日本語字幕版が放映されている。
あらすじ
15世紀後半、イングランドの王位を巡り、ランカスター派とヨーク派とが30年にわたって争った薔薇戦争。赤薔薇を紋章とするランカスター派から、白薔薇を紋章とするヨーク派エドワード4世に嫁いだエリザベス・ウッドヴィルを中心に、リチャード3世の妃となるアン・ネヴィル、そして薔薇戦争を集結に導いたヘンリー7世の母であるマーガレット・ボーフォート、3人の女性それぞれの野望と闘いを描く。
本作の大きな特徴として、シェイクスピアによって決定づけられた英国史における醜悪にして稀代の極悪人であるリチャード3世のイメージを一変させ、思慮深く誠実な美男子として描いていることがあげられる[8]。
キャスト
ヨーク派
リヴァース家
- 演 - レベッカ・ファーガソン、吹替 - 藤田奈央[9]
- ランカスター派の下級貴族の娘。ヨーク派との戦いで夫を失うが、エドワード4世に見初められてヨーク朝の初代王妃となる。
- 母譲りのまじないを使うことで敵対者には魔女と呼ばれるが、強固な意志と夫への愛で激動の人生を力強く生きる。
- 演 - ジャネット・マクティア、吹替 - 宮寺智子
- エリザベス・ウッドヴィルの母。かつてマーガレット・オブ・アンジューに伴ってフランスから渡り、側仕えをしていた。
- 水妖メリュジーヌの子孫であると自認し、予見の力を持ち、まじないを駆使してしたたかに戦乱の世を生きる。
- 演 - ロバート・ピュー
- エリザベス・ウッドヴィルの父。低い身分の出であったがジェケッタとの結婚で爵位を得、エリザベスの結婚によって王家の重臣となる。
- 演 - ベン・ラム(英語版)
- エリザベス・ウッドヴィルの弟。エドワード4世の側近となる。誠実で公平な人物。エリザベスの最大の腹心であり、王位継承者であるエドワード王子の後見人となる。
- 演 - アシュリー・チャールズ
- エリザベス・ウッドヴィルと前夫との間に生まれた長男。王妃となった母の側近となる。
- 演 - ディーン=チャールズ・チャップマン
- エリザベス・ウッドヴィルと前夫との間に生まれた次男。王妃となった母の側近となり、叔父アンソニーと共に、異父弟であるエドワード王子の後見役となる。
- 演 - イヴ・ポンゾンビー
- エリザベス・ウッドヴィルの妹。王妃となった姉の側仕えをつとめるが、相次ぐ内紛に耐えかねて宮廷を去る。
- 演 - ソニー・アシュボーン・サーキス
- エリザベス・ウッドヴィルとエドワード4世の長男。王位継承者としてウェールズで養育され、12歳で王位争いに巻き込まれる。
- 演 - フレイア・メイヴァー(英語版)
- エリザベス・ウッドヴィルとエドワード4世の長子。父王の後継を巡る内紛の中で和解を願い、かたくなに戦いを続ける母エリザベスと対立する。祖母と母から、予見とまじないの力を受け継いでいる。
- 叔父リチャードを慕うが、のちにヘンリー7世となるヘンリー・チューダーの妻となる。
ヨーク家
- 演 - マックス・アイアンズ、吹替 - 森宮隆
- タウトンの戦いでランカスター派に勝利して王座に就き、ヨーク朝を開く。「ヨーク三兄弟」の長男。好色で愛人は数知れず、それがのちの王位継承にも影響することとなる。
- 従兄弟であり側近であるウォリック伯の謀反に遭い、自らの即位に尽力したウォリック伯への思慕を断ち切れないまま敵対することとなる。
- 演 - デヴィッド・オークス
- エドワード4世の弟で「ヨーク三兄弟」の次男。母に溺愛されているものの、三兄弟の中では疎外感を抱いている。
- 野心が強く、王位をちらつかせるウォリック伯の傀儡となり、その娘イザベル・ネヴィルと政略結婚する。
- 演 - アナイリン・バーナード
- エドワード4世の弟で「ヨーク三兄弟」の三男。のちのリチャード3世。騎士道と名誉を重んじ、兄であるエドワード4世に忠実に付き従う。
- 従兄弟の娘であるアン・ネヴィルに少年の頃から惹かれており、父の反乱で苦境に陥ったアンを妻とする。
- 演 - キャロライン・グッドール
- ヨーク三兄弟の母。薔薇戦争の発端となった3代ヨーク公の妻だが、母方の祖父はランカスター家の出であった。王妃となったエリザベスを敵視し続ける。
- 演 - ジェームズ・フレイン、吹替 - 綱島郷太郎
- エドワード4世の従兄弟(セシリー・ネヴィルの兄の子)で側近。ランカスター朝を斃した立役者であり、「キングメーカー」の異名を持つ。
- ヨーク三兄弟の兄のような存在であったが、エリザベスとの結婚をきっかけにエドワード4世の排除を目論み、王弟ジョージを王位に就けようと画策する。
- 演 - エレノア・トムリンソン
- ウォリック伯の長女。政略結婚によって王弟ジョージの妻となる。愛ある結婚をしたエリザベスを密かにうらやみつつ、敵として恐れる。
- 演 - フェイ・マーセイ(英語版)、吹替 - 濱口綾乃
- ウォリック伯の次女。政略結婚により、若くして自らの一族を憎むエドワード王太子に嫁がされ、孤立無援の中で強く生きることを余儀なくされる。
- エドワード王太子の戦死後、王弟リチャードと再婚し、のちにイングランド王妃となる。一族の敵であるエリザベスを憎み続ける。
- 演 - ジュリエット・オーブリー
- ウォリック伯の妻。フランスに渡ったのち、アンジュー妃と共にイングランドに再上陸するが、夫ウォリック伯の戦死を知り、娘アンを見捨てて修道院に逃げ込む。
- 演 - エミリー・バリントン(英語版)
- エドワード4世の愛妾。王の死後、王弟リチャードに宮廷から追放され、アンソニー・ウッドヴィルの元に身を寄せる。
- 演 - ショーン・ドゥーリー(英語版)
- リチャードの側近。エドワード王子をロンドン塔に幽閉する。リチャード3世により、ロンドン塔長官に任命される。
- 演 - リジー・マッキナニー
- セシリー公爵夫人の側近であり、密使もつとめる。
ランカスター家
- 演 - フィーラ・バーテンス(英語版)
- フランスから嫁いだランカスター朝ヘンリー6世の妃。勇猛な為政者であり、精神的に不安定になっていた夫に代わって軍を率い、エドワード4世たちの父であるヨーク公を倒したが、敗走してフランスに亡命していた。
- ウォリック伯との同盟を機に再びイングランドに戻り、軍を率いてヨーク軍との戦いに臨む。
- 演 - デイヴィッド・シェリー(英語版)
- ランカスター朝最後の王。統治下でヨーク公の反発が起きたことが薔薇戦争の引き金となる。
- 戦乱の中で正気を失い、周囲の思惑に利用されるのみの存在となる。
- ヘンリー6世とマーガレット・オブ・アンジューの息子。
- 政略結婚によって宿敵であるウォリック伯の娘アンの夫となるが、1471年の戦いで命を落とす。
- 演 - アマンダ・ヘイル(英語版)、吹替 - 東内マリ子
- ランカスター派の貴族。政争に翻弄され、母レディ・ビーチャムに言われるままに政略結婚を繰り返す。
- 自らの父が自殺という神に背く罪を犯したことを重く受け止め、信仰を重んじながらも、息子を王位に就け、王母の地位を得るためにあらゆる手を尽くす。
- のちにヘンリー7世となるヘンリー・チューダーの母。
- 演 - マイケル・マーカス(英語版)
- マーガレット・ボーフォートと、その2番目の夫であるエドマンド・テューダー(ヘンリー6世の異父弟)の息子。のちのヘンリー7世。
- 生まれる前に父が亡くなったため、叔父である後見人ジャスパー・チューダーを父のように慕って育つ。
- 演 - トム・マッケイ
- ヘンリー6世の異父弟。亡兄の元妻であるマーガレットと密かに惹かれ合う。
- 忠誠を尽くして甥であるヘンリー・チューダーを養育し、ヘンリー7世擁立に貢献する。
- 演 - マイケル・マロニー(英語版)
- マーガレット・ボーフォートの3番目の夫。妻とジャスパーの関係に気付いている。
- ランカスター派の出でありながら、エドワード4世の治世に共感してヨーク派として従軍する。
- 演 - レオ・ビル
- ヘンリー・スタッフォード卿の従者。
- 演 - ルパート・グレイヴス
- マーガレット・ボーフォートの4番目の夫。マーガレットとは利害の一致した契約結婚関係となる。
- 状況に応じて与する派閥を自在に変えながら動乱の世を立ち回る老獪な策略家。リチャード3世の重臣となる。
- 演 - フランシス・トメルティ(英語版)
- マーガレット・ボーフォートの母。自らも政略結婚を繰り返し、それを娘のマーガレットにも強いてきた。
- 演 - ヒュー・ミッチェル
- マーガレット・ボーフォートの異父弟。戦場経験のないままマーガレットに言いくるめられて出兵し、謀略に巻き込まれて命を落とす。
- 演 - アーサー・ダーヴィル
- マーガレット・ボーフォートの3番目の夫であるヘンリー・スタッフォードの甥。12歳のとき、ジェケッタ・ウッドヴィルの8歳の娘キャサリンと政略結婚させられる。
- ウッドヴィル家を憎むようになり、のちにエドワード4世の後継争いでリチャード側につく。
- 演 - ルパート・ヤング(英語版)
- ヨーク派の貴族。亡命したジャスパー・チューダーに代わってヘンリー・チューダーの後見人となるが、ウォリック伯との戦いで捕らえられ、処刑される。
- 演 - マイケル・ジェン
- マーガレット・ボーフォートの主治医。エリザベスとの密使をつとめる。
- 演 - アンドリュー・ガワー(英語版)
- スタンリー卿と前妻の間の息子。スタンリー卿の手駒として働く。
エピソード
製作
製作には2,500万ポンドの予算が用意され、撮影に120日を要した。撮影セットは、ダンジョン、宮殿、城、12の国宴、2つの戴冠式を含む250のセットが作られた[22]。撮影は2012年9月に始まり、2013年3月まで続いた[23]。
評価
批評
本作は批評家から高い評価を受けている。批評集積サイトのRotten Tomatoesには20件のレビューがあり、批評家支持率は80%、平均点は10点満点で7.65点となっている[24]。また、Metacriticには14件のレビューがあり、加重平均値は70/100となっている[25]。
受賞
脚注
注釈
出典
- ^ “Composers: John Lunn”. Coolmusicltd.com. 3 April 2012時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月23日閲覧。
- ^ a b Filothea: BBC: Films "The White Queen" television series in Belgium/Ghent Linked 2013-06-17
- ^ BBC Media Centre: The White Queen Linked 2013-06-17
- ^ “BBC - The White Queen, a new ten-part drama for BBC One - Media Centre”. www.bbc.co.uk. 2020年6月23日閲覧。
- ^ “Breaking News - Starz to Air Advance Screening of "The White Queen" Following "Magic City" Season Two Finale on Friday, August 9 at 10PM ET/PT | TheFutonCritic.com”. www.thefutoncritic.com. 2020年6月23日閲覧。
- ^ “Reign over for The White Queen” (英語). belfasttelegraph. ISSN 0307-1235. https://www.belfasttelegraph.co.uk/entertainment/news/reign-over-for-the-white-queen-29514456.html 2020年6月23日閲覧。
- ^ “『ホワイト・クイーン 白薔薇の女王』をApple TVで”. Apple TV. 2020年6月23日閲覧。
- ^ ホワイト・クイーン 白薔薇の女王
- ^ “ホワイト・クイーン 〜白薔薇の女王〜 DVD-BOX”. TCエンタテインメント 作品情報. 2021年3月26日閲覧。
- ^ Tartaglione, Nancy (17 June 2013). “In UK Debut, Starz/BBC Drama The White Queen Wins Sunday Night Ratings Crown”. Deadline Hollywood. 14 June 2015閲覧。
- ^ Szalai, Georg (17 June 2013). “The White Queen Draws More Than 5 Million Viewers in BBC Debut”. The Hollywood Reporter. 14 June 2015閲覧。
- ^ Kissell, Rick (13 August 2013). “Discovery Has Bite With Sharks as CBS Tops Week Despite Blackout”. Variety. 30 May 2015閲覧。
- ^ “Saturday's Cable Ratings: Lifetime's "Baby Sellers" Tops Viewers, Demos”. The Futon Critic (20 August 2013). 30 May 2015閲覧。
- ^ “Saturday's Cable Ratings: Nickelodeon's "Swindle," Lifetime's "Escape from Polygamy" Top Charts”. The Futon Critic (27 August 2013). 30 May 2015閲覧。
- ^ “Saturday's Cable Ratings: ESPN Dominates with Notre Dame/Michigan Coverage”. The Futon Critic (10 September 2013). 30 May 2015閲覧。
- ^ “Saturday Cable Ratings: College Football, "Sam & Cat" Top Charts”. The Futon Critic (17 September 2013). 30 May 2015閲覧。
- ^ “Saturday's Cable Ratings & Broadcast Finals: College Football, "Sam & Cat" Lead Viewers”. The Futon Critic (24 September 2013). 30 May 2015閲覧。
- ^ “Saturday's Cable Ratings & Broadcast Finals: College Football, "48 Hours" Lead the Pack”. The Futon Critic (1 October 2013). 30 May 2015閲覧。
- ^ “Saturday's Cable Ratings & Broadcast Finals: College Football Snares Top Spots”. The Futon Critic (8 October 2013). 30 May 2015閲覧。
- ^ “Saturday Cable Ratings & Broadcast Finals: ALCS, NASCAR & College Football Top Charts”. The Futon Critic (15 October 2013). 30 May 2015閲覧。
- ^ “Saturday's Cable Ratings & Broadcast Finals: ALCS Finale Triumphs Over College Football”. The Futon Critic (22 October 2013). 30 May 2015閲覧。
- ^ “BBC - The White Queen - Media Centre”. www.bbc.co.uk. 2020年6月23日閲覧。
- ^ togetherteam (2012年8月20日). “Bruges gears up for BBC filming” (英語). Together. 2020年6月23日閲覧。
- ^ (英語) The White Queen, https://www.rottentomatoes.com/tv/the-white-queen 2020年6月23日閲覧。
- ^ The White Queen, https://www.metacritic.com/tv/the-white-queen 2020年6月23日閲覧。
外部リンク